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第18話

 キャリアによっては多少の差はあるとは思いますし、今と昔では全く違うかもしれませんが、携帯業界は研修と試験がやたらと多いです。


 私が入社した当時はまだマシで、一般の店員が受けさせられる資格試験というと保守技能ぐらいしかありませんでした。この保守というのは電話機の修理のことで、その受付業務に関する資格でした。

 (店頭修理する人用の資格もあったはずですが、そちらは対応店舗の方向けだったので私は受けることはありませんでした)


 入社して1か月の研修が終わった後に受けに行ったのですが、半日の保守研修の後に筆記試験と簡単な技能(修理時の受付操作)だった気がします。

 こちらはまぁ、先輩からの「必死アピールと、先生に愛想よくしとけば大丈夫」というアドバイスに従って、前列でのかぶりつき受講で何とかなりました。割と先生のさじ加減で合否が決まる緩い感じだったので。


 あと他にも、新人研修という名の研修も2回受けましたが、新人研修とついているのに店長クラスが普通に受けに来たり、サブで数年の経歴がある人がゴロゴロいたり。

 キャリアから受講させろと言われて、とりあえずスケジュールを調整できる人間を適当に送り込んだ、みたいなメンバーでした。要するに代理店的には、とにかくキャリアから人を集めろと言われたら絶対なのです。


 先の保守研修でも、入社したての本物のド新人は私だけでしたし……。2度目の新人マナー研修は入社3年目に入ってからでしたから、何を基準に新人なのやらという感じでした。


 他には研修という名の説明会にも行きました。業者による付帯商材の説明ですね。新商品説明会とか、そういうのも結構多いです。


 資格というと、最初に取った保守技能は私が取った後、1年も経たない内に廃止になってしまいました。代わりに出て来た新しい資格は全国一斉規模の筆記試験で、半年ごとに各ショップから2名ずつしか受けれず、第一回目の試験の合格率は2割という難易度でした。


 けれど、店ごとに2名しか受けられないとなると、まず先陣を切って受けさせられるのは当然、店長とサブです。立場上、決して落ちる訳にはいかない人達ばかりです。(私も当時は店長をしていたので、受けさせられました。ギリギリ合格でした)


 あまりのプレッシャーで、受ける前に退職してしまった店長もいました。本人は違うと言ってましたが、普段は恰好付けな店長のことです、あれは絶対に試験が受けたくないから(落ちた姿を見せたくないから)だとしか思えません。


 そしてその試験、合格者のいる店には証明のプレートが配布され、本人にはバッジが貰えるという有資格者への差別化がすごかった。さらに会社にも合格者に対してキャリアから奨励金が毎月払い込まれるから、合否の社内での立ち位置への影響もありえないくらいに大きい。落ちた上司が目を合わせてくれなくなったり、資格を2万円で売ってくれと冗談ともつかないことを先輩から言われたりしたくらいです。


 その後、初回の難易度が高すぎたことで試験内容が緩和され、二回目からは合格率はかなり上がりました。7割くらいだったと思います。ちゃんと勉強したら受かる内容です。毎年の更新試験はさらに簡単でした。あの魔の一回目は何だったのか……ほぼ伝説ですね。


 けれど、私が業界を離れた後はさらに資格の種類が増えたという話を聞いたので、今ショップにいる方達はさらに勉強に励んでおられることでしょう。

 資格や研修以外にも、接客コンテストだったりと、店舗以外でも頑張らないといけないことは結構多いのです。

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