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第15話 対サラマンダーと王様からの討伐依頼



「東にある、トビ村という村の近くに魔獣が出現するようになった。騎士団はトビ村へ行き、魔獣を討伐する。皆、心してかかれ!」

 「はいっ!」


 トビ村という東の村の近くに魔獣が出現するようになったので、騎士団は魔獣の討伐へ行くことになった。もちろん俺もついて行く。

 「カケルは後ろの方で戦ってくれ」

 上官が俺にそう話しかけてきた。……俺は新入りだから仕方が無い。与えられた任務を大人しくこなそう、と思った。


 お城から幌馬車で移動する。暗い森を抜けて、賑やかに雑談をして時間をつぶしていた。

 「もうすぐトビ村に着くぞ。ん? あれは!?」

 先頭を走っていた偵察隊が何かを見つけた。


 「て、敵襲――! 村が襲われている! 皆、戦闘態勢をとれ!」


 隊長の話だと、村の周りに出現した一匹の大きな魔獣退治のはずだった。それが何匹もの魔獣に襲われていた。

 「急げ! 皆、武器を取れ!」

 騎士達は幌馬車から降りて村に走って向かった。俺も後に続いた。


 「ひどい……」

火が回ってあちこちの家が燃えていた。魔獣は犬くらいの大きさの魔獣から熊みたいな大きな魔獣などが人々を襲っていた。

 「助けないと!」

 騎士達は数人がかりで、大きな熊のような魔獣に挑んでいた。俺は小さな魔獣を切り刻みながら、奥へ進んだ。


 小さい村ながらも豊かな生活があったのだろう。露店や小さな湧き水の水飲み場、家畜小屋に食糧庫。燃えていた。

 「くそっ!」

 立ち止まらずに進んだ。


 「きゃああああ!」

 「悲鳴だ!」聞こえた方向へ急いで向かう。

 この辺は火の勢いが強い。早くしないと火に巻き込まれる。


 行き止まりの場所。女の子が壁を背にして、何かに怯えて座り込んでいた。

「た、助けて……」

 女の子を行き止まりに追い詰めていたのは、赤い魔獣。

 「あれは……!? まさか火トカゲサラマンダー!?」

 村が燃えていたのは、こいつのせいか!!


 俺一人しか、ここにはいない。

「絶対に、助ける!」

 俺は手のひらに魔力を集めるイメージをして、剣にそれをまとわせた。

 「これがサラマンダーアイツに効くか!?」

 剣を握った手に力を込めて、サラマンダーに向かって行った。


 「うおおおお――っ!」

 途中でサラマンダーが、俺に気がついてこちらに振り向いた。立ち止まらずにサラマンダーに向かって行き、剣を振った。

 ギャアアアアアアアア!


 サラマンダーは断末魔をあげて、真っ二つになって地面に倒れた。

ドスン! ドスン! 

「やったか……?」

 そしてピクンピクンと一瞬震えて、動かなくなった。

「大丈夫?」

 俺は恐怖のあまり震えて座り込んでいた女の子に、手を貸してあげた。


 「あ、ありがとう……御座いました」

 手を取って立たせてあげると女の子は、ポロポロと涙を流した。

「サラマンダーは倒したよ。もう大丈夫。安全な所に行こう」

 俺がそう言うと女の子は頷いた。まだ涙はとまらない。怖かったのだろう。離れないように女の子の手を握って、その場を離れた。


 途中も魔物や、小型の魔獣が襲ってきたけど振り払って村の入口へ戻りながら進んだ。


 「カケル! その子は!?」

 先輩のニックさんが俺に気がついて話しかけてきた。現場は混乱していた。

 「サラマンダーに襲われかけていたのを、助けました」

「サラマンダー!?」

 比較的、被害が少ない場所に傷ついた人達を集めて手当てしていた。そこにいた騎士達が驚いていた。


 「はい。大型でした。そいつがこの火の、原因でしょう」

 俺が先輩に報告すると、騎士達がざわついた。

「サラマンダーだと? お前達は逃げてきたのか?」

ニック先輩は、俺達が走ってきた方向を見た。

「いえ。俺が倒しました」 

 事実を報告すると騎士達は騒いだ。「嘘だろ?」とか「まさか!」と言った声が聞こえた。


 「いや、サラマンダーは一人で倒せるほど弱くない……が」

ニック先輩は見てわかるほど困っていた。俺が嘘をついてないと思っても、サラマンダーは一人で倒せるほど弱くはないらしい。と、いうことは、俺は強くなってる……のか?


 「まあ……。まだ魔獣は殲滅してない。けが人をここに救護したら、また魔獣を倒しに行ってくれ!」

 「はい」

 俺は女の子を救護班の人に預けて、また村の中央に向かおうとした。


 「ひい! サ、サラマンダーだ――っ!!」

 村を囲んでいた柵を乗り越えてサラマンダーが、のそりと襲ってきた。

 「動ける者! 武器を持って攻撃しろ――!」

 ニック先輩が叫んだ。もう一匹、いたのか!


 ケガをした騎士達は村人をかばい、動ける者はサラマンダーに攻撃しようと構えた。

 俺はゆっくりと、サラマンダーに歩いて近づいて行った。


 「お、おい! カケル、近づくな!」

 先輩騎士さん達が俺を止めようとした。

「大丈夫です」

 「カケル」


 また剣に魔力をまとわせ、鋭く切れるように魔力をコントロールした。

 「村をこんなにして……!」

 俺は腰を低くして力を込め、サラマンダーに剣を振り落とした。


 ザッ、ッッッッツ!

ギャアア――!!

 キィイイン!

十字に剣で切り裂いて、サラマンダーは地響きを立てて倒れた。

「!」

 ピクピクと動いて、黒いになって消えた……。


 「カ、カケル……」

 俺が振り向くと、皆がポカンと驚いていた。

「あ、サラマンダーは倒しました」

 ニコッと笑って答えた。


 「凄い!!」

「サラマンダーを、倒すなんて!」

 「カケル様、ありがとうございます!」

 皆が歓声をあげた。


 「カケル様! ありがとございます!」

助けた女の子にお礼を言われた。ちょっと照れ臭かったけれど、良かった。

「よし! 残っている魔獣を全部倒すぞ! カケルに続け!」

 「「おう!」」


 そのあと魔獣を倒しに行った。

どうやらサラマンダー二匹が、他の魔獣を引き連れて村を襲ったらしい。

 残りの魔獣を倒しまくり、全部の魔獣を殲滅できた。




「カケル頭を上げよ。……良くやってくれた。サラマンダーを倒したそうだな」


 俺は今、謁見の間にいる。王様に呼ばれて御前でひざまついている。

サラマンダーを倒したことで話があるそうだ。俺は頭を上げて王様に返事をした。隣にはアリシア王女がいた。今日は髪の毛を編み込みしていて、後ろに結い上げていた。……可愛い。


 「はい。サラマンダー二匹が現れて、倒しました。そのあとになって消えました」

 赤い目、モヤになって消えた。魔獣の特徴だが、あんな大物が二匹……。その他に小型の魔獣に魔物。多すぎる。


 「ここの所、魔獣の発生率が以上に多い。加えて活発化もしている。トビ村は、魔物が時々村の周りに出現するほどで村人だけでも対処出来ていたのだが……。さすがに魔獣相手では太刀打ちできなかった」

 ふう……、と王様はため息をついた。


 「勇者の血を引く、カケル殿。どうか力を貸してほしい」

アデル王子はこの場に居なかった。あの王子は平気で人を下に見て、あまり好きじゃない。いなくて良かった。

 「俺が出来る事なら、力を貸します」 

 ズラリと並んでいた臣下達が、おお! と声を上げた。


 「うむ。礼を言う。各地の村や町が次々と魔獣に襲われている。騎士団と共に向かってくれないか? カケル殿」

 「分かりました」

 俺が返事をすると、広い謁見の間に拍手が沸き上がった。


 「騎士団と共にアリシア王女と、愛里聖女候補様も同行することになる。では……頼んだぞ。カケル殿」

 王女と愛里も? それは心強い。

「はい」

 王様は謁見の間を後にした。


 俺も謁見の間から下がろうとしたら、アリシア王女がやってきて話しかけてきた。

 「カケル様。どうぞよろしく、お願いいたしますわね」

 にっこりと微笑んだ。何度も言うけど、可愛い。アリシア王女はどちらかと言うと、凛としていて気品があって可愛い。


 臣下の前だと凛としていて王女様! という感じだけど、たまに見せる笑顔がいい。

 「妹との愛里も同行するみたいなので、よろしく!」

 アリシア王女に返事をしてけど、顔が緩んでないかな? いけない。気を引き締めないと。


 「愛里様と時々お茶をしますけれど、とても気が合いますの。お友達になれて良かったですわ」

 愛里とお茶をしているのか……。俺もアリシア王女とお茶をしたい。

「今度、ご一緒にお茶をしましょう。カケル様」

 「はい。ぜひ!」


 俺達の会話が聞こえたのか、若い女性のきゃあ! という声が聞こえた。

 「まあ! アリシア王女とお茶なんて、なんて羨ましい!」

 何人かの女性が集まってきたので、俺とアリシア王女は別れた。

しかし王宮の女性のドレスは華やかだなあ。お城の中も豪華だし、最近まで魔獣の出現が少なかったのだろうな。


 これからは厳しくなりそうだ。何とか魔獣を倒していかないとな。

そして俺と愛里は、元の世界へ帰る。……ちゃんと帰れれば、いいけど。



 お城の長い廊下を、考え込んで歩いていた。

俺の魔力の事。手のひらに魔力を込めてから剣にまとわす。魔力をコントロールして硬いものにも鋭く切れるナイフのようにも、出来た。

 イメージを働かせて、色々出来そうな気がする。


 「お兄ちゃん!」

「愛里」

 歩いていたら愛里が駆け寄ってきた。なんだか焦っているようだ。

 「お兄ちゃん、サラマンダー二匹を倒したの!? サラマンダーって火を吐く、トカゲだよね!? 大丈夫? ケガはなかった?」

 愛里は、俺の頭の先から足先まで見下ろしてケガをしてないか見た。

 「大丈夫だよ」

 愛里の頭をポンポンと軽く叩いた。


 「良かった……」

 えへへ……と愛里は笑った。俺が無事でホッとしたようだった。

 「そういえば。愛里とアリシア王女も騎士団と一緒に、魔獣討伐へ行くんだろう? 気を付けて討伐しような」

 「うん」


 俺達兄妹が廊下で話していたら、騎士が走ってきた。

 「今度は西の街が襲われている! 至急、騎士は準備するように!」

今度は西の街!?

 「愛里」

「うん!」

 俺達は廊下を走って騎士団へ向かった。

















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