明日葉に爆弾(もどき)を取り付けて数十分後…………、
「ぅわあああぁぁぁぁぁああああああああ!???」
「……起きたな。」
隣の部屋から明日葉の凄まじい悲鳴が響いた。
俺達3人は読んでいた台本を置き、素知らぬ顔で明日葉の元へ向かう。
「なんだ!どうしたあす………、うぉ!?」
「あ、明日葉先輩?何でそんなもの!?」
俺と純は明日葉に取り付けられた、コチコチ、と時計の音を鳴らす爆弾もどきを見て白々しくも後退り、美羽は俺の背中に隠れて、ぼそりと一言。
「明日葉…………、テロ?」
「ちっがうわよ!!?」
涙目で叫びながらも、明日葉は叫ぶ。
「起きたら何か煩くて、あと身体にガムテープで括り付けられてるから気になって鏡で背中見たら爆弾付いてたんだよ!?」
そう言いながら涙目で近寄ってくる明日葉から俺達はビビりながら後ずさる。
「明日葉、離れろ!俺らまで吹っ飛ぶ!!」
「いいじゃん!一緒に弾け飛ぼうよ!?」
「バカ言うな!!」
錯乱でもしているのだろう。
何故そんなアンサーを出したのかに笑いを堪えながらそう返す。
しかし、明日葉の奇行はそれだけでは止まらない。
明日葉は涙目でむっとした顔になり、そのまま部室を飛び出した。
「お、おい!明日葉!?」
「追おう、宗治、純くん!」
同じく部室を飛び出した美羽を俺達2人で追う。
砂埃でも上げそうな勢いで駆け抜ける明日葉を追いかけると、向かった先は体育館。
練習中のバスケ部の所だった。
明日葉はコートを横断し、張間の下に向かい、突然やってきた明日葉に、張間を含めたバスケ部部員はきょとんとした顔を浮かべた。
「おう、木吉…………、どうした?」
「張間くん、ごめんね。アタシ、大切な事を伝えたいんだ。」
「え……………、」
「ぶほ!?」
明日葉の突然の告白を受けて顔を赤くする張間と、それを見て「おー?!」と声を上げるバスケ部部員を見て堪らず吹き出す。
見ると、純も美羽も笑うのを堪えて様子を見ていた。
何だ何だ?とコートの半分を使って練習していたバドミントン部の女子達が様子を見に行こうと近づき…………、明日葉の背中を見て短く悲鳴を上げ遠ざかる。
まあ、当然の反応だろう。
しかし、バスケ部はそれに気付かず、明日葉と張間のやり取りを注視していた。
「な、なあ………、木吉。それって………、」
「うん。あのね、どうしても張間くんにしか頼めない事なの。駄目………、かな?」
「〜〜〜〜っ、い、いいよ!俺でよければ何だって力になってやる!!」
「ホント!?ならね………っ、」
「う、うん!………………ん?」
告白されると思ってたらしい張間が顔を赤くしたまま、覚悟を決めた表情で真剣に頷き、そして…………、後ろの部員と一緒に固まった。
明日葉の背中にある物を見つめて………、
「背中に付いた爆弾、取って♪」
コチコチと、音が鳴り響くソレを見て、固まった張間がハッとした顔になり、自分の身体を抱きながら一言。
「俺から離れなさいよ!?」
「さっき何だって力になるって言ったでしょ、アンタ!?」
「いいから離れなさいよ!!」
妙な口調になり、その場からダッシュで逃げ出し、それに続いて残りの部員も逃げる。
逃げた先は残りのコートの半分の方、バドミントン部の女子達のいる所だ。
それを見て、予め避難しようとしていた女子達がまた悲鳴を上げて逃げる。
「ちょ、ちょっと!バスケ部!!なんでこっちに来んのよ!?」
「しょうがねえだろ!逃げ道こっちにしか無かったんだから!!」
「待ちなさい!爆弾取るか……、アタシと一緒に吹き飛びなさい!!」
「無理だぁぁああああ!?」
「来ないで、木吉さあぁぁあん!!!!?」
明日葉の怨嗟の叫びにそう返しながら、張間達は俺達がいる出入り口とは別の出口から逃げていく。
俺達はこっそり、明日葉達の後を追った。