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06.〈謎の関係者〉

 エレインが、エレドリヌの貴族らを消滅させた後、被害に遭われた女性らを地下から逃がし、ユーベルの町へ連れて行くことに成功した。


 そして、町に戻ると女性らは、家族たちと長い年月の再会を喜び涙した。長老たちが僕たちに涙を流しながら、お礼を言ってきた。


「ありがとうございます。ありがとうございます!!」


「僕は、何もしていません。エレインが、〈守り人〉としての役目を実行しただけのことです」


「勇者様。守り人様。お嬢さん。本当にありがとう。これで、わしらは、平和に過ごせますぞ」


 長老は、僕の横にいたシエルに笑いかけると、シエルはすぐに、そっぽを向いてしまった。


(子供らしい一面もあるんだな)


 そんなことを思っていると、心の声が聞こえるシエルは、顔を赤くしながら、僕の膝をポコポコと叩いてきた。


「うるさいわね! 子供じゃないわ!! あたしは〈迷い子〉のシエル! 君を真実に導く、ただの少女なのだよ!」


「少女じゃなくて、幼女なのでは?」


「あーだと言えば、こーだって言い訳するわね君は!! もう知らないんだからねっ!」


 シエルはそう言うと、またもやそっぽを向いてしまった。僕は素直に謝ると、今度は裾を引っ張られ、長老やエレインたちが離れた位置まで移動した。


「ねぇ。君は気づいたかい? エレインという銀髪のエルフが、何故〈守り人〉としての役目を与えられずにいたのか。そして、あの貴族たちの正体を」


「まぁ。エレインは、おそらく。彼女は最初、僕たちに『お母様が亡くなった』と言っていたが、幼い頃にエレドリヌから逃がされたとき、母親を『目の前で亡くした』と記憶操作され、エレドリヌを離れたということになっている。そのせいで、本来の記憶がないエレインを、〈守り人〉としての役目を果たせないと思った大樹の木が、わざと与えなかった」


「クロイが、真相に辿り着いたときに、本来の記憶を取り戻したというわけだ。そして、貴族達の正体は、肉体は本人で、中身も本人。だが、人間は五百年の月日を生きれるわけもない。ということは?」


 シエルは、わざと僕に答えさせようと、質問を投げかけてきた。僕はその質問に、静かに答えた。


「魔物の類。或いは……悪魔の類と契約を結んだ。じゃなければ、こう長くは生きられるわけがない。五百年前の記憶さえもあるということなら」


「これは予想以上に、面白くなってきたね。クロイ?」


「面白いも何もない。そうとなれば、この旅は長くなりそうだ」


 何かを知っているシエルと、目線が交わった。


 どうやら、この長旅には、魔王以外にも関係者がいるのだと、知りたくもないことを知ってしまったのであった。

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