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第13話

「へへっ、ただいまぁ〜♪」


アルヴェは千鳥足で2-Aの扉を蹴り開けた。

片手には通りすがりの不良達から「没収」した酒瓶を握り締め、空中には気絶した三人の生徒がゴミのように漂っている。


「あ、先生……って……」


教室では相変わらず、ルナリアが上品な佇まいで本を広げていた。

彼は一瞬、アルヴェの帰還を喜ぶような表情を浮かべたものの──。


「えっと。その。先生、その方たちは……」


宙に浮かぶ三匹の「戦利品」を目にした瞬間、ルナリアの碧眼が見開かれた。

アラクネの少女は全身焦げ臭く、人間の不良は腹を抱えて蹲り、人魚に至ってはプスプスと髪の毛が焼き焦げている。

まさに地獄絵図としか言いようのない光景である。


「ぎゃはははは!喜べルナリァくぅん!お前のクラスメートが帰ってきたぜぇ!ちょいとばかしオネムのようだが……もうすぐ目を覚ますと思うから安心しろぉ!」


アルヴェは下品な笑いをあげながら、没収品の酒瓶を傾ける。

その豪快な態度に、ルナリアの表情が更に引き攣った。


「おいおいルナリアよぉ……そのドン引きしたような目は何だぁ?まさか、この高潔なる英雄様の教育的指導を非難するつもりじゃねぇよな?」


アルヴェは酒瓶を傾けながら、ケラケラと笑い……。

そして、次の瞬間には彼の指が弾かれた。それと同時に魔術の効果が切れた三人が床に勢いよく叩きつけられる……。


「げぼっ!?」

「うぐっ……!」

「……」


不良達は床を転げながら咳き込み、よろよろと立ち上がる。

アラクネの少女ティーファは八本の脚で必死に踏ん張り、人間の不良バルドは腹を抱えたまま這い上がろうとしていた。


「お?もう動けるのか?いいねぇ、意外と頑丈じゃねぇか」


アルヴェは獲物の反応を見て満足げに頷く。

不良と呼ばれる連中は、この程度では死なない。根性だけはあるのかもしれない。

それこそが、彼らの美点であり、そして──最高の『教材』たる所以なのだ。


「よぉ〜、クソガキ共よぉ。授業サボって楽しかったか?あぁ?そりゃそうだよなぁ。だってお前ら、不良様だもんなぁ?へへっ……」


アルヴェは酒瓶を片手に、実に意地の悪い笑みを浮かべながら言い放つ。

その笑顔は優しげに見えるが、目は笑っていない。瞳からは獲物を追い詰めた猛獣のような、冷たい光を放たれている……。


「ひっ……!テ、テメェ……!」


バルドは震える声で叫ぶ。先程まで不良として威張り散らして……いた訳ではないが、先ほどまでの「お利口さん」な態度は何処へやら。

今や完全に怯えきった子犬のような声色である。


「こ、ここは一体……くそっ、腹痛ぇ……」


必死に状況を把握しようとするバルド。だが、アルヴェに腹を貫かれた痛みと恐怖の記憶が、正常な思考を妨げていく。


「あぁん?分かんねぇのか?ここがどこで、俺が誰なのか……。まぁ、当然か。テメェら不良様にゃ、教室なんて無縁の領域だもんなぁ?」


アルヴェは酒瓶を豪快に傾け、嘲笑うように続けた。


「簡単に説明してやるよ。俺は今日からテメェらの担任だ。ほら、ちゃんと先生らしく説明してやってるだろ?」

「せ、先生だぁ……?ふ、ふざけんな!テメェみたいなイカれた暴力教師が……」


その瞬間だった。

バルドの頭上で空間が歪み、無数の岩石が産み出される。天からの裁きのように、容赦なく彼の全身を打ち付けていく。


「うぎゃあぁぁっ!?」


バルドの悲鳴が教室に響き渡る。

その声に、他の生徒たちの体が震え上がった。


「おいおいおい……テメェ、今なんて言った?この英雄様を『イカレてる』だぁ?」


アルヴェは魔導外套の紋様を不吉に輝かせながら、実に上品な……しかし底冷えするような笑みを浮かべる。


「教育者として、生徒の言葉遣いは正さなきゃならねぇよなぁ?あぁ?これも愛の鞭ってやつだぜ。分かるよな?バルドくんよぉ?」


岩石の雨は更に激しさを増していく。

バルドの悲鳴は次第に弱々しくなり、ついには小さな呻き声となって消えていった。


「さーて、次はどのゴミから可愛がってやろうかなぁ?」


アルヴェは酔った目を細めながら、残された二人を品定めするように眺める。

人魚は既に干物と化して動く気配もない。一方、アラクネの少女は八本の脚を震わせながら、壁際で必死に身を縮めていた。

クモの生態からすれば、腰を抜かすという表現は不適切かもしれないが──まぁ、どうでもいい話である。


「な、なんでこんな事するのさ!なんなんだよアンタは!?」


ティーファは細い声で叫ぶ。蜘蛛の細い脚でガタガタと床を掻く音が、彼女の恐怖を如実に物語っている。


「はぁ?さっきから何度も言ってんだろうが……」


アルヴェは魔導外套の紋様を不吉に輝かせながら、ゆっくりと歩み寄る。


「この俺様が、お前らの担任だっつってんだよ。耳に蜘蛛の巣でも張ってんのか?耳も含めて八本の脚全部もいで、『悪い子の見せしめ標本』にしてやろうか?ん?」

「アンタみたいな教師がいるわけないでしょ!?つーか教師だったら生徒にこんな事していいワケ!?」 

「こんな事ぉ?どんな事だぁ?たとえば──こういう事かぁ?」


アルヴェの指が弾かれる音と共に、紫電が教室を駆け巡った。

その光は蜘蛛の体を這い回り、ティーファの全身を貫いていく。


「うぎょえぇぇぇっ!?」


八本の脚がバタバタと痙攣し、彼女の悲鳴が教室中に響き渡る。

蜘蛛の糸を自在に操るはずのその指先からは、ピクリとも糸が出なくなっていた。


「げぼっ……」


ティーファは白目を剥いて、その場に崩れ落ちる。

八本の脚が意味もなくピクピクと痙攣を繰り返し、踊っているかのような滑稽な光景だ。


「ふん……口答えするからどんな歯応えのある奴かと思ったら……この程度も耐えれねぇとはな、期待外れもいいとこだぜ」


そう言って、床に転がる二人の上に足を乗せる。

バルドの腹を、ティーファの蜘蛛の胴体を、まるでゴミを踏み潰すかのように踏みつける。


「おいおい、まだ息があるみたいだなぁ?この英雄様に踏まれて光栄だと思えよ?ぎゃははは!!」


アルヴェは踏みつけた靴の下で呻く二人を見下ろしながら、実に愉快そうに笑い声を上げる。


「げほっ……く、くそ……」


バルドとティーファは、必死に息を絞り出すように呻き声を漏らす。

しかし、その惨状の最中──。


「あの、先生……」


静かな、しかし確かな意志の籠もった声が響いた。

振り返ると、そこにはルナリアが立っていた。

彼は完全に青ざめた表情で、それでも何とか声を振り絞るように続ける。


「そろそろ……お止めになられた方が……」


顔こそ蒼白だが、その碧眼には確かな意志が宿っている。

この残虐な「教育」を、これ以上見過ごすわけにはいかないと言わんばかりに。


「特に……その、ティーファさんは女子ですし、手加減を……」

「あぁ……女子だとぉ?」


アルヴェはゆっくりと首を回すように振り向いた。その血のような瞳には、今までにない危険な光が宿っている。

ルナリアは思わず一歩後ずさる。死神に睨まれたかのような威圧感に、背筋が凍りついた。


「へへっ……面白ぇ事言うじゃねぇか。女子だからって手加減しろってか?」


アルヴェは邪悪な笑みを浮かべながら、魔導外套をはためかせる。

その姿に、ルナリアは身体を硬直させるしかなかった。


「テメェにはこいつらが何に見えるんだぁ?哀れな人間の男子?可愛い蜘蛛の女子?お坊ちゃん育ちもいい加減にしやがれ。この連中はな──ゴミクズだよ」


彼は酒瓶を一気に煽り、グラスを床に叩きつける。

バリンッ!という音と共に、ガラスの破片が教室中に散らばった。


「いいか、こいつらは不良だ。社会のゴミだ。ゴミに性別なんてあるか?いや、ないね」


アルヴェは踏みつけた靴の力を更に強める。ギリギリと強まる力に、バルドとティーファは苦悶の声を上げる。


「社会の道理が理解出来ねぇ奴は動物なんだよ。動物に理屈が通るわけがねぇ。じゃあどうすれば理解させれるか?」


アルヴェは床に転がる二人を見下ろしながら、低く唸るように言葉を紡ぐ。


「──その答えが、俺様が今やってることなのさ」


アルヴェは千鳥足でありながら、不気味なほど的確な足取りでルナリアに歩み寄る。


「なぁルナリア。馬鹿への教育ってのはよぉ、まず『痛み』を教えるとこから始まるんだ。痛めつけられて初めて、馬鹿は自分の立場ってもんを理解する」


アルヴェは意味ありげな笑みを浮かべながら、得意気に言葉を紡ぐ。


「そうさ……痛みを知って、恐怖を知って、そしてようやく分かるんだよ。自分が何をしてきたのか、誰が目の前にいるのか、これからどうすべきなのか──そして最後には、みーんな同じ言葉を口にする。『ごめんなさい』ってなぁ……?」


ルナリアは思わず喉を詰まらせた。

目の前の男は、教師の仮面を被った暴力の権化そのものだ。

いや、仮面すら被る気なんてさらさらない。むしろ狂気を、堂々と教室に持ち込もうとしているのだ。


(こ、この人……いくらなんでもやり過ぎというか……完全にイカれてる……)


ルナリアは怯えながらも、無言で頷くしかなかった。

この狂気の化身を前に、反論など口にできるはずもない。


「だが、安心しろルナリア」


アルヴェは酔った目を細めながら、にやりと笑う。


「俺様は、実に『公平』な男でねぇ。男も女も、人間も魔族も、みーんな平等に扱ってやろう」


アルヴェは掌に紫電を宿らせながら、そしてルナリアの瞳を見て言った。


「何故なら、俺以外は等しくゴミだからだ。くっくく……ははははは!!」


アルヴェのアルコール臭い吐息が、ルナリアの顔を直撃する。

エルフの青年はもう、涙目になって震えるしかなかった。


「だからよぉ……安心しろって。お前たちがこの英雄様に歯向かわなきゃ、何もしやしねぇ。ほら、優しい先生だろ?」


その「優しさ」という言葉に、ルナリアの背筋が凍りついた。

目の前の男が言う「優しさ」とは、恐らく地獄の婉曲表現に他ならない。


「!?」


遂にアルヴェの手が、ルナリアの顎に伸びる。

獲物を品定めるように、エルフの青年の顔を乱暴に引き寄せた。


「分かったか?お上品でお優しい……エルフのお坊ちゃまよぉ……」


アルヴェの赤い瞳が、獲物を捕らえた猛獣のように危険な光を放つ。

その視線に射抜かれ、ルナリアにできることは、ただ震えながら頷くことだけ。

ルナリアのそんな怯えた仕草に、アルヴェは満足げな──そして、どこか残虐な笑みを浮かべるのだった。


「さてと……っと。おや?この魚、動かねぇなぁ。まさかマジで焼き魚になっちまったか?」


アルヴェは床に転がった人魚の少女を、ゴミを突っつくかのように靴先でつつく。

その荒っぽい仕草に、バルドが絶叫を上げた。


「テ、テメェ!人を……いや、魔族を殺しやがった!?」

「あん?」


アルヴェは実に退屈そうな目をして振り返る。


「おいおい、人魚ってのはな、雑魚人間と違って頑丈なんだよ。この程度の電気風呂で死んじまうような軟弱種族なわけねぇだろ?ほれ」


彼は下品な笑いをあげながら、人魚の少女を思い切り蹴り飛ばした。


「うにゃ……」


その瞬間、少女の魚の尾がピクリと跳ね、青い瞼がゆっくりと開かれる。

目覚めた人形のように、ぼんやりとした意識が彼女の中に戻ってくる。


「むにゃ〜……もう朝っスか……?」

「ほらよ。生きてるじゃねぇか。俺は手加減ってもんを知ってるんだ。まぁくたばってようがどうでもいいがね」


人魚の少女は寝ぼけまなこで辺りを見渡す。

教室の風景、そして目の前で不敵に笑う赤髪の男。その光景が彼女の脳に焼き付いた瞬間──。


「ひぃやぁっ!?な、なんなんスかここ!?」


彼女は尾びれをバタバタと振り回しながら、パニックに陥った魚のように暴れ回る。

だがその慌てた動きも、アルヴェの手が彼女の頬を掴んだ瞬間に止まった。


「おいおい、分かんねぇのかぁ?ここがどこだか……」


アルヴェは人魚の頬をグニグニと引っ張りながら、しかし怒りを携えた表情で言う。


「ここはよぉ、あの『快適』な貯水槽からは遠く離れた、お前の大好きな教室だ……。なぁに、水が恋しけりゃいつでも電気風呂を用意してやるから安心しろ……」


その言葉に、人魚の少女の顔が真っ青に染まっていった。

彼女の頬を掴む手の力が徐々に強まり、彼女の頬がグニィと歪んでいく。


「な、なに、する、んス……かぁ……」

「さっきは、貯水槽で随分と生意気な口利いてくれたよなぁ?おかげで今、このご立派な教室でお勉強できるってわけだ。ありがたく思えよ?」


人魚の頬を更に引っ張る。

少女は逃れようとするも万力の力で掴まれているので逃げる事が出来ない。


「あびゃっ!ぴゃびゃっ!」

「あぁ?魚の言葉は分かんねぇなぁ。もう一回電気風呂で人語に戻してやろうか?」


その言葉と同時に、アルヴェは手を放した。

パタンと床に尻餅をつく人魚の少女。彼女はまるで干物のように、ぴくぴくと震えながら言葉にならない声を上げ続ける。


「ぴゃあ……ぴゃあ……」


一体どんな生意気な言葉を吐いたのか──。他の生徒達の脳裏に疑問が浮かぶ。

だが誰一人として、その疑問を口にする勇気はなかった。


「さぁてと……これで、めでたくクソガキが3匹揃ったってわけだなぁ」


アルヴェは酒瓶を傾けながら、ルナリアを除く3人に視線を向ける。

その血のような赤い瞳に射抜かれ、彼らは芋虫のようにビクビクと震え上がった。


「テ、テメェ……!教師だかなんだか知らねぇけどよ、こんな暴力振るって許されると思ってんのかよ!?」


その時、予想外の声が響いた。

人間の不良、バルドが震える声を振り絞って叫んだのだ。

その目には、恐怖と共に確かな意志が宿っている。


「ほぉ……?」


アルヴェは意外そうな──そして、どこか愉快そうな笑みを浮かべた。

先程まで床を這いずり回っていた青年が、この状況で口答えするとは。


「へへっ……なかなかじゃねぇか。ただのクソガキかと思ってたが……」


アルヴェの目が、獲物を品定めるように危険な光を放つ。

この不良には、何か面白いものが隠れているのかもしれない。


「そうだそうだ!生徒に暴力振るって許されると思ってんスか!このイカれ教師!」


人魚の少女が、尾びれを震わせながら叫び声を上げる。


「アンタなんか通報してやるから!絶対に……!」


アラクネの少女も八本の脚を震わせながら、必死に声を絞り出した。

先程の暴力の恐怖が未だ体に残っているはずなのに、仲間の勇気に触発されたのか、不良たちは次々と反抗の意を示す。


「へぇ……」


アルヴェはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

腐っても不良、こいつらには最低限の根性というものが備わっているらしい。

だからこそ、もう一度思い知らせてやらねばならない。

理の通じぬ輩には、理の外にある力でねじ伏せるしかないのだと。


「通報ねぇ……面白ぇこと言うじゃねぇか」


アルヴェの魔導外套が不吉な光を放ち始める。


「で?何処に通報するんだぁ?ママにでも言い付けるのか?それとも学園長か?」

「だ、だって……警察に通報すれば……」


バルドの声が次第に小さくなっていく。

その時、アルヴェの手が懐から何かを取り出した。


「へへっ……警察かぁ。そうだなぁ、確かにそいつは正しい判断だよなぁ?」


アルヴェはくくくと笑いながら、取りだした物を三人に見せつける。

そこには紛れもない都市警察の紋章が刻まれ、その隣には大長官の印籠までもが──。


「これはただの『お守り』さ……。警察のトップが、この英雄様に『好きにやっていいよ』って、くれた優しい贈り物だ」

「は……?え……?な、なんスかそれ……」


人魚の少女の声が震え、ティーファの八本の脚が激しく痙攣を始める。

バルドに至っては、完全に血の気が引いた顔で固まったままだ。


「このアルヴェ・ローレンス様にはよぉ、世界中に可愛い弟子がいんだよ。その中の一人がたまたま警察のトップにいるってだけの話さ」


アルヴェは酒瓶を傾けながら、懐かしむような──しかし、どこか残虐な笑みを浮かべる。


「そいつがまた、師匠思いでよぉ。俺の『ちょっとした失態』は全部揉み消してくれんだ。たとえば──」


空になった酒瓶を床に落とし、アルヴェは薄ら笑いを浮かべた。


「俺が酒場街を焼き尽くした時もよぉ。あっという間に『原因不明の火事』って扱いにしてくれたんだぜ?ぎゃはははは!!」


三人の不良は息を呑んだ。街一帯を焼き尽くすような暴挙さえ、この男には許されているというのか。


「──つまりだ」


アルヴェの声が、不吉な響きを帯びる。


「この街まるごと焼き尽くそうが揉み消せる。そこでちょっと考えてみろや……たかが不良のガキの一匹や二匹、消えたところで誰が気にすると思う?あぁん?」


その言葉に、三人の顔から血の気が完全に失せた。

目の前にいるのは、単なる暴力教師などではない。法さえも恐れぬ、真の『怪物』だったのだ。


「さて……俺の自己紹介が終わったところで……もう一度聞いてやろう」


アルヴェはゆっくりと立ち上がり、虫けらを見るような目で三人を見下ろした。

その血のような瞳には、純粋な嘲りの色が浮かんでいる。


「何処に俺を通報するんだ?学園長?それとも警察?それともそれとも、都市長か?あぁ、都市長も俺の『お友達』ということを覚えておけ」


アルヴェはどこからともなく新しい酒瓶を取り出すと、真水でも飲むかのような気軽さでその蓋を開ける。

栓を抜いた瞬間、芳醇な香りが教室に漂う。


「まぁ、仮にこの『教育的指導』が公になったところでよぉ……この英雄様は街を焼き払って、綺麗さっぱり消えちまうだけさ。損するのは、お前ら雑魚だけってわけよ!ギャーハハハハ!!」


彼は実に上機嫌で酒瓶を煽り、喉を鳴らしながらゴクゴクと飲み干していく。

その狂気じみた笑い声に、三人の不良は完全に打ちのめされたように俯いた。


「(……あー……この御人、マジでヤバい?でも、僕が聞いた話とは少し違うけど……う~ん?)」


その光景を見守っていたルナリアは、背筋を凍らせながら、しかし何かを思案しながら、密かに震えるしかなかった。


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