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第8話 怪盗ルパン

 瞼を開けるといつの間にか朝を迎えていた。置き手紙には『君の童貞はいただいた』怪盗ルパンより、という謎の犯行声明があった。それを見てクスリと笑ってしまう。大竹ってジョークも言えるんだな、と。

 そしてその裏にはこんなことも書かれていた。


「ノベルゲームには三本柱が必要よ。一本目がシナリオ。二本目がキャラクター。三本目が音楽ね」


 俺は、音楽というのを自作のゲームに取り入れる考えは頭になかった。

 音楽か……。橘に連絡を掛ける。「はい、もしもし。なんだよ」


「端的に言うぞ。お前の姉ちゃん、音大の出身だよな?」

「そうだけど? なんだよ、気持ちわりぃ」

「ゲーム音楽、作ってもらえないか?」

「姉貴と相談はしてやるけど、クラシックを習ってきた姉貴にとって、ゲーム音楽に自分の演奏を使うのは“屈辱”だと思うぞ」

「それ、どういう意味だよ。ゲーム音楽よりもクラシックのほうが位が上だって言うのか?」

「品位の問題な。まあ、だから頼むだけ頼んでやるって」


 俺はため息を吐いた。「分かった。頼んだ」


 通話が切れた。そして衝動に駆られて俺は早速、プログラミングに入る。


 苛々したとき、悲しみの執念に駆られたとき、俺のやる気は沸々と湧き上がる。


 C言語やC++言語などから基礎媒体を作り、ひたすら英語と数字をPC上のデバックに羅列していく。


 そして集中力の糸が切れたとき、俺の肩に疲労感がのしかかってきた。


 いま行ったゲーム制作では、完成度合いで言うと二十分の一しか出来ていない。


 そもそも、膨大な言語プログラミングをひとりで行うことが常識外れなのだ。しかし妥協はしたくない。良いものを作りたいという願いだけが強い。


 しかしまあ気分転換も必要だ。そう思い、Nextのサイトを見る。そこの音楽プロデューサー兼ゲームクリエイターの大田准の掲示板に猛烈ラブコールを送った。





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