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第106話……企業価値の向上とは!?

 我々の世界では飢餓にある人は全体の約1%であり、むしろカロリー過多な人が多いとされている。

 これは一見食料が足りているように思われるが、実はそうではない。


 Aという地方で沢山食料がとれても、Bという地方まで運ぶ手段が無かったり、伝統的文化の嗜好の差もある。

 またそもそもが宗教的に食べれない食物もあるのだ。

 その文明全体社会のカロリー供給の総和が、必ずしも飢餓を救うわけではない。


 翻って、この謎の他宇宙の世界は、熱核戦争にて人口の98%を失っているが、その戦争に伴い広大な量の水や大地をも汚染させた為、惑星を脱出し宇宙で生活している者も多い。

 その惑星以外に居住する人類の総計は約40%以上にも達する。


 ……これは逆に言えば、水や食料が自給できない宇宙ステーションや、岩石だらけの衛星などに住んでいる人々が約半数もいるのだ。

 そのような社会では、やはり食料や水は不足しがちで、価格は高騰化しやすい。

 水や食料がある惑星から、宇宙船で運ぶのはとてもコストが掛かるためだ……。


 そのコストはお金だけではない。

 政治や宗教的対立。関税や非効率な貿易協定、民族紛争もあった。


 分母である世界の総カロリー生産を拡張しつつ、供給コストも下げねばならない。

 過去の熱核戦争における食糧不足は、これからも長く他宇宙の文明人類に与える影響は大きいことに違いは無かった……。




☆★☆★☆


(……とある取引所)


「ハンニバル開発公社は今期も配当なしか!?」

「あそこの会社配当ないんだよな……」


「でも、造船景気だからあそこの株は買うしかないな!」

「だな! 今日も上がってるしな」


 ヴェロヴェマという軍人がやっている新興企業は、今期も配当金がなかった。

 しかし、それは悪いことではない。

 彼の会社は利益が出ると、すぐに次の案件に余剰利益を再投資するのだ。

 よって新規事業が成功しているうちは倍々に利益は膨らむ。


 よって、安定感に欠ける会社だったが、その分企業成長性はぴか一だった。

 特に宇宙船造船企業としての企業価値は、既存の大企業を次々に押しのけ、カリバーン帝国第2位にまで浮上していた。


 そのハンニバル開発公社は造船不景気に投資した案件が次々に急成長しているのが要因で、帝国国営企業であるカリバーン帝国重工に時価総額であと少しにまで迫っていた。

 また、ミスリル鋼やアダマンタイト燃料などの資源会社としても帝国第4位であり、さらに躍進が期待されていた。


 ……しかし、かの企業の社長の給与は年額3万帝国ドル(約300万円)。創業当時から変わらない水準だった。




☆★☆★☆


 領地をもつ帝国貴族は一定の兵役を課されており、その拠出した兵力は帝国軍部に預けられていた。

 その戦功や兵力負担に応じて、戦いに勝ちさえすれば貴族家には一回の戦役単位で帝国政府から巨額の報奨金が支払われていた。


 そのため、先のアルデンヌ星系攻略に際し、兵力拠出を担当していたヴェロヴェマ子爵家には莫大な報奨金が入っていたのだ。



「旦那様、報奨金の方は全額借金の返済に回しますぞ!」


「……は、はい」


 執事のヨハンさんが怖い顔だ……。

 空母の建造、艦の改修、護衛艦級の新造。

 いくらお金があっても足らない。



 ……領地持ちの地方貴族は辛いよね (´・ω・`)


 ヴェロヴェマ子爵家の収入は莫大であったが、その支出もまた天文学的数字であった……。

 何かの贅沢をしているわけでもなさそうであったが。




☆★☆★☆


 惑星ベルの軍施設の飛行場に選ばれし精鋭たちが集う。



「搭乗開始!」

「「「了解!」」」


 新造する艦艇に搭載する航空機のパイロットを育成すべく、ドラグニル陸戦隊より選抜された勇士が航空訓練に臨んでいた。

 彼等は屈強な体力を活かし、日々の辛い猛訓練に打ち勝っていた。



「提督は訓練に参加されないのですか?」


 のんきにコーヒーを飲んでいる私に、副官殿の目線が痛い。



「いや、昨日の訓練の筋肉痛が残ってね……痛たたた」


「おじいさんニャ!」

「情けないポコ!」


「みんな酷いなぁ……」


 彼等の訓練はすさまじく、この一つ目巨人の体を持ってしても辛かったのだ。

 無理はいけない……多分。

 私はサボりつつも彼らの訓練に参加していた。



 航空機訓練は機材や燃料が多額にかかり、訓練できることがそもそも恵まれていた。

 きちんと航空パイロットを訓練した場合、高価な機体の何倍もパイロットの育成費がかかる世界だったのだ……。




☆★☆★☆


【ハンニバル開発公社事業内訳】


・住宅地開発部門……トントン

・工業地開発部門……若干の黒字

・商業地開発部門……若干の黒字


・宇宙港運営部門……増収増益♪

・ミスリル鉱山及び精製施設……増収増益♪


・水供給部門……採算好転見込み無し。

・新規鉱山開発……好調♪


・アダマンタイト生産部門……増収増益♪


・惑星リーリヤ造船部門……絶好調♪

・衛星アトラス造船部門……絶好調♪

・準惑星ツーリア造船部門……増収増益♪


・衛星ガイア観光事業……増収増益♪

・惑星ベル漁業部門……増収増益♪


・辺境星域交易部門……出だし好調



 ……絶好調中♪

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