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幕間

 あの後、茉莉は無事藤正の刀を家に持ち帰った。スバルが腕の良い研磨師など紹介してくれたらしいが、刀身全体の傷みはひどく、結局刀としての値打ちは下がった。

 それでも彼女は捨てずに、今でも家宝として扱っているらしい。

 また中村は連続殺人犯として逮捕され、今は極刑を待つのみの身らしいが――最後に茉莉と彼の本当の雇用主である彼女の父が面会に行くと――涙を流したそうだ。その涙が後悔か懺悔か、自分への哀れみかは分からないが。

「ねえねえ、御主人。結局、あの藤正の刀って妖刀だったんですか?」

 作業机で茶器の鑑定をしていると、ふいに今月の領収書を見ていた星乃が顔を上げた。

「さあな。妖刀だから人を狂わせるのか、狂った奴が持つから妖刀なのかは分からん。だが……価値を上げるも下げるも、あいつら次第だ。人も物も、時間をかけてじっくりとその価値は上がる。開始価格と全く同じなどあり得ん。それを高額にするのも、最低価格に下げるのも……その時を生きる連中次第だ」

「むぅ、御主人が言っている事、難しいです。でも……」

 ふいに星乃がわなみのすぐ隣まで来ていた。そして、顔を近付け――

「今の私、最高価格でしょ?」

 花が咲くような笑顔があった。その素直さはたまに眩しく思う。

 確かに、今の星乃は出会った時よりも――

「まだまだだ。お前の鑑定結果は出ん。だから……お前の人生をもって、お前の価値を示せ」

 絶対に言葉に出してやらんが。

「もう御主人は! 愛蔵品コレクションに注ぐ愛の一欠片でも、星乃ちゃんにくださいよ!」

 と、その時――錆びかけた鈴が大きく揺れた。


「あの、ここって『鎬木鑑定屋』さんですよね!?」


 大慌てで扉を開けた年若い娘が握り締める色鮮やかな紙には見覚えがある。

 となると、この後の展開も予想が出来る。

「いかにも。『鎬木鑑定屋』が二代目主人、鎬木天虚……」



「さあ、お前の価値を示せ」




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