大人しく待っていた2匹を腕に抱えて、春樹は2階に上がる。2階の居住スペースの風呂場に連れて行った。風呂桶にあらかじめ、ぬるま湯をいれておいた。やはり水が苦手なのか、バタバタ暴れ出した。白い豹の方が暴れた。
「暴れるな。怖くないから」
言葉で大人しくなれば春樹も苦労はしない。動物に人の言葉は通じない。白い豹を桶の側におろし、比較的暴れない狼をそっと桶にいれる。後ろ脚がお湯に触れた時、びくっ。狼の体が震えた。水ではないと分かると暴れなくなった。ゆっくりお湯の中に狼の体を入れる。桶の淵に顎を置き、気持ちよさそうな顔をする。人間用のボディーソープしかない。この際、仕方ない。取りに行こうとしたら、右足を何かが引っ掻いている。右を見たら床におろした白い豹が入れろとでも言うように、軽く爪をたてていた。
「分かったから、待ってろ。一緒に入るのが嫌だったんだろ」
もう1つ桶にぬるま湯を入れて、白い豹を入れる。蛇口からお湯が出た事に驚いているのか、目を見開いている。
「人間みてぇ。綺麗だな。白い豹はスカイブルーの瞳。狼はヴァイオレットの瞳か。いけねぇ。ボディーソープ」
慌ただしく出て行く彼を見送り、2匹は肩の力をぬき、ゆっくり湯に浸かった。
「良い匂いだ。あの男」
「今更言うか。オレは初めから言ってたけど。
水に入らされるのかと思ったら、温かいお湯が蛇口から出るなんて。驚いた。気持ちいいねぇ」
「嫌がっていたのに、手の平返しするなんて、恥ずかしい。殿下。少しは忍耐力をつけろ」
「敬わないねぇ。オレは気にしないけど、勝手な事を言うなら潰す」
「怖い方だ。戻ってくるみたいだな」
戻って来た春樹は2本の匂いが違うボディーソープを持っていた。