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第16話 衝突

3体のレイダーから放たれる銃弾は、ネームレスのいる位置を正確に狙ってくる。


「くそっ、確実に俺たちの位置はバレてるな、どうするシュウ。」

「正確な位置が分からないと、俺たちがハチの巣になる。どうにか近づいて、ビットに反応させられれば。」

「ビットに反応ないのであれば、私が目になります。死神隊長リーパーヘッド、お願いできますか?」

「あんた何言っているんだ!俺たちは生身なんだぞ、いくらあんたが敵の位置が分かるからって、駒のように使うつもりかーー。」

「了解しました、見送り人アンダーテイカー。自分に指示をください、それに合わせます。」


シュウは銀色に刀身が光る大剣を構え、リッカの指示を待つ。


「おいっ、シュウ正気かよ!シキカンが俺たちを使えると思ってるのか!今までと同じことになるぞ!」

「だが、位置が把握できている見送り人アンダーテイカーを信頼するのが、一番可能性が高い作戦になるだろう。」

「セシルと同じ結果になるって言ってるんだよ!命を懸けた危険な賭けに出る必要はーー。」

案内人ローダー、1つ教えておく。見送り人アンダーテイカー、お願いします。」

「分かりました、銃声が止むタイミングで行きます。」


シュウは息をひそめ、銃弾が飛んでくる方を見据える。




真っ暗闇の中、


銃弾の雨が、止んだ。


その瞬間、


「今です!」



リッカの合図と同時に、シュウは真正面から走り出す。


レイダーもリロードが終わるタイミングで再度撃ちだしてくる。



だが、次の射撃のタイミングでは、ビットでレイダーの位置を把握できていた。




もちろん、ここでの1番の問題はここからだ。


シュウは敵の位置を把握できた、だが弾丸の熱を探知してからでは避けるのが間に合わない。



そこで、2人の連携が始まった。


「左に30度!」



シュウはレイダーへ直進から、リッカの指示通り斜めに走り始める。


シュウの背後を銃弾が突き抜けていく。



弾丸は、1発もシュウに当たらない。


「次、5m先に高さ2mの岩の壁があります、そこに隠れて!」


シュウはスライディングし、岩の壁に隠れる。

隠れた瞬間に、岩の壁が弾丸を弾く。



その姿を、ダイア達はただただ見ることしかできなかった。


「なんで、あんな動きができるんだよ。」



次の指示がシュウに届く。


「2秒後に弾丸がやみます、右に60度で再度直進を!」

「了解しました、1、2。」


リッカの指示通り、弾丸が止みシュウは再度走り始める。


「敵との距離、13m。ここからはーー。」

「自分の力を使います、いいですね。」

「許可します、タイミングは!」

「今! ハシれ、迅狼ウルフ。」


ボワァ!

シュウの体に灰色の魔力が覆われ、腰を低く落とし、四足歩行に近い姿勢になる。


次の瞬間、リッカのレーダーでも捉えるのがやっとのスピードで、


「ふんっ!」


大剣の2振りで、3体のレイダーを殲滅する。



辺りは、静寂を取り戻す。


「すげぇな、やっぱりシュウはーー。」


見惚れていたダイアの背後から、


案内人ローダー!伏せて!」


リッカの声が響くと共に、銃弾がダイアに迫る。



その距離、残り5m。


「っ!?くそっーー。」




ダイアが死を覚悟した瞬間、



ガギーンッ!

弾丸を何かが弾き飛ばす。




「っ、ミ、ミレイ!?」

「生きてる?ダイア君。」


そう、ダイアに迫る弾丸をミレイがライフルの弾丸で弾き飛ばしたのだ。


ダイアとミレイは約15m距離が離れていた。


その距離から、ダイアに迫る弾丸を弾いたのだ。


「早く伏せて!」

「くっ!」


リッカの指示通りに伏せるダイア。


天使エンジュ、敵の行動を予想して熱探知だけを頼りに攻撃を無効化した、彼女もシュウと同等の力を持っているということですね。)


ビットにも、2体のレイダーが迫るのが確認できる。


「ここからでは本体を狙うことは難しい、皆さん、死神隊長リーパーヘッドの方に退却をーー。」

「その必要はありません、見送り人アンダーテイカー。大体の位置、そして先ほどの弾丸で弱点の位置も分かります。なら、あとは!」

「何をするつもりですか、天使エンジュ?」

「弱点を狙い撃つのではなく、弱点を巻き込んで破壊すれば倒せます!こんな風にして!焼夷弾ナパームショット。」



1発の弾丸に、赤い魔力が纏わった状態で突き進む。


その弾丸は、周りの空気を焼くかのように熱く、レイダーがいるであろう場所に着弾すると同時に、


バゴーンッ!!

半径1mほどの範囲で爆発が起き、レイダー事周りを焼き尽くした。


天使エンジュ、その攻撃は?」

「後でお話しします、今のところレイダーの反応は確認できません、見送り人アンダーテイカーの方は如何ですか?」

「こちらでも、索敵できる範囲にはいません。もうすぐ夜も開けます、1度退却をしてください。」



夜の急な戦闘であったが、何とか対処することが出来た。



「ネームレス了解、死神隊長リーパーヘッドより見送り人アンダーテイカー、夜遅くに指揮を執って頂きありがとうございました。」

「あたり前なこと言わないでください、私は皆さんの指揮官です。皆さんの安全を守るのが役目、ネームレス部隊夜分遅くにもかかわらず本日もお疲れ様でした。」

「守るのが役目、笑わせないでよ。」


リッカの通信に、エメが入り込んでくる。


「おい、やめろ千里眼アイズーー。」

「あんたらが指揮官なんて、こっちは認めていない!あんたらのせいで、何人が消されたと思ってるの!善人ぶるのはやめてよ!」

「そ、そんな、私はただネームレスをーー。」

「じゃあなんだよ、俺たちをこれから死なねえように命を張るってのか?笑わせんな、駒としか思ってねぇ奴らが!」

「やめなさい、案内人ローダー!副長命令です!」


ダイアとエメの怒りが、リッカに突き刺さる。


「す、すみません、ただ私は、あなた達を死なせたくなーー。」

「俺たちのことを知ってもそんなことが言えるのか!偽善者は、うざいんだよ!」

「そもそも、うちらのことを知ろうともしない人に、指揮なんてされたくないの、こっちはいつ死ぬかも分からなーー。」

「やめろ、案内人ローダー千里眼アイズ。次はないぞ。」



シュウは2丁拳銃を2人に向ける。


その表情は、真剣そのもの。



見送り人アンダーテイカー、自分の隊員の失言深くお詫び致します。作戦は終了、本日もお疲れ様でした。ネームレス、アウト。」


シュウは通信を強制的に遮断する。




リッカの周りを静寂が包む。


「私は……わたし、は。」


リッカの頭から、ダイアとエメの声が消えることはなかった。

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