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第21話

 私が携帯電話屋に勤め始めたのは、携帯電話がデジタル回線からFOMAやCDMAに移行していこうとしている時代でした。

 残り僅かな在庫となったデジタル機を売り尽くし、通常よりも上乗せされたコミッションを狙って、あの手この手のセールストークを駆使したことは懐かしい思い出です。デジタルを売れば、とにかくめちゃくちゃ褒められました。


 従来よりも大きくなった機種本体に、新機種が出るごとに広くカラフルになっていく液晶。Eメールやインターネットができるようになったり、カメラが付いたり、二つ折りが当たり前になったりと、次々に増えていくその性能を覚えるのは大変でした。

 カメラ一つ取ってみても搭載されているのはCMOSかCCDか、機種ごとの最大画素数も暗記必須です。←大半のお客様が当たり前のように聞いてくるから。


 そして、電話が進化すればそれに合わせた料金プランやオプションも増えていき、一気に分厚くなっていくマニュアル。キャリアの担当営業さんでさえ、こちらの質問に「持ち帰って調べて来ます」と言うことがあるくらい、キャパオーバーの一歩手前。


 その新しい料金プランで、通信料の使い放題的な物が出だした頃から、現れ始めたのが”何をやってるのか、聞くに聞けないお客様”です。


 間違いなく、携帯電話を使ってネット関連で何かを(副業か本業かは分かりませんが)やっておられ、通信費が割引価格前の状態なら万単位。まだ携帯専用サイトくらいしかまともに表示されない電話で、その通信料はほぼ一日中通信しているか、大量の画像を送信し続けているか、という料金。


 そして、携帯を使って仕事をしているということはそれとなく言ってこられるけれど、具体的なことは頑なにおっしゃらない。こちらも敢えては聞かないので謎のままの方がほとんどでした。

 とりあえず、あまり大きな声では言えないことをされているというのだけは分かりました。恐らく、18禁なことだとは察しましたが、あえて聞かず。


 また、後に具体的なことを話してくれるレアなお客様が現れて、その一部が判明。

 その方は出会い系サイトを開設されていて、そこでサクラをしているというバイトの女の子を同伴で来店されてました。

 親子にしては何か違うなーとは思ってたけど、と納得はしましたが、内容が内容なだけにモヤモヤした覚えがあります。


 あと他にも、掲示板等で募集をかけて、興味のある人と連絡を取り付けて会社へ斡旋するという怪しさ極まりないバイトをしている17才(高校生ではない)の常連さんもおられましたね。ちなみに彼女が斡旋していた話にわざと乗ってみた子の話では、名義貸しの説明会に連れていかれたそうです。


 あの時代でこれですから、今ならもっといろいろありそうですね。

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