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08.〈新たな都市へ〉

 次の日。


 僕とシエルは、エレインに見送られながら、ユーベルを去った。ユーベルの方々には、昨日のうちに挨拶をして回り、迷惑のかからない早朝に、姿を消した。


(今のうちに姿を消さないと、残って欲しいとせがまれるからな)


「クロイも、大胆だねぇ~。付いてこないか~って」


 隣で歩いているシエルは、子供には似合わない笑みで、僕をからかっていた。


「聖魔法の使い手で、精霊使いでもあるんだ。この先、必要だと思わないか?」


「ふ~ん。やっぱり、君は〈勇者〉としてではなく、〈魔王〉になる才能があるみたいだね」


「いや、今どこでそう思った? 意味が分からない」


 僕はため息をつきながら、そう言うとシエルは、自分の人差し指を口に当てた。


「内緒!」


(意外と腹立つな)


「今、腹立つって思ったでしょ~! 心の声駄々洩れだからね! 残念だったわね」


「ハイハイ。ところで、シエル。今度はどこに行くつもりだ?」


「今度の目的地は、次の日。


 僕とシエルは、エレインに見送られながら、ユーベルを去った。ユーベルの方々には、昨日のうちに挨拶をして回り、迷惑のかからない早朝に、姿を消した。


(今のうちに姿を消さないと、残って欲しいとせがまれるからな)


「クロイも、大胆だねぇ~。付いてこないか~って」


 隣で歩いているシエルは、子供には似合わない笑みで、僕をからかっていた。


「聖魔法の使い手で、精霊使いでもあるんだ。この先、だと思わないか?」


「ふ~ん。やっぱり、君は〈勇者〉としてではなく、〈魔王〉になる才能があるみたいだね」


「いや、今どこでそう思った? 意味が分からない」


 僕はため息をつきながら、そう言うとシエルは、自分の人差し指を口に当てた。


「内緒!」


(意外と腹立つな)


「今、腹立つって思ったでしょ~! 心の声駄々洩れだからね! 残念だったわね」


「ハイハイ。ところで、シエル。今度はどこに行くつもりだ?」


「今度の目的地は、〈グローリア帝国〉さ!」


───〈グローリア帝国〉。神を信仰する帝国。罪を犯したら、即処刑。免罪であったとしても、即処刑。街の中に入るのも一苦労で、神を信じる者しか入れない。そのため、中に入るには神を信じること。


 そして、神が与えた水晶玉に触れ、本当に神を信じているのか確かめ、ボディチェックを受けた後、〈グローリア帝国〉の中へ入ることを許される。


「シエルは、神を信じているのか?」


 僕は、何となく疑問に思ったことを口に出すと、シエルは鼻で笑った。


「フン。私は信じない。


「それじゃあ、中には入れないだろう?」


「水晶玉は、作り物だよ。グローリア帝国の王・ルモンドが作った物さ。ルモンド王の魔力を注いだ、水晶玉を使っているだけのこと。噓発見器みたいな能力はない!」


「そ、そうなのか?」


 僕はシエルに聞くと、大きく頷かれた。


「ただ、魔力が歪んでる人や貧乏人相手を追い出しているだけの代物さ。気にする必要なんてない。危なくなったら、君の名前を挙げれば、きっとすんなりと入れてくれると思うけどね! では行こうか!!」


 シエルはそう言うと、僕の左手を引っ張りながら、〈グローリア帝国〉を目指して、歩いたのであった。

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