「てなわけで、俺がボイチェンマイクで六花の代わりに喋る。付き合いたいなら俺のセリフに合わせてあたかも話してる体を装え」
「分かったよお兄ちゃん☆」
現在俺は、インターコミュニケーションシステム、通称『インカム』で妹と連絡を取っている。作戦成功のために。
ていうか田中が貸してくれたボイチェンマイク。一体何に使うつもりだっだのだろう。どうせ碌でもない事なのは間違い無いが。
「んなぁ。田中さんの妙案。ボイチェン作戦は本当に大丈夫なのですか~? バレない?」
「大丈夫っすよ! こう見えて一樹は最近までキャバクラ通いのド変態っすから!」
この説明じゃあどこも大丈夫な要素ないだろ。とは思いつつ、任されたからにはやらなければ。
「まあ、二俣はこう見えてバカを具現化したバカだから大丈夫だ。それにコナンがバレないんだしコレもバレんだろ」
「一樹。もうマイクに声入ってるっす」
おっと、いかんいかん。二俣が目の前に居たら事故っていた所だ。
ああ、そうこうしてるうちに二俣が六花に駆け寄ってきた。
「おう! 便所長かったな!」
そういえば、『トイレに行ってくる』という言い訳で六花と二俣は一旦別れてたんだっけな。ここは話合わせよう。
「そうなのよオホホホホ。大便が出ちゃって。バナナだったわよオホホホホ」
六花が俺に向かって鋭い眼光を向けてきた。うーむ、難しい。コナンって凄かったんだなぁ。
「こう見えて下品な大便女だったんだな。意外だ」
「大便女なのよオホホホホ。出すもの出したし、昼ごはん食べたいわオホホホホ。回転寿司でも行きたいわオホホホホ」
「草。回転寿司かよ。貧乏人が行くところじゃんwww」
はっ、うざ。回転寿司をバカにするなよ。
「アヒャヒャヒャヒャ! 一樹も回転寿司によく行ってんだろwww妹のお前もそうなんだろうな! はあツボに入った。傑作だ!」
「二俣てめえ! 大概にしやがれ! ぶち殺す。ぶち殺してやる~!」
妹と回転寿司の罵倒を聞いて俺はついにブチ切れた。
もうたまらん。二人の前に飛び出そうとしたが、それを察知されてたのか田中と五十嵐に妨害された。
「今は、今はまだ出るところではないっす! 一樹を抑えるっす! でなきゃ、パチンコ店周辺が血祭りになる!」
「わ、分かった! んなぁ。てか、二人がかりでなんとかってとんだ馬鹿力だわさ!?」
「はなせ! ぶっ殺してやるっ!」
◇一人称役の小坂一樹がご乱心状態なので、ここからはナレーションが現状を説明します。
◇小坂一樹の暴言がそのまま小坂六花の声に変換されて二俣の耳に届いていた。激しく困惑する二俣。脳内『?マーク』の六花。
近づけないなら投擲だ。
俺は通りすがりのバナナをガシッと掴み、二俣目掛けてぶん投げた。
◇呆気に取られる五十嵐&田中。二人は小坂一樹が放つバナナを止めることができなかった。
バナナは二俣の頭上で三回転しながら見事に地面へ着地した。そのままスタスタとどっかへ走り去っていった。
「10点」
「10点」
「20点満点だやったー! じゃねえんだよなんだこれ」
「一樹が始めた物語っす」
「まだだ。次の投擲は……」
血眼にして探しているとちょうどいいぐらいのブロッコリーが歩いてきていた。
「僕、ブロッコリー。今日はいい天気」
「次、お前」
「僕、ブロッコリー。えっ?」
はいはいドッコイショォォ!
◇
「なぁ五十嵐。コイツ一回絞めよう」
「賛成~! メイもアイツ、ボコボコにしばき回して市中引き回しにしよう!」
「妹を大便女呼ばわりする男は打首獄門じゃあ!」
俺は激怒した。必ず、邪智暴虐な二俣を締め上げなければならぬと決意した。
「田中も手伝ってくれ。お得意の寝取りで妹をあのクソ野郎から引き剥がすんだ」
「だから他人に強制される寝取りは嫌っす!」
「しのごの言ってないで寝とれ!」
一瞬、目を離してる隙にあの二人は姿を消していた。その後の顛末を俺たちは知らない。