3体のレイダーから放たれる銃弾は、ネームレスのいる位置を正確に狙ってくる。
「くそっ、確実に俺たちの位置はバレてるな、どうするシュウ。」
「正確な位置が分からないと、俺たちがハチの巣になる。どうにか近づいて、ビットに反応させられれば。」
「ビットに反応ないのであれば、私が目になります。
「あんた何言っているんだ!俺たちは生身なんだぞ、いくらあんたが敵の位置が分かるからって、駒のように使うつもりかーー。」
「了解しました、
シュウは銀色に刀身が光る大剣を構え、リッカの指示を待つ。
「おいっ、シュウ正気かよ!
「だが、位置が把握できている
「セシルと同じ結果になるって言ってるんだよ!命を懸けた危険な賭けに出る必要はーー。」
「
「分かりました、銃声が止むタイミングで行きます。」
シュウは息をひそめ、銃弾が飛んでくる方を見据える。
真っ暗闇の中、
銃弾の雨が、止んだ。
その瞬間、
「今です!」
リッカの合図と同時に、シュウは真正面から走り出す。
レイダーもリロードが終わるタイミングで再度撃ちだしてくる。
だが、次の射撃のタイミングでは、ビットでレイダーの位置を把握できていた。
もちろん、ここでの1番の問題はここからだ。
シュウは敵の位置を把握できた、だが弾丸の熱を探知してからでは避けるのが間に合わない。
そこで、2人の連携が始まった。
「左に30度!」
シュウはレイダーへ直進から、リッカの指示通り斜めに走り始める。
シュウの背後を銃弾が突き抜けていく。
弾丸は、1発もシュウに当たらない。
「次、5m先に高さ2mの岩の壁があります、そこに隠れて!」
シュウはスライディングし、岩の壁に隠れる。
隠れた瞬間に、岩の壁が弾丸を弾く。
その姿を、ダイア達はただただ見ることしかできなかった。
「なんで、あんな動きができるんだよ。」
次の指示がシュウに届く。
「2秒後に弾丸がやみます、右に60度で再度直進を!」
「了解しました、1、2。」
リッカの指示通り、弾丸が止みシュウは再度走り始める。
「敵との距離、13m。ここからはーー。」
「自分の力を使います、いいですね。」
「許可します、タイミングは!」
「今!
ボワァ!
シュウの体に灰色の魔力が覆われ、腰を低く落とし、四足歩行に近い姿勢になる。
次の瞬間、リッカのレーダーでも捉えるのがやっとのスピードで、
「ふんっ!」
大剣の2振りで、3体のレイダーを殲滅する。
辺りは、静寂を取り戻す。
「すげぇな、やっぱりシュウはーー。」
見惚れていたダイアの背後から、
「
リッカの声が響くと共に、銃弾がダイアに迫る。
その距離、残り5m。
「っ!?くそっーー。」
ダイアが死を覚悟した瞬間、
ガギーンッ!
弾丸を何かが弾き飛ばす。
「っ、ミ、ミレイ!?」
「生きてる?ダイア君。」
そう、ダイアに迫る弾丸をミレイがライフルの弾丸で弾き飛ばしたのだ。
ダイアとミレイは約15m距離が離れていた。
その距離から、ダイアに迫る弾丸を弾いたのだ。
「早く伏せて!」
「くっ!」
リッカの指示通りに伏せるダイア。
(
ビットにも、2体のレイダーが迫るのが確認できる。
「ここからでは本体を狙うことは難しい、皆さん、
「その必要はありません、
「何をするつもりですか、
「弱点を狙い撃つのではなく、弱点を巻き込んで破壊すれば倒せます!こんな風にして!
1発の弾丸に、赤い魔力が纏わった状態で突き進む。
その弾丸は、周りの空気を焼くかのように熱く、レイダーがいるであろう場所に着弾すると同時に、
バゴーンッ!!
半径1mほどの範囲で爆発が起き、レイダー事周りを焼き尽くした。
「
「後でお話しします、今のところレイダーの反応は確認できません、
「こちらでも、索敵できる範囲にはいません。もうすぐ夜も開けます、1度退却をしてください。」
夜の急な戦闘であったが、何とか対処することが出来た。
「ネームレス了解、
「あたり前なこと言わないでください、私は皆さんの指揮官です。皆さんの安全を守るのが役目、ネームレス部隊夜分遅くにもかかわらず本日もお疲れ様でした。」
「守るのが役目、笑わせないでよ。」
リッカの通信に、エメが入り込んでくる。
「おい、やめろ
「あんたらが指揮官なんて、こっちは認めていない!あんたらのせいで、何人が消されたと思ってるの!善人ぶるのはやめてよ!」
「そ、そんな、私はただネームレスをーー。」
「じゃあなんだよ、俺たちをこれから死なねえように命を張るってのか?笑わせんな、駒としか思ってねぇ奴らが!」
「やめなさい、
ダイアとエメの怒りが、リッカに突き刺さる。
「す、すみません、ただ私は、あなた達を死なせたくなーー。」
「俺たちのことを知ってもそんなことが言えるのか!偽善者は、うざいんだよ!」
「そもそも、うちらのことを知ろうともしない人に、指揮なんてされたくないの、こっちはいつ死ぬかも分からなーー。」
「やめろ、
シュウは2丁拳銃を2人に向ける。
その表情は、真剣そのもの。
「
シュウは通信を強制的に遮断する。
リッカの周りを静寂が包む。
「私は……わたし、は。」
リッカの頭から、ダイアとエメの声が消えることはなかった。