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第20話 新型

早朝、シュウ達はいつも通り家事を分担して取り組んでいた。


シュウとミレイは洗濯を、ダイアとエメは掃除を担当。


基本的に闘士は、出動依頼がない限り他の仕事は割り振られていない。


もちろん、自己研鑽で筋トレや勉学に励む者もいる。



ネームレスも例外ではない。


シュウは、読書と対人格闘を率先して取り組む。

読書は部隊長としての指揮能力を高めるため、過去の闘士の著書やロア王国での戦術書などを中心に。また、いざという時の戦闘力の高さを継続するために実践形式の訓練を隊員と、特に遠近両方対応できるミレイと訓練することが多い。


ミレイもシュウに習い、実戦形式の訓練は多く取り組む。ただ、読む本は別ジャンル。ロア王国で人気の、ラブストーリー性、エンタメ性のあるものを好む。


ダイアは体の強さが特徴ということもあり、日々筋トレは欠かさない。

腕立て、腹筋、背筋、スクワットなど自分の体を追い詰め、強靭な体をキープしている。

また、目の良さもずば抜けているため、夜は空を見上げ星を眺めるのも訓練の一部としている。


エメは視野の広さが特徴のため、よく外を観察することが多い。廃れている場所に暮らしつつも、必死に生きようとしている植物や鳥などを観察している。



各々家事が終わり、シュウとミレイは家の近くの広場で実戦形式の訓練を始めた。


広場の地面は土、余計な遮蔽物や岩もなく真っ向から戦うのに最適な環境となっている。


「ふぅ、いくよシュウ君!」

「ああ!」


ここでの対人戦闘は、武器を使わない格闘の訓練を行っている。


2人の格闘能力は総合で見ると最高レベルと言って申し分ない、強いて言えば素手はシュウに分があるが、足はミレイに分がある。



シュウの拳がミレイの顔に迫れば、寸前で避けた勢いで足蹴りを腹目掛け放つ。


その足を、シュウはスピンして避け裏拳をミレイの後頭部へ。


さらに、ミレイはしゃがむと同時に足払いをくらわせる。


体制を崩して倒れたシュウの顔面目掛け、鋭いこぶしが迫るが、両手で弾くと共にその場でブレイクダンスのように回りながら足蹴りを狙う。


その動きを読んだミレイは両腕で防御し、再度構える。


彼らの動きは目で追うのがとても難しい程に早く、勢いも訓練とは思えない。


一般人では30秒も持たないスタミナの消費量だろう、加えて1発1発が当たれば致命傷。



そんな訓練を、既に1セット3分の3セット目に入っていた。


その姿を見ていたダイアとエメがそっとこぼす。


「あの2人の対人訓練は、度を越してるよな。あの一撃一撃が、確実に仕留めるものだ、直撃したらただじゃ済まない。」

「そうだよね、うちらも何度か訓練したけど、レイダーと戦う以上に恐怖を感じた。それを、2人は当たり前にこなしてる、すごいとしか言いようがないよね。」


2人も自分の力を高めるために、自己研鑽に励んでいた。




すると、



ウィーンッ!ウィーンッ!ウィーンッ!

ネームレスに出動要請の警報が鳴り響く。


「来たか、レイダー。」

「やっぱり、頻度が増えてるよね。行こう、シュウ君!」


シュウとミレイを先頭に、ダイアとエメも闘服に着替え装備を整える。



すると、


ピッ!


見送り人アンダーテイカーよりネームレス、聞こえますか?」


リッカの通信がネームレスに入る。


「こちら、死神隊長リーパーヘッド、通信良好です。後30秒で、現地に向かいます。」

「了解しました、では可能な限りの索敵を始めます。今まで同様、陣形は死神隊長リーパーヘッド千里眼アイズ天使エンジュ案内人ローダーの2組で行きましょう。」

「それで問題ありません、では現地に向かいます。バックアップ、よろしくお願いしますね、見送り人アンダーテイカー!」

「もちろんです、天使エンジュ、ネームレス、出動お願いします!」

「了解!」


先行を、シュウとエメが、後衛をミレイとダイアで努め、警報が鳴った地域に向かう。


「なあ、気になったんだけどよ、シュウ、あのシキカンと仲良くなってないか?天使エンジュも含めて。」

「仲良くはなっていないと思う。作戦を滞りなく、被害を出さないために通信を取り合うことは増えてはいるけど。ダイアも参加するか?」

「……いいや、俺はやめとく。」


今はビットが通信状態ではないため、この会話はリッカには届いていない。


ダイアもコミュニケーションに参加してほしいのはシュウもリッカも同じ、だが、これまでの指揮官の行いを考えると、シュウやミレイのように全てを受け入れることができる人ばかりでない。



周りは砂が舞い、視界が取りずらい地域に変わる。


倒壊したビルや、瓦礫が放置された空間。



ピッ!

ビットに通信が入る。


「今の所、熱探知に反応するものはいません、警戒して進んでください。」

「了解です、案内人ローダー、何か見えたら全員に報告を。」

「OKだ、死神隊長リーパーヘッド。まだ、俺の目にも何も映らなーー。」


スサーッ。

ダイアに途端に寒気が走る。


それは、長年の経験とも言えるのだろうか、身体が危険を感じ取ったのだ。


そして、ターゲットは自分ではない、ミレイに向けられてることもなんとなく分かった。


「ミレイ!危ねえ!」

「へっ!?」


バゴーンッ!

ダイアがミレイを庇いながら転がる。



ミレイがいた位置には、大きな弾痕が。


「っ!全員、建物の陰に隠れろ!敵の方角は、2時の方向!」


4人は建物や瓦礫に隠れる。


死神隊長リーパーヘッド、何か見えますか!」

「この位置からでは、自分には見えません。ただ、相手も新しい戦い方をしてきてます、まずは様子見をします。」

「了解です、こちらでもさらに熱探知で確認します。」


レイダー側からの攻撃、ネームレスをそう簡単に勝たせないように新型を投入してきたようだ。

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