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呪装の刻印
呪装の刻印
理乃碧王
異世界ファンタジーダークファンタジー
2025年01月16日
公開日
2.9万字
連載中
「これお前が装備しろよ」

戦士ガルア・ブラッシュは、勇者から不遇の扱いを受けている。
冒険で手に入れた呪われた装備品をあてがわれていたのだ。
それは勇者が何の特技もスキルもなく、装備品に金がかかる戦士ガルアを疎ましく思っていたのが理由だった。

そして、ある日ガルアはパーティメンバーから追放。
その過程で、ガルアは村で出会った女魔族ラナンを助けるために勇者殺しの罪を背負う。
――戻る場所も、帰る場所もなくなった。
追っ手から逃げる日々――。
倒れたガルアは目覚めると魔族や魔物が住む洋館にいることに気付いた。

王道はなくなり、どこかおかしなる物語。
全ては大聖師と名乗る遊戯者が作った世界での出来事だった。
世界の人々は各々役割を与えられ、大聖師が作った脚本に沿って生きていたのだ。
それは誰も知らない世界の秘密、そう一人の魔王を名乗る元勇者以外には……。


ゲームジャンルに掲載中のリバイバル作品であった「Cursed Bug Quest -深緋の人形劇-」の原版。
タイトルを改題して、原版に沿って異世界ジャンルに掲載致しました。

ep00.プロローグ

 ――イグナスは宝箱を開けた、なんとカタストハンマーを手に入れた。


「これお前が装備しろよ」

「えっ……」


 俺の名前はガルア・ブラッシュ。これでも一応戦士だ。

 勇者イグナス・ルオライトのパーティに加入している。

 今日は迷宮の森で、イグナスから呪いの武器『カタストハンマー』を渡された。

 当たれば会心の一撃であるが命中率は1/3……曰く付きの武器だ。


「これ装備するのヤバくないか」

「いいから装備しろっての、いつまでたっても鋼の剣じゃあダメだろ」


 イグナスは金髪碧眼、いわゆる美青年だ。

 だが、人格は勇者と呼んでいいのかわからないほどだ。

 俺にまともな武器を渡さず、行く先々のダンジョンで手に入れた呪いの武具を装備させる。

 パーティから抜けたい気持ちがないと言えば嘘になる。


 でも、それは出来なかった。

 イグナスは、世界を恐怖に陥れる魔王ドラゼウフを倒すために旅する勇者。

 そして、俺はその勇者直々に選ばれた戦士だ。

 リーダーに従うのがパーティメンバーの役目なのだから――。

 一刻でも早く魔王を倒し世界を平和に導きたい、ここは勇者イグナスに従い我慢するしかない。

 ……とはいうものの納得は出来ないでいる。


「そろそろ、まともな武器や防具を装備させてくれよ」


 説明すると、今の俺の装備はこんな感じだ。


【武器】鋼の剣

【鎧】ブラッドアーマー ★

【兜】スカルヘルム ★

【盾】暗黒の盾 ★


 ★呪いの装備


 腰に差す黒鞘に入ったのは鋼の剣、冒険途中の武器屋で買った既製品だ。

 そして、頭から順に述べると人骨を模ったスカルヘルム、体には赤黒い血のような色をした鎧ブラッドアーマー、左手に持つ黒いドクロの紋章が刻まれ暗黒の盾を持つ。


 武器以外は全て呪われた装備だ。ずっと体に倦怠感がある。

 恐らくは呪われた防具のせいだろう。

 ここまで来て、武器まで呪いの装備を渡されてはたまったものではない。

 クエストをクリアした後、金さえ払えば街や村にある教会で呪いは解ける。

 ……がそこまで体が耐えられるか不安だ。


「ガルアは勇者の意見に反対なの?」


 亜麻色のショートカットの少女が詰め寄って来た。

 ああ……まただ……俺は頭を抱える。

 彼女の名前はミラ・ハーリエル、パーティのサポート役である僧侶だ。

 ミラはイグナスのことが好きなようで、いつもヤツの無茶な意見に同調する。


「イグナスの言う通り、さっさと装備しなさいな」


 俺はチラリと黒い長髪の男を見た。

 彼は同じパーティメンバーのジル・ディオール、魔法使いだ。

 赤いローブ姿が強さを醸し出していた。

 普段は物静かだが、確かな魔法と溢れる知識で幾度も冒険の窮地を救ってくれた。


「先を急ぐぞ」


 ジルは興味もなく、先へと進んでいった。

 迷宮の森深くにいる『青の暴君』と呼ばれる凶悪なドラゴンを倒すためだ。


「ちょっとジル!」

「いいからコイツを装備しろ、いいな!」


 イグナス達は無理矢理、俺にカタストハンマーを渡すとジルの後をついていった。

 残された俺はカタストハンマーを片手に握る。

 その悪魔的なデザインは、明らかに呪いの装備であることを雄弁に物語っていた。


 ――デロデロデーン!


(この音……やはり呪われていたか)


 嫌な音が俺の頭に鳴り響いた。

 案の定、カタストハンマーは呪われていたのだ。

 今日も俺は呪いの武具を装備する。

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