その日、ウチは詐欺に遭いました。

　――異世界詐欺です。

　転生してまず目に入ったのは、真っ青につき抜ける大空だった。続けてキラキラ輝く太陽と美しき山々。そして、緑がふわっと香る爽やかな風と、死ぬほど深呼吸したくなるような綺麗な空気。

　ここは太古の地球、恐竜たちが支配する白亜紀の母なる大地。

　人間の手が一切入らないこの時代は、当然の事ながら人工物なんて存在しない。空も大地も水も空気も、汚すモノはなにひとつない。

　壮大な大自然、遥かな楽園フロンティア!!　……といえば聞こえはいいけど。

「要は、人間が住める所じゃないっちゅーこっちゃ!!」

　ドドドドド……

「はぁ、はぁ……」

　それはそれとして、ウチのこの状況なんとかしてくれ。これはマジでないって！

　転生してまだ三〇分しかたっていないのに！

　ドドドドドドドドドド……

　ついさっきまでエアコンの効いた部屋に引きこもってたのに！

「はぁ、はぁ……ひぃぃ！」

　すでに死にかけているんです！

　逃げているんです！　

　マジ全力ダッシュで！

　ドドドドドドドドドドドドドドド……

「待って、待ってってば。もう無理、もう走れんって……」

　異世界に来たはずなのに、なんでこうなったんや？　ウチ、ラーメン食ってただけやで？　食レポしてただけやで？

　なのに……

　今・は・テ・ィ・ラ・ノ・サ・ウ・ル・ス・に・追・い・か・け・ら・れ・て・い・ま・す・。とかないわ！　マジないわ!!

「乙女ウチの命がピンチやで～～～～～！」