「私って、どうしてこんなにも、出来ないことが多いんだろう…。」
「ミスばっかり…。嫌になっちゃう…。」
悔しくて由利子は泣いてしまった。思い返せば幼い頃からコミュニケーションが苦手で人間関係がうまくいかず、折り紙すら上手く折れず、勉強にも着いていけず、成績は下から数えた方が早かった。運動も苦手で、大きな音や大声も苦手だ。由利子はそれらの特徴をネットで調べてみた。
「ADHD…。私、この特徴に当てはまるわ…。」
由利子はADHDの検査、診断が出来る病院を探し始めた。
「一番近いのが、むらたメンタルクリニックかぁ。…不安だけど、今度行ってみよう。」
数日後、早速クリニックに行く由利子だったが、メンタルクリニックは初めて受診するので、不安で仕方ない。
「…どんなこと聞かれるのかな?」
由利子はADHDの確定診断を受けた。診断書を書いてもらい、総務課に提出、上司に配属先を変えてもらえないか相談したところ、主任の
由利子は、誠との仕事を通して、彼の丁寧で分かりやすい説明に助けられ、少しずつ自信を取り戻していきました。誠は、由利子のペースに合わせて、根気強く教え、時には励ましの言葉をかけてくれました。
「由利子さんは、すごく真面目だし、努力家だから、きっと大丈夫だよ。」
誠の言葉は、由利子の心を温かく包み込みました。由利子は、誠の優しさに惹かれ、次第に彼に好意を抱くようになりました。
一方、誠も、由利子の頑張りやひたむきさに心を動かされていた。由利子の笑顔を見るたびに、自分の心が躍ることに気付いていた。
ある日、仕事終わりに、誠は由利子に声をかけた。
「由利子さん、ちょっと時間がある? 」
「え、あ、はい…。」
由利子は、ドキドキしながらも、誠の誘いに応じた。
二人は、会社の近くの喫茶店で、ゆっくりと話し始めました。仕事の話から、プライベートの話へと、会話は弾みました。由利子は、誠の穏やかな人柄に改めて惹かれ、誠も、由利子の飾らない自然体な姿に魅力を感じていました。
「由利子さん、僕、由利子さんのこと、好きになってしまいました。」
誠は、緊張しながらも、由利子に気持ちを伝えました。
「え…。」
由利子は、驚きと喜びで、言葉が出ませんでした。
「由利子さん、僕と付き合ってください。」
誠は、由利子の手を握りしめました。
「…はい。」
由利子は、照れながらも誠からの告白を受け入れた。
二人は、その後も、仕事を通して、お互いのことを深く知っていき、愛を育んでいった。。由利子は、誠と出会えたことで、自分の人生が大きく変わったと感じていた。
「高橋さんと出会えて、本当に良かった…。こんな私に仕事を教えてくださって、ありがとうございます。」
「教えがいがあったよ。由利子さんは頑張りやさんだから。」
「…そんなこと…。」
「最初から出来ないって決めつけるんじゃなくて、出来ることをコツコツ、由利子さんが諦めなかったからだよ。」
「それは…。高橋さんが根気よく教えてくれたから…。」
「由利子さんが、ADHDだからって、僕は気にしていないよ。」
「…え?」
「僕の弟が、幼い頃に発達障がいと知的障がいと診断されていてね…。」
「そうだったんですね。」
「大変は大変だったけれど、弟はとても素直で、いい子なんだ。高校が特別支援校だったから、一般就労は無理で、今は就労継続支援作業所で働いているよ。」
「就労継続支援作業所…?」
「A型なら最低賃金が貰えるし、B型は作業所の作業内容にもよるかな?」
「そうなんですね…。」
「でも、まあ、大人になってからADHDと診断される人、増えてきたね。」
「…はぁ。」
「大丈夫だよ。由利子さんの良いところも、悪いところも全部、僕は受け止めるから。」
「高橋さん…。」
由利子は思わず泣いてしまった。誠はそっと由利子を抱き締め、髪を撫でた。
「今まで、つらかったね。でも、よく頑張ったね。」
「…はい。」
「由利子さんが、出来ないこと僕が引き受けるし、足りない部分は僕が補うから。…だから、、、。」
「…。」
「僕と結婚してください!」
「高橋さん…!私でよければ…、結婚してください。」
「これからはずっと、笑顔でいられるような家庭を築いていこうね。」
「はい!」
「やっと笑ってくれたね。そう、その笑顔だよ。」
「ありがとうございます!」
その後、2人は結婚した。片付けが苦手な由利子のために、どこに何をしまうかを考えながら収納グッズを買ったり、材料揃えてDIYしたりして、工夫することで部屋はいつも片付いていた。料理も、一緒に作ることでより楽しく料理ができた。