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第27話 純愛狂信者と五月と

 二俣は、浪人、停学、留年を経験した誇り高き純愛主義者だ。取り巻きの寝取り魔田中と共に、NTRされては純愛を執行している。


 徹底して前向きで、常にたった今目覚めたばかりの様にハキハキしている。


「んで。俺は正式に五月と付き合うことになったんだ!」


 とまあ、つらつらと奴のスペックを並べ立てたが、コイツも大概変な奴である。本人は至って普通と思っているらしいが。


 現在俺たちは、親友の二俣に五月とカップルになったという報告をしていた。


 二俣はフーンと言った感じで腕組みしながら、そして諭すように喋り始めた。


「そうか。今度は長続きさせろよ? 純愛マスターの僕を落胆させるなよ?」


「純愛マスターってなんだ? まあいいや二俣。折り入って相談なんだけど、あの二人なんとかしてくれないか?」


 カップルクラッシャー鈴木と寝取り魔田中。これから立ちはだかってくるであろう奴らに先手を打っておきたい。


 そんな計画が漏れないように今回、二俣をとある場所へ呼び出した。


「二俣さん粗茶ですが」


「うむ、苦しゅうない」


 そう、五月の自宅に。



        ◇



「あなたが一樹くんの親友ですね。そして前日、映画館をロケットランチャーで破壊して回っていた」


「うむ、純愛のためだったからな!」エッヘン


 誇るようなことじゃあないからな二俣。


「純愛……いい響きです!」


「だろっ!」


 あれ、いつのまにか五月に俺の友人関係。外堀埋められてきてね?


「話は戻すけど、あの二人なんとかしてくれないか!?」


「無理だな」


「悩むそぶりすらなく即答しやがった」


 二俣はテーブルに肘を突きながら語り始める。


「鈴木はカップルを殲滅する事に、田中はNTRを生きがいにしてるから止めるのは無理だと僕は思ってる」


『ただ』と言いながら中指を一本上げてこうも言った。


「お嬢ちゃんと付き合ってるという事実。それが二人の耳に入らなければ大丈夫だとは思うがね」


 アイツらとはサークル関係でほぼ毎日会ってるのに中々難しい事を言う二俣。


「なるほどねぇ。つまり今まで通りってことか」


「今まで通りではないぞ。純愛主義者である僕もついてる」


「そっか。そうだなぁ。それはデカいかもしれない」


 二俣は純愛のためなら命捨てれると豪語するような奴だ。ソイツが味方となれば頼りになる。


「そんじゃ、遠慮なく頼らせてもらうぜ親友!」


「おう!」


「よく分かりませんが、これが男の友情ってやつなんですねぇ……?」

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