物凄い轟音を響かせて、地面に激突したプテラノドン。辺り一面に砂煙が舞い上がり、その中心でぐったりしていた。これはかなりダメージが大きいだろう。
「よし、食うか!」
「ちょっとティラノさん、そういうの止めようよ」
「そうゆうのってなんだよ。獲物は喰うために獲るんだぜ?」
「野生動物としての主張はわかるけどさ、少なくとも知性を持ったんだから、なんでもすぐに“食う”とかちょっとね……」
「はあ? 意味わかんね」
……ダメだ、話にならない。今は放っておこう。
「女神さん、助ける方法ある?」
〔ミルクチョコには、体力回復能力もありますよ〕
「……なんか、チョコが万能アイテム化してないか?」
まあ、回復ポーションみたいな感じで使えるのはありがたいけど。
プテラノドンの口にチョコを放り込んでみると、本能なのか生きる意志なのか、チョコを必死で飲みこもうとしていた。
この時代にも恐竜にも愛着はないけど、それでも救える命を放っておくのは気が
幼稚園の頃、飼っていた子猫がウチの目の前でトラックにひかれて死んでしまった。その瞬間の懇願するような目と、無造作にはねられた姿が、今でも脳裏に焼きついている。
止まりもせずにそのまま走り去る車。
ウチはまだ暖かい”子猫だった物体“を抱き上げると、その場で
――“生き物の命”に関して敏感なのは、その時の出来事が大きな要因なのだと思う。
チョコを飲み込んだプテラノドンは唸り声とともに小さくなり、煙とともに『ぽんっ』と
「おー、この娘も美形じゃないか。美人というよりは可愛い系だな」
少し小柄な彼女は、小さい翼としっぽ、そして昭和のロッカーが好んで着るような
七分丈の革パンツに少し大きめのスポーツシューズがこれまた可愛い。茶髪のショートでちょっと大人し目な感じだ。
そして約束珠の指輪もGET。この
早速指にはめてみると、ウチの中に情報が流れ込んで来た。
「君はプチちゃんって言うのか~。ピッタリな名前だね」
「あ、あのぅ……」
「おめー気合入った格好してんじゃねえか!」
「ひいっ……」
中指立てながらギターをかき鳴らしそうな恰好をしているのに、実際はめちゃ内気なプテラノドンの
恐竜を
でもなぁ……転生先の選択肢に入るかどうかと聞かれたら『No』だよな。
「なあ、女神さんや」
〔ちりめん問屋のご隠居みたいな呼び方はやめてください〕
「あのさ、ちょっと体がダルいんだけど……」
〔それは約束珠の指輪のせいですね〕
――なんだって?
〔約束珠の指輪をつけている間、
「……そんなヤバイ要素は先に言えよ」
〔一度はめて契約が成立したら、外しておくことを推奨しますよ。普段はつけておく必要はありませんから〕
ったく、ホント肝心な事を言わない女神さんだな。
……とりあえずポケットに入れておこう。
〔また、今のあなたでは同時につけられる指輪は、二つが限界でしょう〕
「それって、ウチのレベルが上がれば沢山つけられるって事?」
〔そうですね、同時に分け与える力も強くなります。まあ、レベルなどという概念はありませんので、純粋にあなたの成長次第です〕
たった二つでもわずか数分で疲労感を感じるくらいだから、この指輪はウチの力を相当吸い取っているのだろう。
これを使うのなら、マジで体力つけないと駄目だとわかる。ヒッキーのウチには超絶過酷な話だ。
……はあ、誰か異世界に連れて行ってくれ。