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第35話……敵領侵攻作戦

「え? リアルの世界とゲームの世界がつながった?」

「……かなあ、と」


 ゲームの世界で、共和国の旗艦の件についてバニラ中佐に聞く。

 彼女はこのゲームの先輩プレーヤーだった。


 さらに聞くところによると、このゲームは特殊であることから、今にいたるも長い間オープンテスト期間中だということだ。



「そんなニュースしらないしね、君はゲームのしすぎじゃない?」

「そうかな?」


 確かに、現実時間で毎日8時間以上もゲームをしているのだ。

 やりすぎと言われても仕方がない……。


 あの時は頭が疲れていたか、ひょっとしたら夢だったのかもしれない。



「まぁ、また何かあったら教えてよ。少し気になるから……」

「わかりました! では、また」


 バニラ中佐に別れを告げ、私は超光速チャットの電源を切った。

 この件は解決はしなかったが、人に話すと少し気が楽になった。




☆★☆★☆


 ハンニバルは再び戦地に赴いていた。

 この度は珍しく攻撃的な作戦だった。



 先日の戦いで戦死した共和国軍の将校が持っていたデータを解析したところ、敵の防御線の穴を見つけたというのだ。

 帝国情報部が調べたところ、この情報は正しいと認定した。


 この判断に従い、帝国総司令部は作戦策定して、動員を通達した。


 そして、エールパ星系からはハンニバル一隻のみが動員される形となった。

 有力星系から少しずつ公平に戦力抽出した形だ。


 ……なにはともあれ、久々に共和国領への侵攻作戦となっていた。




「B-1896ブロック周辺に障害物はありません」

「ワープ航法可能です!」


「よし、全艦長距離跳躍用意!」


「「「了解!」」」


 見知らぬ宙域に次元長距離跳躍する場合、予定地域に障害物がないかを確かめる。

 これから先は敵宙域。

 詳細な宇宙航路図は無かったのだ。



「星間航行艦から順次跳躍、橋頭保を築け!」


「「了解」」


 通常艦船は、長距離跳躍後に自由に動けない。

 ハンニバルを含む8隻が先行し、この後に核融合炉を搭載した通常艦船が24隻続く布陣だった。



 私は頭にモヤモヤを抱えていたが、丁度良く吹っ切れたかもしれない。

 額にも、じんわりと汗をかいていた。



 緊迫した時間が続いたが、その後、敵支配地域に長距離跳躍するも、異常なし。


 そして、後続の24隻も続いた。

 全艦にて無事、敵地へ侵入を果たしたのだった。




☆★☆★☆


 今回、ハンニバルは先陣だった。

 重装甲を持つ3隻とともに、哨戒を兼ねながら本隊に先がけて先行していた。




「敵がいませんわね?」

「お留守ポコ?」


「情報によると、敵の戦力が薄い地域らしいね」


 比較的のんびりと進む先行部隊。

 見張りは怠らずも、敵艦船は現れなかった。


 ……しかし、警戒航行を続けると、とんでもないものに出くわした。




「危ないポコ!」

「停止ポコ!!」


 実戦豊富なタヌキ軍曹が気付く。


 それは、ガス状機雷であった。

 よく見ると、赤紫色に光る雲が整然と前方に広がっている。


 知らない私には、一見普通のガス雲に見えた。

 ……覚えておこう。



 とりあえず、これ以上の前進は危険だった。


 このため、後続の本体に連絡。

 しばらく、この宙域で待機と決めた。




☆★☆★☆



「機雷だと!? 作戦部から聞いてないぞ! そんなもの!」

「え?」


 この艦隊の司令官、フライシャー中将に機雷の報告をすると、意外な答えが返ってきた。


 ハンニバルを含む四隻の先行部隊がいるこの宙域には本来、敵艦隊が数隻いるはずで、機雷が敷設されているという情報は無かったのだ。



「大佐、しばらく待ってくれ、幕僚と協議する」

「はっ!」



 旗艦ヤークトティーゲルへの通信をいったん切った。

 長時間の通信は敵に発見される恐れがあったためだ。




「いやな予感がしますね」

「するポコ」


 みんなの意見は一緒だった。


 ……そして、その予測は悪い方に的中してしまった。



 本隊に続く後続船団が奇襲を受けたとの知らせが入ったのは、その僅か30分後だった。




☆★☆★☆


「敵発見! 方位前方11時の方角!」

「推定距離38万6000ヘクス!」


「輝度より、大型艦4隻、中型艦8隻の模様!!」



 回頭して、後続部隊への援軍に行こうとしたら、敵が来た。

 なんと12隻。

 こっちは4隻なんだが……。



「迎撃するポコ!」

「長距離砲、撃ち方用意ポコ!」


 素早く、戦闘指示を出すタヌキ軍曹。


 状況からして、発見されているのだろう。

 隠蔽できるような小惑星も無かった。


 逃げようにも、我が方は鈍足な重装甲艦4隻。

 戦うほかないのだ。


 しかも今回、元中将殿は風邪をひいて、側にいない。

 ……かなり不安だ。




「重粒子砲きますわ!」

「重力シールド全開! エネルギー中和スプレッド射出!」



 ハンニバルの強力な重力場と磁場により、敵のビームを屈折させ、跳弾に成功する。



「反撃だ! 砲撃開始!!」

「撃てポコ!!」



 ハンニバルの主砲が唸りをあげた。

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