――宇宙標準時間午前8時56分。
ワームホールを守備していたルドミラ教国のアルデンヌ星系守備艦隊の本隊が、第4惑星カイを占領した帝国軍第10艦隊を捕捉。
交戦当初は巨艦同士の遠距離大口径レーザービーム砲戦から始まり、順次中型艦のミサイル射程に移る。
何時しか眩いほどの激しい砲撃戦となった。
惑星カイに対艦高射砲の守備陣地を築いていた帝国軍の防御戦は巧妙で、数を活かした攻勢が上手くいかないでいた……。
戦いは艦載機による近接戦闘も含めた戦いに移行していた……。
☆★☆★☆
「こちらケルベロス! 敵駆逐艦に攻撃をかける、援護を頼む!」
「ハンニバル第二副砲塔、了解!」
艦砲と連携した艦載機は強いはず!
連携プレイは私の信条の一つだった……。
経験上、私が一対一で戦って勝てるほど、世の中は甘くできているはずは無かった。
駆逐艦の天頂方向から、重粒子速射砲を撃ちこむ。
……弾丸のいくつかが重力シールドを突き抜けるが、装甲板に弾かれる。
駆逐艦がハンニバルの副砲射撃に手一杯なスキをついて、反転して駆逐艦の下腹部に潜り込む……。
『見えた! 機関部の吸気ダクト!』
重粒子速射砲を叩きこむと、一定の感触が得られる。
機関部の吸気ダクトめがけて、量子魚雷の発射スイッチを全て押した。
眩い閃光が迸る中、機体を反転させる。
後ろを見ると、巨大な駆逐艦の船体が真っ二つに割れていた。
「こちらケルベロス! 弾薬切れだ、引き返す!」
「ハンニバル航空管制、了解!」
愛機を駆け、ハンニバルの格納庫に戻る。
「燃料と弾薬の補給を頼む!」
整備員に声を掛け、ケルベロスのコックピットから飛び降り、ハンニバルの艦橋へと向かう。
現在の艦艇の戦力比は5対1といったところだ。
だんだんと不利が叙実になって来ていた戦況を憂慮した……。
「このままだと、不利は否めませんわ!」
「撤退するポコ?」
「もう少しだけ耐えてみよう!」
刹那、敵艦隊が順次後退を開始する。
砲撃の光条も数えるほどに減っていく。
……ん?
その後、通信モニターを介して、リーゼンフェルト大将より連絡が入る。
「ヴェロヴェマ中将! 敵ワームホール防衛要塞の制圧は成功。作戦は成功だ!」
「はっ!」
……もうこれ以上、この宙域にとどまる必要はない……。
「あとは主力艦隊に任せよう! 惑星にいる地上部隊も含めて撤退準備だ!」
「了解ですわ!」
一通りの指示を終えた私は格納庫に降り、愛機のケルベロスに敵艦艇の撃破マークを一つ描いた。
窓の外に映る惑星カイが寂しそうだった……。
『また還って来るさ! きっと!』
……誰に言うでもなくそう呟いた。
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エールパ星系の衛星アトラスで、艦隊の整備の為に入港する。
今回の激しい防御戦で、第10艦隊は3隻のビーム砲艦と1隻のミサイル艦を喪失。
他にも護衛艦級の艦艇4隻が大破していた。
ドックにて、ハンニバルの装甲モジュールを付け替える。
ここは以前ハンニバルの母港だったので、応急修理は早く済む予定だ。
「修理がめんどいクマ~!」
「すいませんね……」
「こんどご飯奢ってクマ!!」
「はいはい」
修理案件が多すぎで、整備長がお冠だ。
新鋭化したオムライスとジンギスカンの修理が課題だ。
あまり大きくない船体に沢山の装備を詰め込んだのが原因だった……。
応急修理だけで済まし、現在の母港である準惑星ツーリアで本格的な修繕をするしかない。
衛星アトラスは、一時は水不足で気苦労したものだが、いまでは氷採掘ステーションが順調の様で、水価格は下がっている。
氷採掘ステーションは赤字続きだが、公的インフラってこんなもんなのだろうね……。
中大破した艦艇を衛星アトラスに残し、第10艦隊は一旦準惑星ツーリアに帰投することにした。
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「こんなものが撃ち込まれていたクマ~!」
「なになに?」
我が第10艦隊は被害が大きかった原因の一つとして、シールドを無効化するのに特化した弾芯が数多く含まれていた。
このタイプの弾芯は実体装甲などへの効果は低いが、重力シールドや電磁障壁を中和するする効果が恐ろしく高かったのだ。
「こっちも使うポコ!」
「そうですわ! 使いましょう!」
皆がやる気なので、この種の弾丸も採用することにした。
主に艦載機搭載の速射砲や、電磁砲などでの運用を目指す予定だ。
弾丸の生産にも時間がかかるのでしばらくは数が揃わないが……。
「私の船も大きくしてほしいニャ!」
「吾輩のも小さいメェ~!」
「はいはい、分りました!」
オムライスとジンギスカンを大型化することにした。
今の巡洋艦サイズから、小型の戦艦サイズあたりの高速戦艦が良いかな?
確かにこれから艦隊戦が多くなれば、海賊狩りと違って大型艦の火力や耐久力も魅力的だった。
……今度設計をしておこうね。
「アニキ! 俺と部下たちにも船が欲しいぞ!」
……ぇ?
アルベルトも専用船が欲しいって…… (;’∀’)
……お金が大変だぞ! これは!!
早速、執事兼内政役のヨハンさんにお金の相談をせねばならなくなった。
「旦那様! お金がたりませんぞ!」
……ほら、怒られた。