次の日。
僕とシエルは、エレインに見送られながら、ユーベルを去った。ユーベルの方々には、昨日のうちに挨拶をして回り、迷惑のかからない早朝に、姿を消した。
(今のうちに姿を消さないと、残って欲しいとせがまれるからな)
「クロイも、大胆だねぇ~。付いてこないか~って」
隣で歩いているシエルは、子供には似合わない笑みで、僕をからかっていた。
「聖魔法の使い手で、精霊使いでもあるんだ。この先、必要だと思わないか?」
「ふ~ん。やっぱり、君は〈勇者〉としてではなく、〈魔王〉になる才能があるみたいだね」
「いや、今どこでそう思った? 意味が分からない」
僕はため息をつきながら、そう言うとシエルは、自分の人差し指を口に当てた。
「内緒!」
(意外と腹立つな)
「今、腹立つって思ったでしょ~! 心の声駄々洩れだからね! 残念だったわね」
「ハイハイ。ところで、シエル。今度はどこに行くつもりだ?」
「今度の目的地は、次の日。
僕とシエルは、エレインに見送られながら、ユーベルを去った。ユーベルの方々には、昨日のうちに挨拶をして回り、迷惑のかからない早朝に、姿を消した。
(今のうちに姿を消さないと、残って欲しいとせがまれるからな)
「クロイも、大胆だねぇ~。付いてこないか~って」
隣で歩いているシエルは、子供には似合わない笑みで、僕をからかっていた。
「聖魔法の使い手で、精霊使いでもあるんだ。この先、
「ふ~ん。やっぱり、君は〈勇者〉としてではなく、〈魔王〉になる才能があるみたいだね」
「いや、今どこでそう思った? 意味が分からない」
僕はため息をつきながら、そう言うとシエルは、自分の人差し指を口に当てた。
「内緒!」
(意外と腹立つな)
「今、腹立つって思ったでしょ~! 心の声駄々洩れだからね! 残念だったわね」
「ハイハイ。ところで、シエル。今度はどこに行くつもりだ?」
「今度の目的地は、〈グローリア帝国〉さ!」
───〈グローリア帝国〉。神を信仰する帝国。罪を犯したら、即処刑。免罪であったとしても、即処刑。街の中に入るのも一苦労で、神を信じる者しか入れない。そのため、中に入るには神を信じること。
そして、神が与えた水晶玉に触れ、本当に神を信じているのか確かめ、ボディチェックを受けた後、〈グローリア帝国〉の中へ入ることを許される。
「シエルは、神を信じているのか?」
僕は、何となく疑問に思ったことを口に出すと、シエルは鼻で笑った。
「フン。私は信じない。
「それじゃあ、中には入れないだろう?」
「水晶玉は、作り物だよ。グローリア帝国の王・ルモンドが作った物さ。ルモンド王の魔力を注いだ、水晶玉を使っているだけのこと。噓発見器みたいな能力はない!」
「そ、そうなのか?」
僕はシエルに聞くと、大きく頷かれた。
「ただ、魔力が歪んでる人や貧乏人相手を追い出しているだけの代物さ。気にする必要なんてない。危なくなったら、君の名前を挙げれば、きっとすんなりと入れてくれると思うけどね! では行こうか!!」
シエルはそう言うと、僕の左手を引っ張りながら、〈グローリア帝国〉を目指して、歩いたのであった。