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12.〈クロイVS.ルキア〉

 シエルの一方的な提案により、ルキアさんと一勝負することとなった。


 報酬の内容は、クロイ・シリルが勝利した場合、ルキアさんの〈復讐心〉について教えてもらう。

 ルキア・マエロンが勝利した場合、僕の正体を〈勇者〉だということを明かす。


 僕の場合、正体を明かしてもいいと思っているが、シエルによると『ルキア君の本性を知りたいから、君の正体を明かすというのを、餌にしただけのことさ』らしい。シエルらしい案ではあるが、急な展開で少々、理解しがたいものではあった。


「ここが俺の屋敷だ」


 ルキアさんが住んでいる屋敷へと案内された僕とシエルは、屋敷の中へ入ると、天井には大きなシャンデリアと長い階段が目に入った。そのまま庭のある裏口へと案内された。


「ルキアさんって、騎士なんだよな?」


「あぁ」


「地位は……?」


「言っていなかったか。〈騎士団団長〉だ」


(騎士団団長!? なら、尚更納得だ)


「クロイ~勝てる?」


 シエルは、僕の腕をツンツンと触りながら、そう言ってきた。


「剣を交えないと分からないが、僕は負けない」


「そう来なくっちゃ!」


 広々とした庭に着いた僕たちは、ルキアさんと向き合い、腰に差している剣を抜いた。すると、ルキアさんの大剣は鍔までしかなく、その先は水で出来ていた。


「俺は、水の使い手だ。言葉の通り、水を自在自由扱える」


「へぇ~。それで? クロイはどうして、いつもの剣を使わないのかな?」


 僕は、エクスカリバーではなく、通常の剣を鞘から引き抜いた。シエルは何となく感づいているだろうと思いながらも、シエルに答えた。


「この剣を使ったら、正体がバレるだろう? 敢えてだ」


「ふぅーん。まぁ、良いけど。魔法ありの勝負で良いね? お二人さん」


「勿論だ」


「じゃあ、始め!!」


 シエルの合図で、僕とルキアさんは互いの剣を交えた。水で出来た大剣だが、鋼の様に力強く、素早いルキアさんとの相性もいい。


「〈イグニス〉!!」


 剣先に魔力を込め、炎を纏わせ、ルキアさんに向かって炎の斬撃を与えたが、彼の剣により、炎が消されてしまった。


(当たり前か)


「アクア・エッジ」


 水の大剣が大きくなり、ルキアさんの素早い足取りで、背後を取られた僕は、すぐさま剣でカードした。


「ッツ!!」


「クロイ殿、始まったばかりだぞ。もっと、本気を出してもらって構わん」


「……本当にそれでいいのか?」


 僕は、彼のオリーブ色の瞳を睨みつけた。


「構わんと言っている、だろうがッ!」


「分かった。なら、そうする」


 ルキアさんに何とか隙を作り、空間移動をし、彼の背後に回り、腰に差していたエクスカリバーを引き抜いた。


「空間移動だと!?」


「───数多を駆け抜ける竜の息吹よ。今こそ呼び覚ませ。〈エクスカリバーン〉!!」


 エクスカリバーを引き抜いたことにより、僕の魔力はエクスカリバーに全て回り、光の風による斬撃が、ルキアさんを襲った。ルキアさんは、大剣でカードしようとしたが、斬撃の方が早く、ルキアさんを斬ろうとした。


「まずい!! ルキアさん!! 避けろっ!!」


 僕は、すぐさまルキアさんに叫ぶと、斬撃は止まらず、ギリギリ避けれそうにないルキアさんが、目に飛び込んだ。


(本気、出しすぎた……)


 もう、ダメかと思った所に、シエルが間に入り、デコピンで斬撃を跳ね返し、ルキアさんの庭にある、一本の木を切り倒したのであった。

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