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僕は殺されても死にません。あ、お前らはちゃんと死ぬけど
僕は殺されても死にません。あ、お前らはちゃんと死ぬけど
カイガ
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年01月15日
公開日
5.8万字
連載中
 魔物が全く倒せず、協会最弱底辺のF級の称号を付けられ蔑まされている田舎町出身の傭兵少年ラフィ。
ある日ラフィは雑用係としてB級傭兵のパーティの魔物討伐に無理やり同行させられる。その先で未知の強力な魔獣に襲われ、パーティ壊滅の危機に陥ってしまうが、傭兵たちはラフィを生贄として足切りし、逃げ出した。追い詰められたラフィは魔獣に致命傷を負わされ、目の前が真っ暗に……………。

 その後奇跡的に生還したラフィだったが、再会したパーティに生贄の件で口封じとして殺されてしまう――――が、ラフィは死ぬどころか、何事もなかったかのように復活してみせた。

「僕を殺したんだから、お前たちも殺されても文句はないよな」 

不死者(イモーター)となったF級の少年傭兵は「殺されたら殺し返す」をモットーし、成り上がりを目論む。

 陽の光が差さない、深い森の中で、僕……ラフィは人生史上最悪で絶望的な窮地に立たされていた。

 いや、立っているというよりは、這いつくばっている。ゴツゴツした固い地面に倒れている。両足には力が入らず、起き上がれない。というか、足の感覚が左右どちらも無い。


 というか、アキレス腱から先の下が、。起き上がれないのも当然だ。



 「よ、よし!あの化け物、あそこに捨ててきた雑用野郎に気をとられてる!へへ、みんな、今のうちにここから脱出するぞ!」


 頭がある方の先から、僕のパーティのリーダーのそんなセリフが聞こえてくる。


 「へへっ、そういうわけだ、F級の雑用くん。悪いが俺らが無事逃げ延びる為の生贄になってくれよな。

 その代わりに、協会のみんなにはお前が俺たちを逃が――に、化け物に勇敢に――向かっ――ぜ。お前のことは―――の人柱……じゃなかった、――として語り―――!」


 段々遠ざかっていく声、何を言ってるか上手く聞き取れない………。


 「じゃあな、協会最弱のF級傭兵!あばよ―――――」



 その後はみんなの微かな駆け足の音が耳に入り、そして何も聞こえなくなった。


 「グギャルルルルル……ッ」


 耳に入ってくるのは、僕を悠然と見下ろしている、この恐ろしい怪物の唸り声だけとなった。

 僕の両足を奪った、この……異次元の強さを持つ怪物は、僕をジッと見つめていた。



 「くそ、ちくしょう………。あいつら、僕を生贄にして、逃げていきやがった……!

 くそくそ、ふざけんな………ぁ!」


 もう影も足音も無くなったあいつらに怨嗟の言葉を投げかけたが、虚しく響くだけだった。


 ギャリンッ


 「―――ひっ!?」


 金属が擦り合った音がして、反射的に振り向くと―――恐ろしい怪物がナイフみたいに伸びた爪が目立つ熊みたいな手を掲げていた。


 ザシュ!!


 そして、悲鳴を上げる間もなく、僕の体は、その禍々しい爪に切り裂かれた―――


 ―――

 ――――

 ―――――








*****


 アスタール王国の首都からやや離れたところにある田舎町、コヨチ。僕ことラフィが生まれそだった町だ。

 平民生まれなので、僕に家名は無い。この町で暮らしている人は大体そうだ。みんな貴族の爵位を持たない平民だ。この町で爵位を持ってる人がいるとしたら、この町の領主さんくらいだ。


 「着いた……今日も頑張ろう」


 町から歩くこと一時間弱。都会街フェナーシェに到着した僕はそう呟いた。ここを訪れた目的は一つ、傭兵としての仕事をする為だ。

 そう、僕は傭兵協会に所属している正式な傭兵なのだ。って偉そうに言ってはみたものの、落ちこぼれ傭兵ではあるんだけど…。


 傭兵協会とは、王国の首都以外の街や領地全般の治安維持、魔物退治、他国との武力交渉などを請け負う、王国公認の自治組織である。アスタール建国初期から創立された長寿組織で、今年で創立100年目になるんだとか。


 協会の館に入ると一階ロビーにはたくさんの同業者がいて、それぞれグループをつくって駄弁ったり仕事の打ち合わせをしたりしていた。


 「おお?ラフィじゃねーか!今日も町から一時間もかけてここに来やがったのかよ?」


 入口の近くでたむろしていたガタイのいい男傭兵グループに目をつけられ、その一人に絡まれる。


 「おはようございます、先輩たち。ええ、しばらくはまた町から通うつもりです。毎日都会街で寝泊まりしていたら、お金が足りなくなっちゃいますので」

 「がっはっは、それもそうかー!協会で最弱の“F級”のおめぇの稼ぎじゃあ、この街のいっちばん安い宿でも痛い出費になるもんなぁ!」


 男は大きな声でそう言って、またがははと笑う。周りの人たちも彼の声を聞いてこっちの話に気付き、僕を見るとみんな馬鹿にしたような、憐みのような目を向けて笑うのだった。


 「おお悪ぃ悪ぃ、みんなに聞こえちまったみてーだ」

 「いえ………別に」


 わざと大きな声で言ったのは明らかだが、突っかかったところで痛い思いをするのが僕だと目に見えてるので、穏便に済ませておく。


 「それで、F級の傭兵くんは、今日も雑草刈りか?」

 「いや、迷子のペット探しとかじゃねーの?」 

 「この前みたいに街の水路の清掃でもするんじゃねーのか?あの時のこいつからドブの臭いがしたんで、みんなで館から叩き出してやったんだよな」


 勝手な想像をして盛り上がる彼らにぎこちない愛想笑いを浮かべながら、ロビーの奥にある受付窓口へ歩を進める。



 傭兵にはその者の実力・実績に応じた階級が定められている。

 最弱級のE級からD級→Ⅽ級→B級→A級→A⁺級、そして最強級のS級までとなっている。

 しかし、さっきの先輩傭兵は僕のことを「F級」と呼んだ。本来であれば最低級はEなのだが、僕に関しては特別な事情があって、そのさらに下とされるF級と定められているのだ。

 理由は単純、僕がそれだけ傭兵としてあまりに弱い存在だから。まず魔物を一人で倒したことが無い。だからパーティを組んでも必ずお荷物扱いされる。

 傭兵で戦闘実績が無いのは、この業界では鼻つまみものにされ、腫れ物扱いされる。

 そういうわけであまりに弱い僕にはE級すら不相応とされ、不名誉の称号であるF級を与えられてしまったのだ。ちなみに称号を与えたのは、傭兵協会のとある幹部の人で、悪意があったかと言えば十分にあったと言える。


 僕は戦闘面で強くなろうと、これまで色々工夫もして、必死に努力しているのだけど、未だに魔物を一人で倒すことも出来ず、そのせいでいつまで経っても今よりも高いランクの依頼が受けられずにいる。

 まずはちゃんとE級傭兵として認めてもらい、こんな不名誉な称号さっさと剥奪してもらわないと。その為にはやっぱり、並級のいちばん弱い魔物の一匹くらい、一人で倒してみせないとな……。


 「あ、ラフィくん!おはようございます!」


 そんな考えごとをしていると受付窓口の順番列の先頭まで進んでいて、窓口では受付嬢のキャロルさんが、綺麗な笑顔で僕に挨拶してくれていた。


 「あ…おはようございます、キャロルさん。今日のお仕事なんですけど、ちょっと相談して良いですか?」


 愛嬌ある営業スマイルのままキャロルさんは「どうぞ~」と答えてくれた。よし、今日こそは僕にでも出来そうな魔物駆除の仕事を紹介してもらうぞ…!







*****

(キャラクター紹介)

ラフィ

男 16才 黄色い髪 身長167㎝のなで肩体型

アクティブスキル・パッシブスキルともに無し

*本作の主人公。首都から離れた田舎町出身の平民。協会最弱の傭兵で最低級のE級よりさらに下のF級傭兵呼ばわりされている落ちこぼれ。卑屈な性格で自分称は僕、少年口調。



ミラ・キャロル

女 22才 オレンジ色のミディアムヘア 身長160㎝ 

アクティブスキル:鑑定(あらゆる物の価値が分かる。経験を積んでスキルを伸ばせばより詳しい情報を知ることが出来る。あらゆる情報や相場の正式な価値=値段を見抜けられる。

パッシブスキル:???

*傭兵協会の敏腕受付嬢。傭兵・職員から厚い信頼と人気を集めている。誰に対しても物腰柔らかだが、ラフィにだけ砕けた口調で話し、優しく話しかけてくれる。ラフィにとって姉のような存在。王国騎士団に所属している妹がいる。


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