(背景:健太郎は左平の工房で、筆と墨を手にしている)
健太郎「うわっ、筆って思ったより柔らかい……全然うまく線が引けない!」
左平「ははは、筆は生き物のようなものよ。ただ力を入れればよいというものではない。」
健太郎「いやー、俺、普段はデジタル作画なんで、筆圧も線の強弱も自由に調整できるんですけど……筆って全然違いますね。」
左平「それが筆の妙じゃ。例えばこの線……太さが変わり、かすれが出ておるじゃろう?」
(左平が紙にサッと線を引く。細く始まり、途中で太くなり、最後はすっと消える)
健太郎「おおっ! なんか、“動き”を感じますね!」
左平「そうじゃ。筆の使い方次第で、静止画にも勢いや奥行きを生み出せる。『北斎漫画』などを見ても、筆致の強弱がまるで生き物のように感じられるじゃろう。」
健太郎「あー、なるほど! 現代のアニメでも、キャラの動きに合わせて線の強弱をつけたり、勢いを出すためにわざと“荒い線”を使ったりするんですよ。『リミテッドアニメーション』の技法にも通じますね。」
左平「お主らの技法にも、筆の考えが生きておるのじゃな。」
健太郎「ですね! あ、あと日本のアニメって、線がちょっとシャープで繊細じゃないですか。あれって、浮世絵の影響もあったりするんですか?」
左平「ほう、面白いところに気づいたな。浮世絵では細い輪郭線を使っておるが、それは木版画ゆえの技法でもある。しかし、絵師たちは“線そのもの”を美しく見せることを意識していたのじゃ。」
健太郎「線を美しく……あ、それ、アニメの作画監督もよく言ってます! 一本の線でキャラの個性や動きを表現するのって、めっちゃ奥が深いんですよ。」
左平「筆で描くも、デジタルで描くも、究極的には“線の力”が大事なのじゃな。」
健太郎「いやー、江戸時代の筆使い、アニメにめっちゃ応用できそう! これはもっと研究するしかないですね!」
(次回へ続く——“影”と“光”の表現、江戸とアニメの陰影技法!)