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第100話……赤く染まる地球 ~地球占領計画~

――地球の南極の支配者はグングニル共和国から、ルドミラ教国に移った。


 その地球上では誰も成し得ない科学力により、南極へ攻め寄せた世界各国の海軍の軍艦は次々に沈んでいった。

 世界の警察を名乗るA国も、世界の覇権を目指すC国も、最強の軍事国家R国も、宇宙戦艦をも擁するルドミラ教国の軍事科学力には、やはり手が出なかった……。



 制空戦闘機にはレールガンの雨が浴びせられ、主力戦車には大口径のレーザーが叩きつけられた。

 威容補誇る空母打撃部隊も、超音速を楽々と超えるミサイル群には対応できず、大きな魚の住み家を提供したに過ぎなかった。


 地球の軍事大国は、星間国家であるルドミラ教国に対して、自国の領土を守るのに手いっぱいとなった。

 それぞれの国より遠い海洋と制海権は、大航海時代以来の勢力空白地となった……。


 しかし、ルドミラ教国の南極地上部隊はおよそ5万。

 そもそもが8000万人くらいしか人口がいない星間国家なのである。

 ルドミラ教国もまた、すぐには地球を征服する陸軍力を持ち得なかったのだ。



 ……しかし、ルドミラ教国の力が及ばないことは、地球側にも不利な事案をもたらせた。


 軍事大国の圧力から解放された反政府勢力やテロリストが暗躍。

 地球の大地は血みどろの紛争にまみれ、そこはもはや赤い地球といっても差し支えない現状に変わっていった……。




☆★☆★☆


 久々にアパートで昼を過ごす。

 コンビニで買ってきた一人用の鍋焼きうどんがグツグツと言っている……。

 あつあつで美味しそうだ。



――ピンポーン


 割箸をくわえて慌ててドアを開ける。

 ……小池勝議員だった。



「きみぃ~情勢をわかっとるのかね!?」


 ……支店長以来、自宅で久々に説教を受ける。



「君らが負けたおかげで、このざまだ! 何とかしてくれたまえ!」


「……はぁ」


 それより、私の鍋焼きうどんが伸びてしまう大ピンチなのだが……。

 小市民でごめんなさい。



「君たちは平和を愛する心が成っとらんのだよ!」


「……どうもすいません」


「謝るくらいなら、何とかしたまえ!」


 こういう偉い人に正論は通じない。

 ただ謝る一手だ……。


 ……次から居留守を使おうかな?



 議員は言いたいことだけ言うと、2時間後に帰っていった。


 今回も迷惑料として、秘書さんが一万円を置いていった。

 これって、あとで贈賄とかで逮捕されないよね?




☆★☆★☆


 自宅のPCで設計を始める。

 今回はハンニバルではない。


 私の専用艦載機。

 対艦ミサイルを沢山装備できる重雷撃機の設計だ。



「……うーん、良い案がない」


 ごろ寝をして考える……。

 胡坐を組んで考える……。

 ウロウロして考える……。



 ( ゜Д゜) ソウダ!!

 可変型だ!!


 小市民たる私が、この世界でやることなどほぼない。

 できることは向こうの世界での設計のみだ。


 こうして、重雷撃機から惑星上では二足歩行のロボットにも変形できるようなシステムにした。

 ……かなりの趣味である。


 ハンニバルはモジュール構造のコスパ重視なので、こっちはコスト無視で贅沢させてもらうことにした……。

 何しろ、中将様なのだ。

 ちょっとくらい贅沢しても罰はあたるまい。



 ……な、名前は何にしよう?

 最近の私の渾名であるケルベロスでいっか……。


――可変型重雷撃機『ケルベロス』の設計完成だった。




☆★☆★☆


 現実世界のテレビをつける。



『我がルドミラ教国は、地球に新たな正義と自由をもたらす!』


 臨時ニュースをやっていた。

 どうやら反政府組織やテロリストなどと、ルドミラ教国が手を組んだらしい。

 歴史上、正義は無数に存在するし、自由は一部権力者や王国貴族だけって例もある。



 どうやら、ルドミラ教国は足りない陸軍兵力を現地採用するらしい……。

 これはかなりヤバイ展開である。



――私は耳かきをふぅっとしながら、テレビを消した。


 出世すると気苦労が増えるって言うけど、本当なのかな?

 ……なんだか、小池勝議員の苦労が少しだけわかる気もした。


 私は再びカプセルに入り、皆が待つハンニバルに戻ることにした……。




☆★☆★☆


 副官殿を伴い、入院中のリーゼンフェルト大将を見舞う。

 直属の上司だから、これも給料の内だとか言ったら、冷たい人なのだろうか?



「……ヴェロヴェマ君、我々はN国と同盟を結んだのは間違いだったのかな?」


「え? なんでですか?」


 突然、負傷中のリーゼンフェルト提督に問われる。



「地球の利権がこのままではルドミラ教国に独占されてしまうではないか? 60億の労働者だよ、君!」


「……はぁ」


 やっぱりみんな労働力が欲しいのが本音なんだなぁ……。

 小池勝議員はこれを知っているのだろうか?



「我々の敵はグングニル共和国もあるのだ。ルドミラ教国と一旦和解して、地球の利権を分かち合う方策はどう思うかね?」



 ぇ~、それはそれで困るよぉ……。

 ここは提督に頑張ってもらうしかないな。



「リーゼンフェルト提督! 復讐戦を挑みましょう! 負けっぱなしなんて悔しいです!」


「……うん? 君にしては珍しく積極的な意見だな?」



 ……いやいや、意地でも、ルドミラ教国と戦ってください。

 『お願いですから……』

 切に心の中で願う私だった……。

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