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第28話 夏祭り

 十月十六日。横須賀花火大会が幕を開いた。

 俺は神社の境内で、焼きそばを食べながら大竹を待っていた。


「おまたせ」

「おう、って、ええ?」


 なんと現れたのは菊の浴衣姿の大竹だった。


「どう、俊くん? 可愛い?」


 俺は口元を押さえながら、「すっげー可愛い」と本音を漏らしてしまった。

「そう言ってもらえてなにより。すっごく嬉しいよ」

 じゃあ行こうか、と俺たちは自然に手をつなぎ出店のほうへと歩いていく。

 大竹はりんご飴を購入して、舌でちろちろとゆっくり舐める。

 その姿もどうも官能的だった。俺の男の部分がうずいてくる。

 そこに気付いているのか、大竹は時折挑むような目を投げてきた。


「どうする? このあと」

「とりあえず、花火を見てそのあとは……」

 そしたら背後で一輪の花火が咲いた。俺はそれを見て、「綺麗だな」と言った。

「俊くんがいいんだったら、ホテルでも行く?」

「そ、それは……ちょっと」

 すると大竹は苦笑した。「まだ私たちには早いって? 旅館でシタじゃない」

「そうなんだけど……。まだちょっと怖いっていうか」

「なにが?」

「君を傷つけることが」

 そしたら大竹は大笑いした。「バッカじゃないの」

「おい、そんな言い草はないだろ」

 俺は少々怒った。そしたら彼女は俺の胸に顔をうずめてきて、

「私はあなたにどれだけ穢されてもいい。そんな覚悟も汲み取ってよ」

「大竹……」

「あと、その呼び方」

「ん?」

「そろそろ希美って名前で呼んでよ」

「分かった。希美」


 そしたら自然と笑いが込み上げてきた。俺と希美は笑いあう。

「もうちょっと躊躇してよお」

「そんなこと言われてもだなあ」

 背後ではたくさんの花火が散っていっている。俺は、希美を抱きしめて、口付けをした。

 そこには、普遍的な愛があった。


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