夜中のネームレスを指揮し、正確な指示で初めての夜の戦闘で勝利をおさめ、休日を過ごしていたリッカの頭には、ネームレスのことでいっぱいだった。
自分の部屋から外を眺めると、日差しが照り付け、子供の笑い声が聞こえ、平和な国であると象徴されていることが身にしみて感じられる。
しかし、ダイアとエメの言葉は頭の中をぐるぐる回り、どうすればいいのかリッカは迷ってしまっていた。
(私は、指揮官としてネームレスの皆さんに認めてもらえていない。偽善、私の自己満足に付き合わせてしまっているのでしょうか。
1人で孤独に包まれながら、ベッドの上に体育すわりをする。
1秒1秒が、時が止まってるのではないかと勘違いするほどにすぎるのが遅い。
ただ、リッカは1つの壁で止まるような人ではなかった。
(答えが見つからない、どうすれば……シュウに聞いてみるのはいいのでしょうか。でも、彼も私を認めていないとしたら……ううん、憶測で決めつけてはだめ、ちゃんと話し合って、理解しないと先に進めない。私は、ネームレスの力になりたい!嫌われているとしても、拒絶されなければ理解できるチャンスがある!)
バサッ!
ベッドから勢いよく起き上がり、軍服に着替えて王国に向かう。
その歩みは、覚悟を決め、全て受け入れることを躊躇わないと言わんばかりのしっかりしたものだった。
そして、コントロールルームに入る。
椅子に腰を掛け、
「お願い、シュウに繋がって。」
思いを胸に、
「
リッカの周りには白い魔力で表示される、ネームレスの情報が。
ピッ。
リッカはビットの通信をシュウに繋ぐ。
「
この通信は、確実に届くものではない。
休みの日は、ビットを外すことを許されており、それはネームレスも例外ではない。
もちろん、王国の中にも年中装着している者もいる。
だが、過酷な環境で戦っている彼らが、休日までビットを付けているとは考えづらかった。
しかし、リッカはどうしても相談をしたかった。
10秒経過し、ビットに応答はない。
(やはり、休みの日までビットは付けていないですよねーー。)
「
「っ!?お、お疲れ様です。
「それは、
「あ、ええと、その、少し相談したいことが。シュウ、お時間少しよろしいですか?」
「構いません、リッカ。こちらもお話ししたいことがありました、それと副長の
シュウからの予想外の提案に、リッカは驚きを隠せなかった。
「あ、はい、もちろんです。では、
ピッ!
「ありがとうございます。一応、隣に座ってはいますが。」
「え!?では、私たちの会話はーー。」
「すみません、
「そ、そうですか。」
(危ない危ない、何か変なことを相談してたらピンチでした。)
リッカは平静を装い、ミレイに伝える。
「改めまして、
「了解しました、それではあたしのこともミレイと呼んでください。」
「ミレイ、やはりとても丁寧な方ですね、声からもお淑やかさが窺えます。」
「お褒めの言葉、嬉しいです。たしかに、シュウ君よりは丁寧な自覚はあります!」
「おいっ、俺を巻き込むな。」
シュウとミレイが普段通りの会話を始める。
「事実だから仕方ないでしょ、部隊長としてシュウ君は冷静だけどその分周りに冷たいから。」
「ミレイが周りに温かくしすぎているだけだ、副長なんだからもう少し落ち着いてもいいんじゃないか?」
「落ち着いてはいます!ただ、シュウ君が冷たすぎて周りが凍りそうだから温めているんです!」
「それで周りが火傷しなければいいけどな。」
「なにをー!」
2人の会話を聞いていたリッカは、
「うふふっ。」
と、ほほ笑みの言葉をこぼす。
「あ、すみません、あまりにも戦闘中の2人とギャップがありすぎて、微笑ましさに声が漏れてしまいました。」
「じゃあ、今の話を聞いててリッカちゃんはどっちが正しいと思いますか?」
「え、わ、私が決めるのですか!?」
「そうですね、第3者の視点でこういうものは判断してもらった方が丸く解決します。リッカ、教えてください。」
リッカは顎に拳を当て、頭をフル回転させる。
導き出した答えは、
「ま、まあ、ミレイのように温かいのは私は好みですね。」
「やったー!だってさシュウ君!」
「はいはい、いつも温めてくれてありがとうございます。」
「うわっ、絶対に思ってないでしょその言葉!シュウ君ってこういう人なんですよ!どう思いますリッカちゃん!」
「あ、でも、お2人だからちょうどいいのかもしれませんね!その、長く一緒にいることで出来上がったちょうど良い温度感の信頼関係とも思えます!」
リッカはなんとか場を落ち着かせる。
そして少しの間、静寂が訪れると、
「ところでリッカちゃん、ご相談があるっていってませんでしたか?」
「え、あ、はい。その、ネームレスの立場を承知の上でご相談があります。」
「分かりました、どういったことでしょうか?」
「言える範囲で構いません、
リッカの提案は、シンプルであり、距離を詰められる一番良い提案だった。