「無理なものは無理!!」
「なんでだよ?」
「え? だって……好きじゃない人となんて付き合いたくないじゃん?」
放課後の帰り道で、たまたま見てしまったクラスメイトの告白される現場。
気まずさを抱えながら帰ろうと、正門を抜け最寄り駅までの道を歩いていたら、聞き覚えの有る声に呼び止められて一緒に帰る事にーー。
そして聞いてみたんだ。
「付き合わないのか?」
「え?」
「美桜モテるじゃん?」
「あぁ……もしかして……見てた?」
「あ、いや……見てたわけじゃ。偶然な」
「そっか」
歩きながら少し前の小さな石を蹴り飛ばす美桜。
「わたしってさ」
「ん?」
「そう見られてるじゃん?」
「まぁ……」
高倉美桜は学校一の美人というのは学校では知らないやつはいない。
他の学校からもわざわざ見に来るやつがいるほど、この隣を歩く小さな女の子は有名なのだが、本人はそんな事まったく思ってもいないようで、ホホを膨らませつつ『本当のわたしを知らないのに』と文句を言っている。
「わたしにだって選択する権利はあると思うの!!」
「いやまぁ、そりゃあるだろうよ」
「だから、もしかしたら、私は基樹の事を好きかもしれないじゃない?」
「っ!?」
にひひとさっきまでと違い、緩く笑いかけてくる美桜。
「なぁ、それって……」
「ねぇ~? どうだろうねぇ?」
くるっと顔を正面に向き直した美桜。しかし少しだけにやけてるその顔は完全に隠せていない。
ーーそ、そんなこと……ないよな? なぁ?
カチッと何か小さな音が聞こえた気がした。
こうして、この日から俺は美桜の事が更に気になり始めている。