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妹を救うため、エロゲーを作ります。
柊准
現実世界現代ドラマ
2025年01月13日
公開日
5.3万字
連載中
俺――竹達駿は冴えないオタクであり、高校生でもある。そんな俺には夢があり、PCゲーム会社に入社したいというものだ。
そんなとき、とあるゲーム会社が「新人ゲーム賞」を企画。
俺はプログラミングが出来るので、必要な人材は作家と絵師だった。そんなとき、学校中に横行している”変な噂”――秋月菜穂という女子が作家であると。しかもそのジャンルが官能小説だと。そんな噂を真に受け俺は意を決して会いに行った。すると秋月菜穂は開口一番「あなた、私の犬にならない?」と痴女をさらけ出した。
 この物語は、秋月菜穂やさらなる仲間と共に感動させるエロゲーを作るものである。

第1話 俺がギャルゲーにはまったきっかけ

 俺――竹達駿は、その当時十歳だった。


「SPins」というゲーム会社の、感動系ノベルゲームの開発部署であり業界の金字塔、「Next」から生み出されたゲームがアニメ化され、それを食い入るように見ていた。


 いつも同じところで泣き、いつも同じところで笑う。




 それから八年後、十八になった俺は必死にバイトして買った最新機種のゲーミングPCで、八年前のアニメ化になった原作の十八禁Nextゲームをプレイする。




 そして一週間、徹夜してヒロインたちを攻略していった。親父には「受験生がなにやっているんだ」と怒鳴られ、担任に休学届けを出すことを伝えるとき、その理由のことを馬鹿正直に「女生徒と交流(性行為も含まれる)」と言うと、冷めた目で笑われた。




 とまあ、様々なことがあったが俺は無事にメインヒロインを攻略し、ハンカチで目元を覆った。雫が頬を伝う。




 ――ああ、なんて素晴らしいんだろう。




 俺もSPinsにいつか入社し、Nextでゲームを作りたい。


 ネットでNextの公式サイトを眺めていると、ある欄に目を奪われた。




「自作PCゲーム募集。賞金一千万円」




 俺はすぐに部屋を飛び出した。親父の書庫に俺が以前百回近く読み込んで、練習しまくったプログラミングの本があったはずだ。




 家の地下からそれを見つけ、ペラペラとめくる。




 まだ言語は覚えている。英語で羅列された文章を見てはそう思う。




 俺はそのとき、自分の腹のなかで熱意を感じた。




「やってやるよ。妹のために」




 今の時期は五月の始め。締め切りは来年の三月。




 なんとか、間に合うか?


 しかし、問題がある。シナリオと絵師の存在だ。俺はシナリオを作れないし、絵も描けない。


 だから俺は、まずはシナリオライターを探すことにした。




 ネットで募集しても詐偽かなんかだと思われて相手にしてもらえない。作家のDMに相談をもちかけても無視される。そんな状態だった。




 ◇




 市立蒼ヶ峯あおがみね高校。俺は教室で友人の橘たちばな幸助こうすけと談笑していた。


 彼とは小学校からの付き合い。無類の漫画好きで、なかでも「ハガレン」や「闇金ウシジマくん」をこよなく愛しているらしい。




「PCゲームを作りたいって?」




「ああ、そうなんだよ」




 橘は顎に手をやって、「それ、今やることか?」と眉間に皺を寄せた。




「どういうことだよ」




「俺らが今やるべきことって、生産性のオタクとしてゲームを作るんじゃなくて、受験勉強だろ。そりゃあ俺だってお前が作ったゲームやりてえよ。でも今じゃない。大学時代や、そしてお前がSPinsに入社した時だって嫌になるほどゲームを作れるだろ。だからまずはさ――」




「そうだよな。受験も大切だ。でもいまはゲームを作りたい。理由はちゃんとあるんだ」


 それを伝えると、橘は何やら複雑な表情を見せたが、


「だったらもう止めはしない。出来上がったら俺に遊ばせてくれ」


 それから彼は笑ってくれた。




「ありがとう。でも、ちょっと障壁があってな」




「なんだよ」




 橘は小首を傾げた。




「シナリオライターと絵師がいないんだ」


 腕を組んで橘が唸った。「それはまずいな。あ、そう言えばこの学校に小説家がいるっていう噂があったな・・・・・・」




 俺は食い気味に彼に問いかけた。


「まじかよ。どこのクラスだ!?」


「まあ落ち着けって。・・・・・・あっ、思い出したわ。でもそいつやめとけ」


「何でだよ」




「そいつ、痴女だから」




 ・・・・・・は?




 ◇




 夕方、図書室に訪れる。


 すると空間にひとりの女子生徒がいた。万年筆で原稿用紙にカリカリと何かを書いている。俺はその子に近づいた。




「君が秋月菜穂さん?」




 女子生徒は切れ長の目でこちらを窺ってくる。その際にロングの黒髪が揺れる。彼女はアイドルかモデルをやっていると言われても、信じてしまうほどの美貌だった。




「だれ?」


「俺は竹達。ちょっと君にお願いがあって来たんだ」


「なに?」


「俺と、ゲームを一緒に作ってくれないか? 君が小説家なのは聞いた。だから頼む!」




 頭を下げて俺はお願いした。すると秋月は嘆息を吐く。




「いいけど、ひとつだけ条件がある」


「なんだよ」


「私の犬になりなさい――」




 ニヤリと意地悪な微笑みを、秋月は見せた。



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