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第44話……夏の思い出と訓練日和♪

 アメーリア女王に歓待された私は、衛星アトラスに戻っていた。

 帰りに沢山のお土産も貰った。


 そのお土産に、蛮王様たちも喜んだ。


 ……やはり大きなハンニバルで来てよかったと思った。



 ふと手元の手帳を見るが、クラン・シェリオのメンバーとはしばらく会っていない。

 他のメンバーはログインしていないようだった。


 もうこの世界では、自分は初心者という訳ではない。


 今の手元に現金が少しあることもあり、指定された違約金をはらってクランを脱退した。

 欲しい情報は他から手に入るし、あまり肌に合ったクランでは無かったのだ。




☆★☆★☆


 カリバーン帝国暦851年8月


 惑星リーリヤの首都フレイムで、私は暑い夏を迎えていた。



「海へ行くクマ~♪」

「スイカ割りするポコ~♪」


 積乱雲が似合う青空に、きつい日差し。

 私はみんなと海水浴に来ていた。

 クリームヒルトさんは大きな日傘をさしている。



「イカ焼き食べたいポコ♪」

「すいません、イカ焼き6つください」


「毎度あり!」


 ぢうぢうと焼かれる海産物。

 サザエやホタテの地獄焼きもある。


 見た目も香りもとてもおいしそうだ。

 海の家で食べるから美味しいのかも知らないが……。

 皆で美味しくイカ焼きを頂く。



 ちなみに今日の私はサングラスをしている。

 一つ目巨人用の特注品だ。


 これで、視線は自由だ。世界は平和だ。

 ……ウフフ♡



 暑い太陽の下。

 皆がはしゃぐ中、私はゴロゴロする。


 その後も私は十二分に輝く夏の日を楽しんだ。


 もちろん、ゲームの中だけどね……。




☆★☆★☆


 帝国暦851年10月。


 私はチマチマと小惑星破壊の任務をこなしていた。

 わずかであるが、臨時収入を稼ぐ。


 装甲戦艦ハンニバルは大きくなり、乗員が常時150名はいる。

 戦闘時ともなれば、その数は400名にものぼった。


 そのために食堂は大混雑なのだが……。


 今日の目玉はロースカツ丼だ。

 早く仕事を終えて、並ばなくては。

 食堂は我々の小さな戦場でもあった。



「後進良し!」

「停止!」


「総員戦闘準備!」

「配置急げ!」


「機関前進! 微速!」

「了解!」


「砲塔右30度旋回!」

「仰角15度!」


 小惑星破壊と合わせて、兵員の訓練もこなす。

 訓練の為、蛮王様のところの新兵も載せていた。


 提督や将軍のお仕事は、平時は訓練であり、その他事務仕事だ。

 テレビドラマとは違い、刑事さんもほとんどが事務仕事らしい。


 ちなみに、私はゲームでMVPとかをとったことが無い。

 仕事でも社長賞の金一封は夢だった。


 ……欲しかったなぁ、社長賞。


 今日もコツコツ頑張ろう……。




☆★☆★☆


 アパートの自室で起きる。

 鏡で寝癖をなおし、歯磨きをする。


 コンロに火をつけお湯を沸かす。 

 朝食のトーストを食べながら、PCのモニターを覗いた。



【DATE】


名前・ヴェロヴェマ


提督レベル・BB+級

特定スキル・羅針眼

乗艦・装甲戦艦ハンニバル

階級・大佐

爵位・男爵

領地・衛星アトラス、衛星ガイア


…………。

……。




「……ふむう」


 どうやら提督レベルってのが、あるらしい。

 いまはBBのプラス級。

 最上位はSかぁ……。


 なってみたいなぁ、S級提督。

 経験値とかが沢山いるのかな。


 詳しくはマニュアルに書いてなかった……。


 まだオープンテスト期間中らしいしね。

 ……がんばろっと。




☆★☆★☆


「ヴェロヴェマ大佐、ツェルベルス星系の新帝都バルバロッサの総司令部まで出頭せよ!」

「はっ!」


 超光速ビデオチャットに映る作戦参謀に、私は敬礼をした。




 ……有史以来。

 勢力と勢力の間には、航行が危険な宙域が存在することが多い。


 それは現実世界でも、国境は高い山や大きな川、海を隔てていることでも証明されている。

 なんの変哲もない平野や畑のど真ん中に、国境線が通っていることはあまり見ないだろう。


 カリバーン帝国やグングニル共和国、そしてルドミラ教国の間には、安易に大艦隊が行軍するのを妨げる宙域が存在していた。

 それはただ単に危険だとか言うのではなく、未開地で整備や輸送が難しい場合や、他民族星系で政情不安定な場合も多かった。



 ……古来。

 利を求めて星間をめぐる商人たちは、より安全な航路を開拓し、それに伴い交通インフラが整う。

 それにめがけて国家の軍隊が押し寄せ、奪い合った勝者が自分の勢力圏とした。


 よって、敵対する勢力との境は、自然と守りやすい宙域に防御線が設定され、要塞などの防御施設がおかれる。

 やはりそこを無理やり突破するのは難しく、迂回を考えるのが歴史の常であった。



 カリバーン帝国政府はグングニル共和国に勢いがないと感じ、大規模な迂回攻撃により旧領復帰を目指す好機と考えていた。

 以前に共和国のバリバストル少将が攻めてきた航路を逆側に攻め上がるのである。



 それに伴い、カリバーン帝国総司令部は主だった地域の司令官を集め、作戦会議を開くことになったのだ。



 ……エールパ星系を代表して、私もそれに参加することになった。




☆★☆★☆


 エールパ星系外縁に設置されている水資源プラント。

 その傍らに、小さな補給基地が建設中だった。


 その小さな基地に立ち寄るハンニバル。


 即応体制の補給施設から、燃料であるアダマンタイトを積載する。

 美しいオレンジ色の液体が、ハンニバルの巨大な燃料タンクを満たす。



「アダマンタイト補給完了ですわ!」

「エネルギー積載率79.65%ポコ!」


「エルゴ機関正常!」


「……了解!」

「装甲戦艦ハンニバル発進せよ!」


 ハンニバルは発進し、総司令部のあるツェルベルス星系を目指す。

 そして、訓練を兼ねて長距離跳躍を連続で行った。


 約二週間の旅程だった……。


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