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10.〈勇者としての道〉

───僕は、〈勇者〉として突き進む。僕にしかできないことを、やり遂げるまで。


「このまま、〈勇者〉として歩き続ける。他の道なんて知りもしない。ユーベルでの出来事もそうだが、最終的には皆、笑顔を取り戻せた。この先も、誰かの笑顔を守れるような存在になりたいんだ。「嘘」で出来ているこの世界だが、そんな世界にも、嘘偽りのない人間が存在していたんだ。だから、シエル。力を貸してくれ」


 僕は、シエルの頭に手を乗せると、驚いた表情を見せ、静かに僕から離れた。


「君という人間は……。本当に面白いね。良いよ。力、貸してあげる」


「感謝する。さて、宿も見つけたことだ。腹が空いているのだろう?」


「そうだとも!! クロイのお金で食べるご飯は、さぞ美味しいんだろうね!」


(マジか……)


 その後僕とシエルは、宿から一旦出て、胃の中に何かを入れるために街の中を歩き、魚介類専門の飯屋に何とか辿り着き、そのままシエルの分まで、奢る形となった。


「いやー美味しかった!! 満足満足!!」


「結構、食べるんだな……。金が飛ぶ、な」


「乙女にそんなこと言うもんじゃないぞ!! クロイは成長しないんだから!!」


(だから、幼女)


「心の中で言うなぁぁぁぁぁ!!」


 僕の心の声が聞こえたシエルは、頬をプクーと膨らませた。店員に、デザートの注文をし、何とかシエルの機嫌を直した。


「ところで、クロイ。何故、この〈グローリア帝国〉に来たと思う?」


「あの貴族らと同じモノがいるからか?」


「正解! 貴族の数も人口も圧倒的に多いこの国に、魔物や悪魔との契約を果たしている人物がいるかもしれない。運が良ければ、接触ができ、何かしらの情報を貰えるかもしれかいなからね! というわけで、おにーさん!!」


 シエルは隣の席にいた薄紫色を一つに結んだ男性に、声をかけた。


「おい、シエル。いきなりは……」


「俺の名前は、ルキア。ルキア・マエロンと申す。先に名を……」


 ルキア・マエロンと名乗った男性は、僕たちを鋭い目つきで見つめた。


「あたしはシエル。こっちが……」


「僕は、クロイ」


「クロイか……いい名だな」


「あ、ありがとうございます」


 ルキア、さんは、少しだけ雰囲気を緩めたのを感じた。


「それで、この幼女の話を聞いていたが」


「幼女って言うな!!」


「……すまない。お前たちの話を聞いていたが、詳しく話を聞かせてほしい。俺も、色々と事情がある身でな。話を聞かせてくれたお礼には、それに見合った俺の事情を話そう。約束する」


 僕たちはルキアさんに、今までのことを話したのであった。

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