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第101話……輸送船強奪と大学入学

 グングニル共和国から分離独立したルドミラ教国は、星間航行船舶の数が少なく、宇宙空間での戦いは劣勢とされていた。

 だが、劣勢なれども、独立を保てていたのには理由がある。


 それはビーム砲艦とミサイル艦の運用の仕方だった。

 この世界の駆逐艦より小さい船は護衛艦やコルベットと言われる。それより一回り小さい船がビーム砲艦やミサイル艦である。

 だいたいが全長40m級の二級線の軍事艦艇である。


 その名の通り、ビーム砲艦はレーザービーム砲しか積んでいないし、ミサイル艦は対艦ミサイルしか積んでいない。

 また。防御シールドについても貧弱、又は皆無である。

 防御機銃さえない船もある。

 長距離跳躍の性能についても劣悪か、又は不可能である。


 そういった観点から、共和国や帝国では防御用の補助艦艇としての運用が目立った。



 ……しかし、その常識を覆したのがルドミラ教国であった。

 彼等はビーム砲艦とミサイル艦の防御シールドの能力と長距離跳躍の能力をある一定程度持たせる改修案件に成功していた。

 先のアルデンヌ星系にて、不意を突かれた感じで敗れた帝国だが、このような補助艦艇の運用の仕方も陰では働いていたのだった……。




☆★☆★☆


『我々は小国からなる新たな地球の秩序を成し遂げる!』


 現実世界のテレビにて放映されるニュース。

 宇宙からやってきたルドミラ教国のブロンズ枢機卿の演説だ。



 世界各地の小国は、覇権国のA国か、新進気鋭の大国のC国のどちらかの勢力に付かなければ生き残れない情勢であったのが、ここにきてルドミラ教国という第三の巨大軍事勢力が登場した。


 ルドミラ教国は小国の自治独立を支援したので、地球の南半分の国々ではルドミラ教国の同盟国が過半数となる情勢だった。



 ……意外と一気に攻めて来る気配はないのかな?


 私はこたつの上の煎餅を食べきると、テレビを消して、ゲームの世界に戻ることにした……。




☆★☆★☆


 地球侵略の為にルドミラ教国は多数の物資をアルデンヌ星系に輸送していた。

 当然この輸送船団を狙う宇宙海賊も多発した。


 ……しかし、軍事輸送船を平然と狙うとは。




「艦体ステレス維持率99.9896%」


「敵機関に対滅式量子魚雷をお見舞いしてやれ!」

「了解ポコ!」


 海賊犯はハンニバルだった……。

 地球の戦線を少しでもマシにするべく暗躍していたのだった……。


 ……輸送船団のエンジンが次々と破壊され、船団は停船に追い込まれる。



「敵輸送船停船!」

「降伏するそうですわ!」


「よし、ステレス解除、敵艦に強行接舷せよ!」

「了解!」


 エンジンを新型エルゴ機関AAA-1型に改装したハンニバルは、巨艦の威厳が薄れるほどに素早い。



「接弦完了!」

「ドラグニル陸戦隊を乗艦させて艦橋を制圧させろ!」


「了解ですわ!」


 ハンニバルからアルベルト王子の部下たちが敵船になだれ込む。

 ドラグニル族は銀河有数の勇壮な白兵戦力を誇る。



「ハンニバルの付属ドックのシャッター開け!」

「開きますポコ!」


 ドラグニル陸戦隊に制圧させた輸送船や護衛船団を、そのままハンニバルの巨大ドックに収容する。

 船ごと強奪するのである。


 船舶需要がひっ迫している世界では、宇宙船は最も貴重な財産そのものであった。



「収容完了ですわ!」


「敵警戒部隊のレーダーに捕捉された模様!」

「やばいポコ!」


「逃げよう! 短距離跳躍開始!!」

「了解!」


 ……ルドミラ教国の警備艦艇が来たところには、跡形も残らず輸送艦隊が消滅していた。


 もとい、持ち逃げされていた。



 一応私も母なる地球の為に、毎日戦っていた。

 コソコソ裏側でだけれども……。




☆★☆★☆


 ツェルベルク星系帝都バルバロッサ。

 帝国軍人専用の高級バーの中。



「なんだ? またかよ?」

「ケルベロスの奴、敵輸送船団の攻撃はまたTOP成績だな!」


「あいつチキンなんだよな……、反撃しない敵にはつよいって奴! ははは!」


 帝国士官たちはケルベロスこと、帝国軍第10宇宙艦隊の司令官のことを馬鹿にしていた。

 ……しかし、帝国軍首脳はそこまで馬鹿ではない。


 ヴェロヴェマ中将はこの月も沢山の勲章を受章していた。




☆★☆★☆


「……ヴェロヴェマ中将殿! 貴官を帝国参謀大学の特別聴講生として入学を許可する!」


「有難うございます!」


 ハンニバルの通信モニターに映るのは、カリバーン帝国参謀大学のお偉い教授様。


 私は多数の輸送船攻撃の功績により、ついに無試験で参謀大学に特別入学してしまった。

 ……というか校長先生が少将なのよね。



「お祝いクマ~♪」

「おめでとうですわ!」

「提督が偉い人になったポコ!」


「……いやぁ、聴講生であって、普通の優秀な学生さんとは違うよやっぱり……」


 とか何とか言っていると、お祝いパーティーとは名ばかりで、私のおごりで外食を愉しむらしい。

 ……まぁ、それはそれで幸せなのですけどね。



「大トロ追加クマ♪」

「僕も大トロ欲しいポコ♪」


「わたくしは海栗を二貫追加ですわ!」

「私は鮑を三貫ほど追加ニャ♪」


 ぇ~。

 めちゃめちゃ高いお寿司屋さんで、私のお財布はまさに大破炎上していた……。


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