健太郎は、竹の枠に和紙を丁寧に巻きつけていた。何度も試行錯誤を重ね、左平の助言を受けながら改良を加えた装置が、ついに完成を迎えようとしていた。
「これで、動くはずだ……!」
彼の額には汗が滲んでいたが、目は希望に輝いていた。装置には、連続した絵が少しずつ変化するように描かれていた。今回は、犬が駆ける姿を選んだ。風を切るような躍動感を表現したかったのだ。
「よし……いくぞ。」
健太郎は竹の枠を回転させた。和紙が滑らかに動き、連続する絵が切り替わっていく。
その瞬間、犬が地面を蹴り、前脚を上げ、体をしならせて駆け抜ける動きが見えた。躍動感とともに、まるで命が吹き込まれたかのようだった。
「……動いている!」
健太郎の声が震えた。喜びと感動が胸を突き上げ、目頭が熱くなった。
「やった……やったぞ!」
彼は装置を止め、拳を握りしめた。その様子を見ていた左平が、ゆっくりと拍手を始めた。
「見事だ、健太郎。まるで生きているようだ。」
左平の目にも感動が宿っていた。彼は装置に顔を近づけ、目を細めた。
「これが……動く絵か。絵に命を吹き込むとは、こういうことだったのか。」
健太郎は頷いた。彼が現代で愛してやまなかったアニメーションの魅力を、この江戸の地で再現できたのだ。
「左平さん、ありがとうございます。あなたの技術があったからこそ、ここまで来られました。」
左平は笑い、健太郎の背中を叩いた。
「お前の熱意があったからこそだ。だが、まだ完成ではないな。もっと滑らかに、もっと生き生きと動かせるはずだ。」
その言葉に、健太郎は目を輝かせた。挑戦はまだ続く。さらに高みを目指すために、彼は次のステップを見据えた。
「はい!もっと良い動きを目指します!」
江戸での動く絵の挑戦が、次のステージへと進み始めた。