「自分たちの事を、ですか。やはり、リッカは珍しい指揮官ですね、そのようなこと今まで聞かれたことがありませんでした。」
「確かに初めてですね、分かりました!話せる範囲でお伝えします!それと、あたしからは交換条件が!」
「交換条件ですか?」
「はい!リッカちゃんのことも教えてください!あたし、今の王国の人の事も気になっているんです!」
「それは問題ありません、ではどの順番でいきましょうか?」
この場の空気は、ミレイが握っているように感じられた。
「じゃあ、あたしがシュウ君のことを紹介して、シュウ君にあたしのことを紹介してもらうのはどうですか!リッカちゃんには、自分で話してもらうことになっちゃいますけど……。」
「おい、なんでミレイに俺のことをーー。」
「いいですね!私もその方が面白いと思います!」
「リッカまで、それは効率が悪いと思いますが。」
「効率なんてこういう時はどうでもいいのです!難しいことを承知で、私は皆さんと距離を縮めたい、指揮官としても、なれるのであれば仲間としても。」
リッカの細くなっていく声を、2人は聞き逃さなかった。
「仲間、じゃないんですか?」
「え?」
ミレイの言葉に、リッカは驚きの声を隠せない。
「だって、リッカちゃんは他の指揮官とは全く違う。正直奇妙だなとか変わっているなってのは感じましたけど、あたし達に寄り添おうとしてくれている、それにあたしはこの前の戦場で命を助けられました。」
「ミレイ、私は仲間と思ってもいいのでしょうか。」
「仲間の基準って何なんでしょうね、あたしはリッカちゃんを仲間だと思っていますけど、シュウ君は?」
「……まぁ、仲間でいいんじゃないでしょうか。これまでの戦闘で、ミレイだけじゃなくダイアとエメの事も救ってくれました。自分も、基準は分かりませんが仲間になれているんだと思います。」
「お2人とも……ありがとうございます。」
リッカの声は、安心したと同時に涙ぐんだものへと変わる。
そう、目に見えない茨のようなものに締め付けられていた心が2人に相談したことで解放されたのだ。
「え、リッカちゃん泣いてます!?ちょっと、シュウ君女の子を泣かせちゃダメって言ったでしょ!」
「俺のせいなのか?リッカが勝手にーー。」
グリッ!
ミレイはシュウの右足を勢いよく踏みつける。
「痛っ!なんだいきなり。」
「リッカちゃんを泣かせた罰!ごめんなさい、リッカちゃん、部隊長なのにこういうところは鈍感で。」
「いえ、お2人は何も悪くありません。ただ、なんだかホットしてしまって。失礼しました、もう大丈夫です。」
「やっぱり、俺のせいじゃなかったみたいだぞ。」
「じゃあ、あたしのストレス発散ってことで!」
「はぁ。」
シュウの大きなため息の後、3人は趣味や好きなものについて話始めた。
「ミレイは、誰にでも優しくそして温かく接してますね。見た目は細い体、スレンダー体系って言うんでしょうか、けどかなりの健啖家だと思います。後、どんなことでも嘘をつくことにはとても厳しいです。それと時々、誰かに嫉妬してるところも見ますね。自分と同じく読書も好きそうです。」
「なるほど、ありがとうございます。」
「すみません、リッカちゃん。確かに、シュウ君の言っていることは間違いないのですが、イラっと来た部分があるので後で叩いて宜しいですか?」
「いや、正しいなら問題ないだろーー。」
「許可しますよ、実際私も今の説明されたら叩いてると思いますし。」
「何でだ、女性って生き物はまだ理解ができない。」
次はシュウの紹介に移る。
「シュウ君は、ご承知の通り物静かな性格ではっきりものを言うタイプなんですが、あたしたちの事を1番に考えてくれます。ただ、隊長であろうとするが故なのか、無茶をすることもしばしばあります。正直、副長のあたしにももっと頼って欲しいくらいです。後、頭の回転は誰よりも早いですし、読書をよくしてます。欠点は、あまり感情を出すことがないので、少し読み取りづらいことがありますね。」
「おい、半分くらい愚痴じゃなかったか?」
「そんなことありません~。」
「なるほど、シュウの事もさらに詳しくなれました、ありがとうございます。最後は、私ですね。」
最後に、リッカが自分の事を話す。
「私は、ネームレスが初めて担当する部隊で、正直驚かされてばっかりです。子供のころから両親に厳しく育てられたので、皆さんと同じく戦闘も出来ます。ダガーと弓は今でも欠かさず持ち歩いてますね。周りには、よく真っすぐだとか頑固と言われますが、正直納得いってません。後は、甘いものが大好きです。このくらいですかね?」
「リッカちゃん、意外と普通の人なのかもしれませんね。」
「意外とって何ですか!ミレイも私の事馬鹿にしてます?」
「違います!違います!ただ、あたし達と似てるような気がして。リッカちゃんは、何歳なんですか?」
「今年で22になります。」
「じゃあ、あたしとシュウ君の1歳年上だ、お姉さん指揮官か~なんかかっこいいです!」
ほのぼのとした会話が、3人を包みこむ。
この瞬間だけは、戦いの事を忘れられた気がした。
「お2人とも、お休みなのにお時間ありがとうございました。……いつか、
「話せますよ!リッカちゃんなら!だって、リッカちゃんのおかげであたし達は生きていられる。それは、2人にも伝わっているはずです。」
「そうですね、すぐにとはいかないかもしれませんが、いずれは話せると自分も思います。なので、これからもネームレスの指揮をよろしくお願いします、リッカ。」
「っ!?はい!私の力、全てを皆さんの命のために注ぎます。本日はありがとうございました。リッカ、アウト。」
ピッ。
ネームレスとの通信が切れる。
リッカの表情には、笑顔が戻り、やる気に満ち満ちていた。
そして3日後、再び襲撃が発生してしまった。