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第25話 お化け屋敷と奴らと

 俺は野暮用で五月とお化け屋敷に入っていた。


 次々と迫ってくるツギハギ男や、赤い血を流した露出狂、布を被った人やら幽霊を発勁で撃退しつつ、前へ進む。


「アバババババババ……」


 五月はお化けが大の苦手らしい。さっきから電動歯ブラシの様に身体が震えていて、その上で俺にくっついてきている。


 可愛げがあって推せる~。好きぃぃぃ!


 早よ告白して付き合いたいぃぃ!


 内心で叫んだが、その言葉達は虚空をこだました。


「お化け屋敷でターゲットを発見。速やかに排除するぞ」


 そうこうしてるうちにまた新たな手勢が来た様だ。


 手勢と言っても三人というか、先頭に立っていたのはピーマンだった。やけにバカでかいピーマンだった。


 脇に立っていたのはエビピラプとホルモンだった。するとホルモンがメガホンを片手に演説を始めだした。


「野菜を殺すなー!」


「「野菜を殺すなー!」」


「……なに?」


 ホルモンの掛け声に呼応して、ピーマンとエピピラフが声を出す。


「植物だって生きている!」


「「植物だって生きている!」」


 ホルモンがそれ言うんかい!


「木にだって人権はある~!」


「「木にだって人権はある~!」」


 えっ……なにこれ?


「植物はおいどんらの味方。動物だけが植物を搾取している! 植物だって生きたいんだ! 栄養は動物性から取れ! 植物を巻き込むなぁ!」


「そうだそうだー!」


「ピーマンを食べろー!」


 目の前でデモが始まった。ていうかそれ、ピーマンじゃなくてホルモンが最初に言うんだ。相場は当事者であるピーマンが訴えるもんかと。



         ◇



「申し遅れたな。バイトが終わって五月親衛隊に戻ってきた。俺はピーマン相撲の使い手。ピーマンだ」


 切り替え早。あとエピピラフとホルモンどっかいった。どこいった?


「俺は同人誌売りの一樹だ」


「えっ? なんですか? 自己紹介する流れなのですか? それじゃ、私はBL本を買いに来た五月です?」



         ◇



「さあ来い小坂! 格の違いを見せつけられてやろう!」


「諦めんな」


「ピーマン相撲不知火型!」


 不知火型。腕を左右に大きく開くことが特徴。攻撃的で豪快な型だ。横綱の土俵入りに採用されてるほど有名な形である。


「あ、あの……! いきなりなんなんですかあなたは! 不敬ですよ!」


 臨戦体制を取っていたら五月が急に横から割って入ってきた。


「まずピーマンは、私達に何の御用がありますか!?」


「魚肉ソーセージ三本で小坂一樹を暗殺するために来た」


「次にあなたは!」


 おいちょっとまて! あっさりとスルーしたけど、俺の命魚肉ソーセージ三本分なんか!?


 ていうかツッコミ入れろよ五月。さっきからおかしいところしかないだろ!


 ああもう。次は自分の番らしい。よく分からないが、ついさっきまでやっていた事を言おう。


「ああ、お化け屋敷の中で同人誌売っていた」


「そうですね。私はそれを買うために来ました。ほら、ここで争う必要ありませんよね?」


 いやあ、ピーマンが俺の命狙ってるんだから争う必要あるだろ何言ってんだ。と言いたかったが、五月の剣幕に気圧されて言い出せなかった。


「あっ、はい。お騒がせしてすみませんでした……」


 ピーマンも同じだったようで、ズコズコとお化け屋敷から撤退していった。


 ていうか五月が言葉だけで襲撃者を追い払っちゃった。凄すぎるだろ。



         ◇




「やあピーマン。久しいわね」


「ゲッ、マリオ重国」


「過激派から穏健派に寝返る気はないかしら? 粗挽きソーセージ五本でどうで候?」


「乗った!」


「随分と決断が早いのね」


「俺は魚肉ソーセージ三本でアイツと契約した。そのソーセージはもう貰っている。なら次はお前らの番だ。両方から毟り取るのが常識だろ」


◇ピーマン。過激派から穏健派に寝返る。



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