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不良作家は異世界からの来訪者は手に負えない
不良作家は異世界からの来訪者は手に負えない
アシュレイ
BL現代BL
2025年01月15日
公開日
1.6万字
連載中
実の両親は事故で死に。父の兄夫婦に育てられた神山春樹は、家族から疎まれ、ストレスの捌け口にされ怪我をして病院に運ばれたことをきに、成人するまで祖父が面倒を見てくれた。25歳になった日。祖父が死んだ。祖父は春樹に内緒で莫大な遺産と店を残してくれた。両親や姉に会いたくなかった春樹が、祖父が残してくれたカフェに行くと、そこには1通の手紙が残されていて……。

第1話

 葬儀場の前で長い黒髪を、風に靡かせて喪服姿で、涙を流している身長165しかない男がいた。


「ちっ、勝手に死ぬんじゃねぇよ。悪ぃな。葬式出られなくて」


 今日は男。神山春樹の祖父の葬式だった。髪は切るな。腰まできたら肩ぐらいまで切っていい。よく分からないこだわりを持つ祖父だった。実の両親が死んでから父の兄夫婦に引き取られたが、疎まれ、暴力を振るわれ、怪我で病院に入院したことをきに祖父の家に行く事になった。結果的にそれが良かった。


「朝から晩まで家の事をやらされて、学校は休むな、勉強もかかすな。留年は許さん。口煩いじじいだった。大好きだったよ。わたしの小説。読ませてやりたかった。安らかに眠れよ。せめて、本を棺桶にいれたかった」


 行ったら義理の家族に金をせびられる。真っ平ごめんだ。さて行くか。ここには用はない。


 春樹は葬儀場に背を向け、立ち去ろうとした。背後から走ってくる足音が聞こえて足を止めた。


「誰だ」


「神山貞治様にお世話になっていた者です。

 こちらの鍵を渡すように。生前頼まれていました」


「知らないな。どうしてお前はわたしを知っている。わたしが鍵を渡す人物かは分からないだろ」


「分かりますよ。髪。長い黒髪で目つきの悪い不良。見た目が怖いだけで、実は「結構だ。さっさと鍵を渡せ」


「分かりました。本。サインをしてくださいますか。貞治の棺桶に入れてくる」


「はぁ。頼んだ」


 春樹は鍵と本を交換した。鍵を見てすぐに分かった。じじいがやっていたさして繁盛していない。カフェ異世界なんて変な名前の店。あんな店さっさと売ってしまえば良かったのに。


「行ってみるか。久しぶりに」


 作家デビューしてからは行く事はなかった。胸を張ってじじいに会いたかった。オメガの俺を育ててくれたから。



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