三日後。
グローリア帝国に辿り着くことが出来た僕とシエルは、早速門番に捕まり、ボディチェックと神を信じているのかと尋ねられた後、嘘発見器代わりの水晶玉に、手をかざしたシエルと僕だったが……。
「よし! 通っても良いぞ!!」
水晶玉は黄色く光ったことにより、無事グローリア帝国の中へと入ることに成功した。
「あーあ。めんどくさいね!!」
「シエル、これは決まりだ」
「あたしに説教でもする気かい?」
「そうじゃない。ルールは従うものだと言っているだけだ」
当たり前のことをシエルに言うと、シエルは深いため息つきながら、僕の右手を握った。
「ルールがあったとしても、それに従う理由なんてあるのかい? どうせ、従ったとしても、濡れ衣を着せられて処罰されるだけのことさ」
「濡れ衣を着せられる前に、証拠を見せればいいじゃないか?」
「相手側が賄賂を貢げば、こっちの意見なんて聞こうともしない。人間は本当に愚かなものだよ」
(子供らしい言動ではないな……。一体、何があったんだ?)
「あたしの過去を漁ろうとしない方が、身の安全だとも。でもまぁ、そのうち分かるよ。
「シエル……」
「さーて! どこを見て回ろうか! 今日はまったりゆっくりして、明日から魔王の情報を集めないかい? 意外と長旅だったし、君も、ユーベルでの出来事の疲れが残っているだろう? 肉体的にも、精神的にもね」
シエルの言う通り、ユーベルでの出来事は、苦痛でしかなかった。あんなことがあれば、誰だって精神的に来る。
(ここは、シエルの言う通りにするか)
「シエルの意見を尊重する。今日はゆっくりしよう」
僕がそう言うと、シエルは子供らしく目を輝かせた。
「本当かい!? なら、宿をとってから、美味しいものを食べに行こう!! 勿論、君のおごりで!!」
「それが目的だったのか……。まぁ、良いか」
まんまとシエルの策略にハマった僕は、先に宿を探すことにした。
街の中は、人が多く、あの貴族らを入れたエレドリヌと、ユーベルの人口を合わせても、グローリア帝国の方が、圧倒的に人口数が多い。
(シエルと、はぐれないようにしないとな)
はぐれないようにシエルの手を強く握り、街の中を歩いていると、近くにあった年季の入った宿屋を見つけた。
「ここでも良いか?」
「クロイが良いのであれば、あたしはどこでも良いさ」
シエルの許可も下りたところで、僕たちはその宿屋に足を踏み入れた。中は、静かな曲が流れていて、受付にはおじいさんが立ってた。
「いらっしゃいませ。お客さんかね? 儂は、店主のバーナと申しますとも。
宿屋の店主・バーナさんが、優しそうな笑みで僕たちを迎え入れてくれた。
「僕は……
「ゆっくりしていってくださいな」
「感謝します」
僕は、今夜の分の料金を払い、二階に案内された。意外と部屋の中は、綺麗でベットもふかふかだった。
「ねぇ、クロイ。何故、君は
「クロイだと、勇者・クロイだとバレる可能性が高い。敢えて、ファミリーネームを名乗っただけのことだ。それが問題でもあるのか?」
事実をシエルに伝えると、またもや深いため息をつかれた。
「本当に君は、用心深いね~。〈勇者〉としてバレるのが、そんなにも嫌なのかい?」
「嫌というわけではないが……」
(あの日のことを、思い出してしまうからな)
「……トラウマか。それなら、いっそうのこと〈勇者〉なんてやめてしまえばいいんじゃないかな? そうすれば、君は
「〈勇者〉を辞める……か。考えたことなかったな」
どれだけ、自分が〈勇者〉としての役目を背負ってきたのか。一度も、〈勇者〉を辞めるという考えは浮かび上がってこなかった。
(血が。〈勇者〉の血が流れていることは変わらない)
「たとえ、血が流れていても、
「シ、エル?」
シエルは、突然僕に飛び乗ってきた。僕の首に腕を回し、耳元でさらに囁く。
「それとも、あたしと共に来るかい? 今ここで、あたしの正体を教えてから、選択肢を与えてもいいね。
───ねぇ、クロイ。君は、どの