それからまた、何ヵ月も月日が流れた。
ある日、周辺の動物が少なくなって来たという理由から、
僕ら全員で定住場所を移動する事になった。
移動は大変で、危険な旅でもあったんだ。
そして無事に新しい定住場所に着いた時に、
僕はハッっとした。
彼女がいないのだ。
僕は仲間にあたってみたが、みな知らないみたいだった。
彼女とまだ幼い少女の二人だけが、新しい定住場所には来ていなかった。
僕は、すぐに彼女らを助けに行こうとしたが、
ボスに止められた。
僕を行かせまいとするボスの熱い目は真剣だった。
僕は、ボスの気持ちも理解できないことは無かった。
時間は夕方を過ぎ、もう辺りは暗くなっていたから、
ボスが僕の身の安全を考えてくれているからこそに違い無かった。
僕はそれでも、ボスを振り切って彼女を助け出しに走った。
どこまでもどこまでも、僕はがむしゃらに走り続け、
夜が明けた頃にようやく彼女の前に着いた。
僕は彼女を意外な場所でみつけた。
彼女は幼い女の子を抱き高い木に登り、
目の前の存在と対峙していたのだ。
目の前の存在とは、鋭く大きな牙を光らせた獣、サーベルタイガーだった。
彼女は僕に引き返すように身振り手振りで教えているようだ。
僕の中からは本能的な恐怖が沸き起こり、一度引き返そうとしてしまったが、
だけど、思いとどまった。
僕は覚悟を決めた。
もしもの為にと準備し、持ってきていた奥の手 猛毒の弓矢で僕は先ずその牙獣に狙いを定めた。
そして、先に威嚇するため石を投げつけた。
牙獣は向きを変え、僕めがけて襲いかかってきた。
僕は目を瞑り、その獣の中心めがけて矢を放った。
『グサッ!!』
「え……?」
考えもしなかったその状況に
僕の理性はなかなか追い付かず、
驚きのあまり、しばらく身動きすら出来なかった。
※次話には一部センシティブな表現が含まれています。観覧の際はあらかじめ充分ご注意いただきますようお願い致します。