ボスの意図は正解にはわからなかったが、その身振り手振りから
火は神聖なものなので、勝手に使わないようにと注意されたんだと思う。
そこは食べるモノがとにかく少なかった。
そこは時間だけがとにかく多かった。
お日さまが昇り、沈むまでの時間が異常に長かった。
僕は、ここが地球より重量が重く、時間の進みかたが遅い巨大惑星だと信じるしか無かった。
僕は結局何日も肉を食べず、
肉の代わりにサバンナにはえる草を食べ飢えをしのいだ。
僕の身体にはタンパク質が全く足りず、ガリガリにやつれ、
立ち上がることさえ辛くしゃがみあぐらをかいていた。
僕の意識は空腹のあまりもうろうとしていて、
焦点の定まらないその目は、ずっとただ一点を見つめていた。
『キュイン!キュイン!』
目の前には子供のジャッカルが三匹いて、その内二匹が白い一匹に一方的に噛みついていた。
噛みつかれた一匹は体中が血だらけになっていた。
暫くして、別の大人のジャッカルが近くを通りかかった。
二匹はそれに気付くと、血だらけの白い一匹を置いて
そのジャッカルの元に向かっていき、
三匹のジャッカルは、血だらけの白い一匹を置いて、
なに食わぬ様子で立ち去っていった。
『キュイ~ン!』
その血だらけの白いジャッカルは僕に気が付いたみたいで、
僕のほうを振り向いた。
しっぽと片耳が噛み切られていた。
「キミは自分が惨めだと気付いていないのか?」
あろうことか、その白いジャッカルは僕に元気になついてきたんだ。
僕は、そのアルビノと差別するイデオロギーが太古から当然のように許されてきたことが
理解できず、
どうしようもない気持ちだった。
僕はそれからも肉を拒み続け、とうとうあぐらをかいた姿勢を維持することすら出来なくなり、前に倒れた。
僕は、もう姿勢さえもどうでもいいなとそのとき感じた。
そして暫くすると、何かを手に持った一人の白い女の子がどこからか僕の方へ近付いてきた。