シュウはミレイたちと合流し、警戒を怠らずに撤退を開始する。
「すまない、
「気にしないで、
「その長距離を、
「まあ、半分うちの力で半分はあの
この瞬間、シュウは考えていた。
(コントロールルームから、眼に見える情報だけでレーダーにすら映らない敵の位置を言い当てて、尚且つ狙撃のサポートまでした。そんなことが出来るのか、
そのまま荒野を進み、ネームレスの拠点へと戻ってきた。
「ありがとう、ダイア君。肩を貸してくれて、それに、あたしを守ってくれて。」
優しい微笑みが、ダイアの頬を赤くする。
「き、気にするな!やるべきことをしただけだ、それだけだ。」
「3人は休憩していてくれ、
「分かったよ、あ、シュウちゃん!」
「どうした?」
エメが部屋に入ろうとするシュウを止める。
「あの、えっと、
「ああ、了解した。」
シュウは扉を開き、風が心地よい静かな部屋の椅子に腰かける。
そして、
ピッ。
「
少し間が開き、
「こちら
「了解しました、リッカ。指示通り、連絡をさせて頂きました。」
「ありがとうございます。シュウ。ではーー」
「すみません、お話に入る前に1つだけ。
「いえ、私も役に立てたのであれば本望です。」
シュウからの報告が終わると、通話しているだけの2人に緊張が走った。
「シュウ、単刀直入に聞きます、あなたは何をしたのですか。」
「……それは、命令違反を犯したことについてですか。」
「それもありますが、本題はそっちではありません。あなたほどの聡い方なら、私の聞きたいことが分かるはずですよね。」
「どうやって、10体もいる敵を殲滅したのか、ということですね。」
「はい。本国には、
冷静かつ、寒さを感じさせられるリッカの言葉がシュウを襲う。
「私が調べても、ネームレスの情報は全く出てきません。ですが、シュウは何年もネームレスに所属している。教えてください、ネームレスはなぜ存在しなくてはいけないのですか?」
「それは、自分の口からは言えないのです、申し訳ございません。」
「やはりそうなんですね、ではそこはもう突っ込みません。後は、シュウから私に対して1つ言われていないことがあると思います。」
「自分が言っていないこと、ですか?」
シュウは右こぶしを顎に当て、何を報告し忘れているか考える。
しかし、すぐに答えが出てこなかった。
「何のことを言っているか、分からないようですね。」
「はい、何か報告し忘れたことがあるか考えたのですが、滞りなく伝えたとーー。」
「そこじゃありません!!私、シュウと通信を切る前になんて言いましたっけ!」
「あ、えーと。」
シュウはレイダーを前にして、岩に隠れた時のことを思い出す。
「早急に援護に向かわせます、それまでの無茶は禁止します。これは、指揮官命令です……でしたね。」
「その通りです、そして現場の状態から、シュウから突撃をして敵を殲滅したように思えます。もちろん、臨機応変に対応できるのがあなたの特徴なのだろうと私は思っています。ただ1つ確認させてください。」
「なんでしょうか?」
「あなたは、
「……。」
シュウはすぐに反応できなかった。
理由は簡単、
心のどこかで、生に対する執着が薄れてきているのを感じていたからだ。
「そんなこと考えていません、自分は部隊長として……。」
「指揮官の私に嘘をつくのですか?今、あなたの心拍数が急激に上がりました、少なからず的外れでは無かったということですよね。」
「そ、それはーー。」
「
シュウは黙り込む。
今まで、自分が主導権を握ってネームレスで活動してきた。
そう、これまでの指揮官は人形のようなものだったからだ。
だが、リッカは違う。
優秀且つ、努力家な彼女には全て見えているようであった。
「申し訳ありませんでした、リッカ。」
「認めるのですね、シュウ。では、後日あなたに命令違反の罰を与えなければいけません。」
「承知しています。何なりと、お申し付けください。」
「では遠慮なく、まずはこの場で口頭で通達します。」
リッカは1呼吸おき、
「シュウ・マールス部隊長。今後、戦闘中無茶をする場合は必ず私に報告することを義務付けます。そして、私があなた達の所に辿り着くまで、生き残ることを誓ってください。」
「っ!?辿り着く……、お言葉ですがリッカ、前半部分は尽力します。ですが、自分たちの所に来るなんて、危険すぎます!」
「……なるほど、そんな危険な場所であなた達は生活をさせられているのですね。分かりました、私は1度決めたことは曲げない性格ですので、頭にねじ込んでおいてください。あなた達の顔を、必ず見に行きます。本日の通信は以上にします、お疲れ様でした。
「
ピッ。
リッカがビットの通信を切る。
シュウはリッカの発言に困惑していた。
そしてこぼれたひと言、
「リッカ、あなたは危険な指揮官だ、ここに来てしまったら、あなたは戻れなくなってしまう。
シュウの言葉の意味とは。