『私ね、みんなの中で一人だけ孤立していたの。
真っ白な体に赤目だからみんなに怖がられ避けられてるって自分でも自覚してて、一生孤独なままなんだって諦めていたの。
でもね、ほんの短い間だったけど、
ひかるがいつも私の側にいてくれて、
楽しませてくれて、
私ね、本当に嬉しかった……グスン。
ひかると過ごした大切な時間、私絶対に忘れないよ。
最後になるけど、誕生日、おめでとう!ひかる』
言葉を話せるはずの無い彼女は、
幻覚の中で僕にそう言ってくれた。
「そんな……、僕は君を守れ無かった。
僕がボスの言い付けを破って勝手に飛び出し、
イヴの前でも勝手な行動をしたから。
だから、原因は全て僕なんだ!」
しかし……。
そのイヴの幻覚は、僕の唇に人差し指を当てて、
ゆっくり首を横にふった。
「ありがとう……、イヴ。
僕の方こそ楽しい思い出を、たくさんたくさんありがとう」
僕がそう声に出して返事をすると、
もう消えようとしていたイヴの幻覚は、
僕に最後に素敵な微笑みをみせてくれて……、
そして……、消えていった。
彼女の幻覚が消えた後、僕はまだ幼かった頃の自分を思い出す。
その思い出の中には、
家族みんなからお祝いされながら、
誕生日ケーキのロウソクの火を消している僕の姿があった。
僕の心の中には何ともい言いようの無い強い気持ちが込み上げてくる。
僕は……、僕は
あの頃は、歳をとるなんて当たり前で関心が無かったのに……。
二十歳を過ぎてから最近までの僕は、歳をとるのが嫌だったのに
……。
僕はこの日、
自分が奇跡的に生まれて来られたこと。
そして……、今日まで一日一日を無事に生きてこられた事、
また、みんなから大切に守られてきたからこそ今の自分がいるという事の重みを
痛烈に感じて、
一日中涙が止まらなかった……。