十月十六日。横須賀花火大会が幕を開いた。
俺は神社の境内で、焼きそばを食べながら大竹を待っていた。
「おまたせ」
「おう、って、ええ?」
なんと現れたのは菊の浴衣姿の大竹だった。
「どう、俊くん? 可愛い?」
俺は口元を押さえながら、「すっげー可愛い」と本音を漏らしてしまった。
「そう言ってもらえてなにより。すっごく嬉しいよ」
じゃあ行こうか、と俺たちは自然に手をつなぎ出店のほうへと歩いていく。
大竹はりんご飴を購入して、舌でちろちろとゆっくり舐める。
その姿もどうも官能的だった。俺の男の部分がうずいてくる。
そこに気付いているのか、大竹は時折挑むような目を投げてきた。
「どうする? このあと」
「とりあえず、花火を見てそのあとは……」
そしたら背後で一輪の花火が咲いた。俺はそれを見て、「綺麗だな」と言った。
「俊くんがいいんだったら、ホテルでも行く?」
「そ、それは……ちょっと」
すると大竹は苦笑した。「まだ私たちには早いって? 旅館でシタじゃない」
「そうなんだけど……。まだちょっと怖いっていうか」
「なにが?」
「君を傷つけることが」
そしたら大竹は大笑いした。「バッカじゃないの」
「おい、そんな言い草はないだろ」
俺は少々怒った。そしたら彼女は俺の胸に顔をうずめてきて、
「私はあなたにどれだけ穢されてもいい。そんな覚悟も汲み取ってよ」
「大竹……」
「あと、その呼び方」
「ん?」
「そろそろ希美って名前で呼んでよ」
「分かった。希美」
そしたら自然と笑いが込み上げてきた。俺と希美は笑いあう。
「もうちょっと躊躇してよお」
「そんなこと言われてもだなあ」
背後ではたくさんの花火が散っていっている。俺は、希美を抱きしめて、口付けをした。
そこには、普遍的な愛があった。