「大田さん、また届いてますよ。学生のラブコール」
「いいわあ、ちょっとメンがヘラってた時期だったからね。ちょっと読み上げて」
「『大田さんへ。あなたの独創的なシナリオと、一見すると相反するような叙述的な歌詞やメロディにたくさん泣かされてきました。どうかお願いします。俺にゲーム制作を教えてください』大田さん、モテるんですね」
「子供にモテたって仕方ないよ。でも、そうか、誰かに引き継ぐ時期なのかもしれないね」
大田のそんな突拍子もない言葉に、飯田専務は苦笑をせざるをなかった。
「社内だけで引き継いでください」
「でもその少年は、もしかしたら将来、ここで働くかもしれないよね」
「そんな希望的観測、らしくないっすよ」
飯田は自販機でコンポタとブラックコーヒーを購入した。コンポタは大田光の分だ。どうぞ、と飯田が大田にそれを渡す。すると満面の笑みで大田は表情を和ませた。飯田はそれを直視できず、照れて目を背けてしまう。それを大田は、「思春期の子供か‼」とからかってやる。
「どうする? 晩ご飯、食べに行く?」
「いいですよ」
「その少年にメッセージを送ることを条件にね」
「くっ、ずるい。大田さんはどんなエロゲーのヒロインよりもしたたかですよ」
大田ははにかんで見せた。「それ、褒めてるの」
「べた褒めです。じゃあ行きましょっか」