「仕事しねぇと」
気持ちが落ち着いてきた春樹は、自分の言葉にこんな時でも仕事かよ。仕事人間過ぎるに苦笑した。笑えたらなら、大丈夫だ。切り替えよう。
「便所……あっ……」
便所。部屋にはない。1階に1つしか無い。行きたくはねぇけど。25にもなって、流石に漏らすのは嫌だ。謝るのは、相手は子どもだ。大人気なかった自覚はある。潔く謝るのが筋だろう。春樹は覚悟を決めた。泣いたのが丸わかりの顔を見せるのは癪に触るが、堂々としていた方が良いだろう。春樹は部屋を出て階段の所まで行く。
「セフィリウス殿下。獣姿で登れば良いのでは無いか」
「本当にあんたは何も考えてないな。獣の姿で登ったら階段に傷がつくだろ。この姿でも爪は長いけど、獣よりはいいだろう。考えてから言ってよね」
「考えは分かりました。登りきるまでて一日終わりますけど」
「分かってる。オレが悪かったし謝らないと」
「頑張ってください。あと20段はありますから」
顔を真っ赤にして一生懸命に階段を登る姿に、春樹は怒っていた自分が馬鹿らしくなった。階段を降りて、さっと子ども姿の豹を抱き上げる。
「なっ、あんた」
「悪かった。つうか、名前なんだっけ。カタカナ、名前長過ぎ。セフィでいいか。そっちは、アルなんとか、アルでいいよな。仕事しないといけねぇから」
階段を降りきり両腕で子どもを抱き上げ、春樹は自室に戻り、ベットに並んで座らせ部屋を出て、トイレに駆け込んだ。