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第93話……捉えろ! 特務潜航艇の影!!

「左舷前方、量子魚雷確認!」

「取り舵、一杯!」


 ハンニバルは巨体を揺らし、対滅式の量子魚雷を避ける。


「左舷に対潜特殊ビーコンを放射!」

「了解!」


 特務潜航艇はカリバーン帝国の専売特許だったのだが、グングニル共和国も最近開発に成功し、通商破壊戦に活用を始めていたのだ。


 特務潜航艇は宇宙空間にあるダークマター内に潜航し、船体を光学探知やレーダーから隠蔽するため捕捉が難しく、敵勢力奥深くまで侵入できたのだ。



 ……よって軍としては、最前線のみならず、後方の交易路まで守備しなくてはならなかった。


 交易船団護衛は交易の輸送コスト自体を引き上げ、それに伴い物価は高騰した。


 それを喜ぶのは、護衛任務で儲かるフリーの宇宙冒険家業の者たちだった。




「今日も潜航艇に遭いましたわね」

「このところ多いよなぁ……」


 ハンニバルは他の艦と交代で民間の船団の護衛をしていた。


 潜航艇は見つけさえすれば決して強い敵ではない。

 ミサイル艦や宇宙冒険者の船でも簡単に撃沈できた。



 ……しかし、相手も最近は賢く、護衛がついているときは輸送船を攻撃してこなかったのだ……。




☆★☆★☆


「うん!?」


 私は艦載機に乗り、ハンニバルの周辺を警戒していた。



【魔眼スキル・敵捕捉!】


『!?』


 ……ひょっとすると、敵の潜航艇を見分けることができるようになったかもしれない。

 宇宙空間の一部に赤い文様が浮かんだ……。



「こちらキャプテン、ハンニバルに指令! GZ-86空間に砲撃せよ!」

「了解ポコ!」


 何もない漆黒の空間に白熱線が吸い込まれる。



――ズシシィィィン!!

 赤い光球が放射したあとに、黒い艦体が現れる。



「凄いポコ! 命中ポコ!」

「敵、潜航艇撃沈!」


 ……お?

 脈ありかな?



「続いてCX-21空間に砲撃せよ!」

「了解ポコ!」



――ドウゥゥンン!

 閃光が迸り、隠れていた潜航艇が爆発する。



「潜航艇撃沈!」

「提督! 凄いですわ!」

「艦長! 凄いポコ!」


 私とハンニバルはさらに二隻の潜航艇も掃除し、帰途に就いた。


 ……この世界の私の眼は凄いな。

 現実とは大違いだ。




☆★☆★☆


 私は近隣の星系に繰り出し、片っ端からグングニル共和国の潜航艇を沈めていった。



――1か月後。



「いつも有難うございます!」

「……次は、私どもの船団の護衛を!」


「いや、是非私の船の護衛を!」


 一躍ハンニバルは潜航艇キラーとして有名になった。


 このことからハンニバルは一気に交易商人に人気の護衛艦になったのだ。

 現在、彼等の商売の天敵は潜航艇だったからだ。



 ……しかし、魔眼に頼るだけでなく、誰にでも発見できるように研究開発に務めていた。

 魔眼は気難しく、能力が発揮できないときも多々あったのだ。


 それが功を奏し、ハンニバル開発公社は独自の潜航艇発見システムを作成。

 宇宙冒険者たちに貸し出した。


 基本的に正規の軍の艦船は前線任務もあったのだ。

 通商路の護衛だけに戦力を割り振るわけにはいかなかった……。



 ……その後、帝国と共和国共に潜航艇による戦禍は若干であるが減少していったらしい。




☆★☆★☆


 大型クレーンが忙しなく動く宇宙船の造船ドック。

 準惑星ツーリアの造船施設である。


 ハンニバル開発公社は、惑星リーリヤ、衛星アトラス、準惑星ツーリアに大きな造船施設をもっていた。


 その販売相手は主に星間ギルドや周辺星系の企業であり、帝国政府自体には納品していなかった。

 主に民需の造船所だったのである。



「今月はあと2隻作らないといけないクマ!」

「ほっほっほっ! 忙しいのは良いことです」


 クマ整備長に内政係のヨハンさんが発破をかける。

 折からの潜航艇出没で輸送船の被害は拡大、宇宙船は何隻作っても売れていたのだ。




――注文の電話が鳴る。


「ヴェロヴェマさん、あと追加で輸送船一隻つくってほしいんだけど?」

「……え、えと、頑張ってみます」


「食料プラント船はまだ発注できます?」

「納期が2か月遅れなら、なんとか……」


 電話機を右耳左耳、そして頭の上に置くほど忙しい。

 ……軍人としては暇だったのだが。


 ハンニバル開発公社は、今まで好不況関係なく造船事業に設備投資していたのが効いていた。


 借金も沢山作ってしまっていたが、造船不況期に事業撤退していた会社は、現在の造船注文を受けられなかった。


 カリバーン帝国内で今月の民需船に限って言えば、ハンニバル開発公社の造船売り上げは業界首位を達成。


 一か月だけの成果とは言え、グングニル共和国に次ぐ星間国家勢力第二位の帝国での売り上げ首位は我ながらたいしたものだと思う。




「こんな忙しいなら賃金アップを要求するクマ!」

「「「そうだそうだ!!」」」


 その影響もあり、ハンニバル開発公社で労働者によるストライキが多発した…… (´・ω・`)




☆★☆★☆


【ハンニバル開発公社事業内訳】


・住宅地開発部門……トントン

・工業地開発部門……若干の黒字

・商業地開発部門……若干の黒字


・宇宙港運営部門……増収増益♪

・ミスリル鉱山及び精製施設……好調


・水供給部門……採算好転見込み無し。

・新規鉱山開発……好調


・アダマンタイト生産部門……増収増益♪


・惑星リーリヤ造船部門……絶好調♪

・衛星アトラス造船部門……絶好調♪

・準惑星ツーリア造船部門……出だし好調【新規部門】


・衛星ガイア観光事業……おおむね黒字

・惑星カイ農業部門……黒字転換

・惑星ベル漁業部門……出だし好調【新規部門】



 ……造船絶好調中♪

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