装置が破壊された後も、健太郎と左平は諦めなかった。裏切りと破壊に傷つきながらも、彼らは再び竹を削り、和紙を丁寧に巻きつけ、動く絵の復元に取り組んでいた。
「何度壊されても、何度でも作り直せばいい。」
左平の言葉が、健太郎の心を支えていた。しかし、幕府の圧力は依然として強く、動く絵の存在自体が危険視されていた。
「どうすれば、認めてもらえるんだ……?」
健太郎は装置を見つめながら、苦悩していた。動く絵が妖術ではなく、純粋に人々を楽しませるための技術であることを証明しなければならない。
その時、左平が静かに口を開いた。
「公演をやってみてはどうだ?」
健太郎は驚いて左平を見つめた。
「公演……ですか?」
左平は深く頷いた。
「幕府の役人たちの前で、堂々と動く絵を披露するんだ。もし、それを見て感動すれば、妖術などとは言えなくなるだろう。」
健太郎の胸が高鳴った。しかし、同時に不安が襲いかかった。
「でも……もし、受け入れてもらえなかったら?」
左平は穏やかに笑った。
「その時は、その時だ。お前は今まで、逃げずに挑んできた。それを最後まで貫けばいい。」
健太郎は左平の言葉に勇気をもらった。公演という最後の賭けに挑む覚悟が、彼の中に芽生えた。
「やってみます。僕の全てをかけて、動く絵の価値を証明します!」
左平は満足そうに頷いた。
「よし、ならば最高の作品を作ろう。今度は、誰にも壊されないように。」
二人は工房に籠り、夜を徹して制作に取り組んだ。動きの滑らかさを追求し、感情を込めた表現を目指した。今回の作品は、動物たちが仲間を助け合いながら困難を乗り越える物語にした。
「人の心を動かすものを作るんだ……!」
健太郎は筆に魂を込め、一枚一枚丁寧に描き上げていった。彼の頭の中には、現代で培ってきたアニメーションの技術と、江戸で学んだ職人技が融合していた。
「これが、僕の全てだ……!」
完成した装置を前に、二人は深く息を吸った。動く絵の公演は、数日後に幕府の役人たちを招いて行われることが決まった。
「これが、最後の賭けだ。」
健太郎の目には、決意の炎が燃えていた。江戸の人々の前で、動く絵の可能性を証明するために。
運命の日が、近づいていた——。