ミレイがいた位置には、大きな凹みが生まれており、当たっていたらどうなっていたか想像する必要すらない。
「この攻撃は、今までと明らかに違うやり方だ。2時の方向、位置関係的にあっちが上にいる、となると。」
「一瞬だけど、うちの目には映ったよ。爆弾のような塊が降ってくるのが、そしてそれが投射された位置を角度から計算すると、ここから15mは高い位置!」
「だとしたら、あの建物か!」
ダイアの指さす先には、倒壊したビルであろう、石やレンガが積み重なった建物が。
「この位置に留まるのは危険だ、ペアに分かれて撹乱するぞ。」
「了解!」
シュウの合図とともに、ミレイとダイアはシュウとエメと反対方向に走り出す。
それから1秒も経たずに、
バゴーンッ!
つい先ほどまでシュウ達がいた建物が爆発により、跡形もなく崩れ落ちる。
「やっぱり、うちらの位置は丸見えみたいだね。来るよ!」
シュウとエメの走る方向に、爆発する物体が複数降り注ぐ。
幸いなことに、精度が高い攻撃ではないため2人の全速力でことなきを得ている。
「
「かなり難しい、ある程度の位置は見えるけどその手前に大きな壁があるの。それを貫くほどの火力はあたしは出せない。」
「なら、もっと近づくぞミレイ!俺に続け!」
「ダメです!
ビットからリッカの叫び声に近いものが響く。
その声に、ダイアは怯んだことでその場に溜まる。
「なんでだよーー。」
ピピッ!
バゴーンッ!
ダイアの1mほど先の地面が、地雷のようなもので爆発する。
「おわっ!」
その爆風でダイアはミレイの方向へ吹き飛ばされる。
「
「えほっ、えほっ。危ねえ、粉微塵になるところだった。」
「
「ふぅ、分かりました、
「だけど、このままじゃシュウ達が!」
リッカは頭をフル回転させる。
(シュウ達は敵の気を引いている、本来はミレイ達に倒してもらうのが定石、だけどそれを予測してか罠を仕掛けてるモンスター、かなりの知力がある。……なら、私の作戦がその上をいけばいい!)
「指示を一気に出します!
「了解!」
「そこから、
「え!?り、了解!」
「最後は
「はい、
4人はリッカの指示通り、武器を構え、位置を変え体勢を整える。
そして、
「3,2,1,ゴー!」
「
赤い魔力を宿った弾丸が、建物の壁を砕き飛ばす。
「次は俺だな!おらぁ!!」
ダイアは自慢の筋力を存分に使い、長剣を槍投げのように投げ飛ばす。
風を切り、長剣は建物屋上の壁にぶつかる。
「これでいいのか?」
「はい、お2人は全力で建物から離れてください!」
「え、なんでだーー。」
「ターゲットがこっちに変わるってこと!早く走るよ!」
リッカがダイアの手を引き走り出す。
その後には、爆発が2人を狙う。
その頃、反対側では、
「隙ができた、
「分かってるよ!運でもなんでも当たれ!」
エメは建物目掛け矢を連続で放つ。
しかし、敵を倒せた手応えはない。
「ダメ、うちの矢じゃ確実に狙えない!」
「いいえ、それで十分です。敵は混乱しています、熱を感じない攻撃が前後から迫る。それは、何よりも恐怖に繋がる。その瞬間、少しの苛立ちと綻びが生じる。そこが!」
「俺の狙う一瞬。
シュウの周りを灰色の魔力が纏い、狼の如き速さで建物に接近する。
さらに、
「
足元に緑色の魔力が集まり、ジャンプ台のように扱い高く飛ぶ。
次の瞬間、シュウは敵を捉えた。
「お前が新型か。」
そこには、レイダーが1体。
正確には、1体と1体がドッキングし、獅子のような姿勢で弾丸を頭に乗せてる大砲から撃っていたようだ。
そして、その顔には赤い石が。
「終わりだ!」
シュウの横薙一閃で、レイダーは砕かれる。
辺りには静寂が戻り、熱探知にも反応はない。
「
「了解しました、
「おかげさまで、擦り傷で済んでますよ。」
「良かったです、それでは撤退を開始してください。こちらは、退却完了するまで熱探知を行います。」
「了解しました、ネームレス、アウト。」
4人は合流し、辺りを警戒する。
そして、ネームレスは新型のレイダーを倒し、拠点まで撤退を完了した。
「
「こちらこそ、信じて頂きありがとうございました。……シュウ、ミレイと一緒に夜お時間もらえませんか?」
「了解しました、何かありましたか?」
「前回ミレイの力を詳しく聞いていなかったのと、今回の戦闘でシュウが勝手に新しい力を使っていたので、私に共有をしなかったことに少しお叱りをしようかと!」
「……なるべく参加するようにしまーー。」
「来なかったら、分かってますよね??」
ミレイの声が低くなり、鋭く怒りを表した言葉がシュウの背筋を伸ばさせる。
「了解しました、ではまた夜に。」
「はい、本日もお疲れ様でした。
ピッ。
ビットの通信が切れる。
シュウは椅子に座り、大きく呼吸をする。
すると、ミレイがそばに現れる。
「隠してるつもりはなかったんだけどな。」
「リッカちゃんは、全てを知りたい人なんだよ。シュウ君、諦めてたくさん怒られようね!」
「ミレイ、お前も怒られる側だろ。」
「あたしは何も隠し事なんてしてないもん〜。」
ミレイは上機嫌で歩き去っていく。
「はぁ、猫被りが。」
「何か言った?」
シュウにミレイの猫の目のような鋭い視線が突き刺さる。
「いや、何も。」
「そっ、次も頑張ろうね!」
ネームレスは、再び死人を出さずに戦闘を終えることができた。
少しずつ、指揮官とネームレスの距離感も近づいている気がしていた。