安堂の診療所は少し変わっている。新人を教育することに特化している。ベテランと新人2人1組を原則。男女は関係ない。所長である安堂も同じだ。新人には初心者マークである動物バッチつける。診療所に一本の電話があった。安堂が担当している新人田中が電話をとった。
「おっおせわ、お世話になっております。
安堂診療所のしっ新人の田中が承ります」
正直過ぎる田中の応対に診療所にいる獣医、動物看護師、安堂もみんな一斉に頭を抱える。
「安堂先生」
「電話の応対は20点だ。みんな。電話は極力安堂に応対させてくれ」
「「「はい」」」
ひとしきり電話相手の話を聞いて田中が、ようやく電話を切った。
「安堂先生」
「電話応対は20点だ。まだまだだ。内容は」
「あのですね。えっと」
「はっきり話しなさい。診察予約か往診のどちらかな」
「しっ新規のお客様で、往診です。安堂先生。
小熊が。衰弱している小熊がいるそうです」
田中の言葉に全員が同じ顔をしていた。緊張し過ぎておかしくなったか、幻聴を聞いた。もし小熊が出たなら大騒ぎだ。田中が渡してきた往診の場所が書かれた紙。
「安堂先生」
「ん」
「俺。そこの隣の家に往診で行きました」
診療所の獣医は3人、研修中は田中合わせて3人。動物看護師も3人。獣医の1人が住所の場所に心当たりがあるようだ。
「行ったことがあるのか。山の中か」
山の中なら今頃警察が来て対処をしてくれるだろう。
「違いますよ。普通の住宅街で、有名な編み物作家さんが住んでいるらしいです。俺は会ったことないですけど」
住宅街。大人しい熊なんだろうか。いずれにせよ、早く行った方が良さそうだ。
「田中。往診に行く。依頼者の名前は」
「明石さんです」
小熊がいるらしい明石さん宅に向かうことになった。