ダイアはミレイとエメが戦いやすいよう、防御に徹していた。
「2人は狙撃に集中しろ!俺が弾を弾き飛ばす!」
持ち前の視力とパワーで、遠距離からの銃弾を長剣で弾く。
そのおかげで、着実に2人の狙撃はレイダーを苦しませる。
「皆さん、敵の反応は残り5体です、今の戦い方を継続してください。」
「了解。」
ダイアは迫る弾丸を弾き、2人は狙撃を続ける。
着実に敵を撃ち抜き、残り2体。
「よし、あと2体で俺たちの方は片付くーー。」
あと少しで倒し切れると思った瞬間、
3人の空間を、何かが通り過ぎたのだけが分かった。
すると、
「うっ!」
ガチャンッ!
ライフルが石の地面に落ちる音が響く。
「ミレイ!」
ダイアがミレイに駆け寄ると、
ミレイの右肩が、氷の魔法で作られた氷柱のようなもので突き刺されていた。
傷からは、赤い血が滴り氷魔法の影響で右手を動かせなくなっていた。
その情報は、リッカのコントロールルームでも確認できていた。
「
「何でそこまで指示ができる!」
「氷の魔法が飛んできたのは、皆さんから見て3時の方向、その方角に5-7mほどの高さの建物があるはずです、確認できますか?」
ダイアが言われた通りに、壁から顔をのぞかせると、
「あれか、物陰に隠れてるやつがいやがる!」
「それが、
「いけるなら行きたいけど、うちの狙撃は50mが限界だよ、ここからじゃ届かないーー。」
「いいえ、私が届かせます。矢の準備をしてください、10秒後に合図を出します!」
「そんな、何であんたにーー。」
ピッ!
シュウからのビット通信が入る。
「全員、
「シュウちゃんまで!……もう、分かったよ!指示をください、
エメは矢をつがえる。
(風速5m、南風、矢の重さを考えると落下速度は。)
リッカの頭の中には、何か計算式のようなものが生まれているようだ。
そして、
「今です!通常の狙撃より、約30度上、いつもの態勢で引き絞りの力は1.2倍で放ってください!」
「細かい注文だけど、こうかな!」
矢を構え、引き絞り、言われた通り角度を調整。
パシューンッ!
指示を受けたエメの矢が空を舞う。
そのまま、矢は風に乗って飛んでいき、
高所から落ちてくるレイダーの姿が。
「あ、当たった!?」
「まだ油断してはいけません!前から2体近づいてきます!
「近くに来たなら俺の出番だ!」
大振りの一撃が、目の前の壁ごと吹き飛ばしレイダーの姿が見える。
「エメ!」
「任せて!」
2発の矢が瞬時に放たれ、赤い石を貫く。
レイダーの殲滅完了だ。
「よしっ、こっちは終わりだ。ミレイ!」
ダイアが怪我を負ったミレイに近寄る。
「ミレイ、大丈夫か!」
「何とか、痛いけど生きてるよ。」
「止血をします、
「ああ、いくぞ。」
「痛いの嫌いだから、優しくしてね。」
ダイアが氷魔法を掴む。
「注意するけど、ちょっと我慢してくれな。いくぞ、せーの!」
氷が肩から抜け、その瞬間に止血剤を塗布し、血が噴き出すのを防ぐことに成功する。
ミレイの顔色も、少し明るくなったように思える。
「ありがとう、2人共。」
「悪い、俺が盾になれなくて。」
「
「
「了解。」
エメは警戒しつつ、走りながらシュウの方へ向かう。
リッカも、シュウの援護に入ろうとビットをつなごうとするが、
ピッ、ピッ。
シュウのビットが全く反応しない。
「何?何でシュウにつながらないの?」
何度も通信を試みるが、反応がない。
「
「え?うーん、できないです。ビットが反応しません。」
「まさか、
「現場につきます!」
エメがシュウのいるであろう場所に着くと、
大剣でレイダーを斬り捨てるシュウの姿が。
「シュ、シュウちゃん。何が起きてるの……。」
シュウの周りには、10体以上のレイダーの残骸が。
そして、ようやくビットが反応する。
「あっ、つながった!
シュウのビットから感知できる熱探知には、レイダーの反応が0になっていた。
「
「あ、ええと、
「そうですか、ありがとうございます。では、敵の反応もないようなので警戒しつつ自分たちは撤退を開始します。ネームレス、アウト。」
ピッ。
リッカとのビットの通信が全員切れる。
指揮官及び、部隊長は所属する部隊のビットを全て操作できるのだ。
そして、シュウが歩き始めた瞬間、
ピッ。
強制的にシュウのビットのみ通信が入る。
「
リッカの寂しくも、そして怒りも込められた言葉がシュウに告げられた。