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第19話

 私が勤務していた代理店では店頭修理が出来る店は一店舗もありませんでしたが、ショップの中には即日修理が出来るところもあります。スマホ時代の今はおそらく直営レベルのお店くらいになると思いますが、当時は結構あったのです。


 そうです、私の勤めていた店では修理の受付は100%預かり修理でした。代替え機を用意して、修理センターに送付するという受付しかできません。

 けれど、修理に関する資格は持っていないけれど、なぜか携帯電話を分解できる人が社内には何名か居られました。どこでその技術を得たのかは聞いたことはありませんでしたが、とにかく手先が器用な方が紛れ込んでおられました。

 普通の人はアンテナを付け替えるくらいしか出来ません。


 そういう人はほぼ趣味で携帯を分解して遊んでおられ、解約機でオリジナルの機種を作ってみたり。(と言っても、カバーを色違いで交換するだけとかくらいですが)


 普段はそういった内輪ネタの為に分解する程度でしたが、時にはお客様の為に秘密裏に動かれることもありました。水没機からデータを出す為に、同じ機種の解約機に基盤を乗せ換えたり、大きく破損した機種の一部のパーツを付け替えたり。


 保守店ではないので修理に使う部品は全て廃棄予定の解約機から取るしか無かったのですが、本来なら修理に出せば有償になったり、修理不可能になったりする物を使えるように出来る技術はまさに神技です。誰の目にも憧れでした。


 そして必然的に、真似をしてみようと空き時間に解約機を分解してみる人が続出でした。かくいう私もやってはみましたが、外カバーを開けることすら出来ませんでした。ネジを外しても素人には全く外すことすら出来ません。力を入れたら簡単に割れてしまうくらい薄いカバー。全くもって、無理! 潔く一回で諦めました。


 そう、同じことを考える人は多く、無理矢理に分解しようとして無残な姿になった解約機が回収ボックスに入れられているのを何度か目にしました。店の経費を使ってネットで工具まで買い揃えてから挑戦した上司もいましたね。バキバキに割られた携帯の山を見た時はどうしようかと思いましたよ。経費の無駄遣いです。

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