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エピローグ

 眼下に広がるのは真っ青な海と純白の砂浜だ。そこから茶色く海に突き出ているのは水上バンガローだった。

「うわぁ……」

 近付いて来るリゾート地の美しさに目を奪われ、窓辺から離れられない。

「本当に……来たんだ……」

「なんだ、疑っていたのか?」

「いや、だって、まさか、こんなにすぐ……」

 光葉は期待と喜びで輝く目を隆司に向けた。

「CEO復帰の祝賀会が終わったら何もしないオフを取るって言ったじゃないか」

 すでにスーツを脱いでTシャツ姿になっている隆司が肩をすくめた。

「確かに言ったけど……」

「準備が良すぎて驚いた?」

「うん……」

 光葉はまだ祝賀会に参加した時のスーツ姿だ。祝賀会が終わるや否や、隆司に連れられてプライベートジェットに乗ったので、着替えもなにも持っていない状況だった。

「嬉しいんだけど、でも、僕……まだ一年目で有休は……」

 研修を終えて秘書課に配属となり、代表代行秘書として働いている。

 半年働けば有給休暇が付与されるが、日数はそんなにないはずだ。

「あぁ、休みのことか」

 隆司が笑った。そして、口角の端を吊り上げたまま頷く。

「神統商事にはボーナス以外にも『ご褒美』制度がある」

「ご褒美制度?」

「あぁ。今回のは親父……いや、CEO直々に承認した『リフレッシュ休暇』だ」

「ほ、本当に?」

 思わず声が上擦ってしまう。破顔する光葉に向かって隆司は明るい声で続けた。

「正真正銘、電話も書類もない完全なオフだ」

 機体が高度を下げていくのを感じながら、光葉は大きく頷いた。

 プライベートジェットは一島一リゾートという南国の孤島に降りた。

 滑走路の脇は純白の砂浜だ。

 ステップを駆け下りると潮風と波の音が出迎えてくれた。

「すっご~い!」

 経験したことがない完璧なオフだった。

 メガネを投げ、スーツから両腕を抜いた。スラックスを落とし、靴下も片方ずつ裏返しのまま脱ぎ捨てて、あらゆる束縛から解放された身を海へ投げた。

 ザバーンと心地良い音が響いた。

「あぁぁ! 最っ高!」

 頭の先からつま先までがオフに染まる。言葉にならない快感が全身を駆け巡って、大声を出したくなった。

「光葉!」

 遅れてタラップを降りた隆司が叫んだ。

 慌てる隆司をよそに、陽が降り注ぐ砂地の海底まで潜った。珊瑚礁を愛でてから熱帯魚と共に泳ぎ、ザバリと水面に顔を出す。重力からも解き放たれた自由を満喫し、燦々と降り注ぐ陽光の下で大自然に溶け込んだ。

「……」

 サングラスをかけた南国スタイルの隆司はタラップを半分ほど降りたところで足を止めていた。しばらく光葉のことを見詰めていたが、早足で歩きだすと、水上バンガローに続く道の途中で悪戯を思いついた子どものような笑みを浮かべた。

「よし!」

 隆司がサングラスを放り投げた。Tシャツを脱ぎ、ベルトも外して美しい筋肉に覆われた体躯を露わにする。

「俺も行くぞ!」

 嬉しそうに叫んだ隆司が光葉に続いた。

 大きな水柱が立ち、キラキラと陽の光を跳ね返すしぶきが光葉にかかる。

「アハハハハ! 気持ちいいでしょ?」

「ヤバイな! これ、クセになるぞ」

 満面の笑みで言う隆司に「ね!」と笑って見せてから、光葉はバンガローへ向かって泳ぎ始めた。

 途中でウミガメと遭遇し、並んで泳ぐという貴重な時間を堪能した。澄ました顔で悠々と沖へ泳いでいく姿を見送ってから、バンガローのテラスに上がる。

「すっごくおしゃれだね」

「あぁ。ハネムーンにお勧めらしい」

「へ?」

 急に状況を意識してしまい、慌てて隆司から視線を外した。

 広いテラスには花が浮かべられた湯船と、二人で星空を眺められるソファが据えられていた。奥には天蓋付きの大きなベッドが置かれた部屋と、エスニックな雰囲気に満ちた部屋が複数見える。見れば見るほど、大人の雰囲気に満ちたプライベート空間だ。

「うん。おしゃれ……」

 二人っきりでドラマティックな空気に包まれると、どうなるのか……。純真無垢な子どもでもない。当然、深い関係へ発展していくだろう。

(い、今から……、二人で……)

 この先を勝手に想像してしまい、胸まで真っ赤になってしまった。

 熱い。

 もう一度、海に飛び込もうかと思うくらいだ。

「気に入った?」

「そ、そうだね……。で、電話も鳴らないし、書類とかもない、し……」

 しどろもどろに答えていると、背後からギュッと抱き締められた。濡れた体が密着し、速くなっている隆司の鼓動がダイレクトに伝わってくる。

「あ……、あの、隆司?」

「食事にする? それとも違う方を満たす?」

「ち、違う方って?」

「ずっと我慢してた方……」

 背中に硬いものを押し当てられた。熱く猛々しい感覚に思わずゴクッと喉を鳴らしてしまう。

「そ、それは……その……あの……」

「怖い?」

「こ、怖くはない、けど……」

「けど?」

「……そ、それは……」

 これまで一度も望まなかったというと嘘になる。だが、いざ、そういう場面に直面すると、どんな風に気持ちを表現していいのか分からない。

「俺は光葉を抱きたい」

 ストレート過ぎる言葉が耳に刺さり、脳内で何度もこだまする。

「こうやって抱き締めて、頬とか首とかにキスして、桜色の胸を弄りながら……」

 囁きがそのまま現実になっていく。胸の尖りを二本の指で挟まれると、頭の中が一瞬で真っ白になった。

「ぁぁっ!」

「可愛い……、胸、もう、こんなに硬く尖ってる」

「そんな……!」

「分かる? 二本の指の間で震えてる」

「わざわざ言わないくていい!」と言い返したかったが、余裕がなかった。舌先で耳朶を舐められ甘く歯を立てられると、全身が痺れて立っていられなかった。

「ベッドへ行こうか」

「ん……」

 抱き上げられ、テラスの真ん中にあったソファベッドに下ろされた。すぐに続きが始まる。

「あの、りゅうじ、……ここ外……」

「俺達以外、誰も居ないから大丈夫」

「……」

「解放感が堪らないだろ?」

 青い空の下、波の音を聞きながら愛欲を満たすなんて未経験だ。

 あまりの恥ずかしさに両手で顔を隠したものの、小さく頷いて同意した。

 唇が重なった。最初は優しく唇を啄み合っていたが、段々と物足りなって舌を絡ませ始めた。チュプッという濡れた音が何度も聞こえる。

「ん……ふっ……」

 深く舌を絡め合う情熱的な口付けが長く続く。こんなに欲に従順になれるのは、きっと南国の開放的な空間のせいだ。

「りゅ、じ……」

 やっと離れた唇を震わせて名前を呼んだ。

「あぁ」と短く答えた隆司の唇と自分の唇が唾液の糸で繋がっている。物凄く扇情的で、情欲が煽られてしまう。

 濡れた隆司の唇は間を置かずに顎から首筋、鎖骨へと滑って行った。

 次に舌が向かう先がどこか――。

 妖しい期待に胸を躍らせ、逞しい肩を強く掴んだ。

「ひゃっ……」

 胸の尖りをねっとりと舐められ、舌先で繰り返し潰される刺激に酔う。すぐに尖る蕾にやんわりと歯を押し当てられると、背中が弓なりに反って「もっと」とねだるような姿勢になってしまう。

「胸舐められるの、好き?」

 淫らな質問に戸惑いながらも、光葉は小さく頷いた。

「ん……、もっと……して」

「あぁ。光葉が望むなら、いくらでも」

 隆司が優しく笑んでくれた。だが、そこに悪戯心が交ざっていたことに気付けず、突然訪れた期待以上の愉悦に細腰を跳ねさせるはめになった。

「ひゃぁぁっ!」

 胸の尖りを吸われ、反対側も爪でやんわりと潰されながら下腹部を扱かれる。誰にも触れられたことのない場所を同時に許す快感に甘い声が止まらなかった。

「そこっ! ぁぁぁっ! そんな、急にっ!」

「上と下、一緒にするの、気持ちいい?」

「いっ、いいっ!」

「舐められるのは?」

「す、きっ!」

「胸舐めてると、どんどんコッチが濡れてくるの、分かるか?」

「そ、それは……」

 乳首を舐められる快感が体の奥へ染み渡り、隆司の手の中で育つ楔へ向かって流れていく。止めどなく濡れ続ける楔の淫らさに自分でも驚きながら、大きく膝を開いて何度も頷いた。

「分かる……、気持ち良すぎて……おかしくなりそ……」

 感じたことがない量の快楽の波が押し寄せてくる。ちょっと待って、と言いたいのだが、唇は異なる本音を紡いでいた。

「も、もっとして、欲しい……」


 もっと強く速く擦って――。


 淫らな思いを抑えられなくて、揺れる腰を止められない。熱い吐息を零しながら、隆司の手に楔を擦り付ける仕草を繰り返した。

「ここ、擦られるのがいいんだな」

「ぁぁっ! りゅ、じっ! そこ、そっこぉぉぉぉ」

 恥ずかしさよりも、あまりに気持ち良すぎて一心不乱に刺激を求めてしまう。

 体の奥から湧き上がってくる濃密な快感はくせになりそうだ。一切の思考力を奪い取っていく官能的なうねりに、光葉は身を委ねた。

「アァァァァッ!」

 あっという間だった。

 自分でも感じたことのないほど圧倒的な悦楽の極みは真っ白な世界だった。全てから解放され、純粋な快感だけに包まれる時間に、声もなく浸り続ける。


 服を脱いでベッドに倒れ込むのとは桁違いの快感――。


 初めて隆司に与えられた淫らなオフに、光葉は恍惚とした表情を浮かべた。

「大丈夫か?」

 快楽の余韻に浸り、細い肢体をビクビクと震わせていた光葉は顔を覗き込んできた隆司をぼんやりと見返した。

「なん、か……ふわふわする……」

「そのまま楽にしていろ」

「ん……」

 言われるがまま、なにもせずに空を見上げた。

 陽が傾き始めていて、もう少しすれば素晴らしいサンセットが見られそうだ。数時間後には満点の星空が広がるに違いない。それまでずっとこうしていられる幸せに頬が緩む。

「素敵……」

 堪らない、と呟いた所で下肢が跳ねた。

「ハッ、ァァァッ!」

 開いた股の間に隆司の指が滑り込んでいた。硬く閉じた窄まりにヌルリと入り込み、浅い場所をユルユルと出入りしている。

「な、にっ……! なん、かっ、ヌルヌルしてるっ」

 無骨な指は、光葉の内側で何かを探しているようだった。内臓を圧迫される感覚は気持ちが良いというより違和感の方が強い。思わず息を詰めてしまった。

「痛い?」

「痛くはない、けど……」

「変な感じ?」

「ん……」

「じゃぁ……、こうしよう」

 隆司に促された通りに動いたものの、思ってもみない姿勢に息を飲んでしまった。いくつものクッションを抱きかかえて隆司に向かって尻を突き出す四つん這いの姿勢を取らされたのだ。

「ちょっと! 隆司、これって!」

 犬や猫が交尾する体勢だ。さすがに恥ずかしくて抗議の声を上げる。

「すぐ良くなるから待っていろ」

「え? ヒャァァッ!」

 トロリとしたものが双丘の間に垂らされた。とろみのあるローションが秘所の周囲にたっぷりと塗り込められ、隆司の指がヌルリと肉輪を割って内側へ入り込んで来る。

 さっきよりも違和感が強い。指が二本に増えていた。

「……んっ、んんんっ」

 内側に入り込んだ指がそれぞれ違う方向に蠢き、襞を不規則なタイミングで撫でてくる。

 ヌプヌプという音が続く。

 最初はただ指が出入りしているだけだと思った。

 しかしいつの間にか、腹の奥が疼きだしてしまった。なんとも言えないもどかしさが徐々に強くなってきて、思わずクッションに顔をうずめた。

「三本にするぞ」

 また、トプトプとローションが垂らされた。すっかり滑りがよくなったところへ、ヌルッと指が入り込んでくる。

「ぁんんっ!」

 根元まで入り込んだ指が深い場所で踊った。まるで何かを探すかのような動きだ。やがて、無骨な指がキュッと奥を押した。その瞬間、下肢全体に快楽の波が走った。

「ハゥゥゥゥゥ!」

 声が漏れた。慌てて口を押さえたが、隆司が聞き逃すはずもない。

「見付けたぞ。……光葉のイイところ」

 言い終えるや否や、隆司の指に力が込められた。

「ゃぁぁぁっ、ぁっ! そ、こぉぉぉぉっ」

 ビクビクビクッと腹から足に向かって震えが走る。

 腹の奥を突かれる度にゾクゾクと全身の毛が逆立つような感覚と、頭の芯まで痺れる強烈な刺激に襲われる。雷にでも打たれたような強すぎる刺激なのに、もっと欲しくて自ら腰を打ち振るってしまう。

「……すごい、光葉……。前も後ろも濡れ濡れだ」

 秘所の奥壁をリズミカルに突く隆司が喉を鳴らすのが聞こえた。

 それもそのはず。

 さっき白濁を放ったばかりだというのに、光葉の楔は先端からトロトロと透明な蜜を垂らしているし、指を咥え込んだ秘所も涙を流すように濡れそぼっている。

 白い肌の上を垂れていくローションと交ざった愛液は実に扇情的で、隆司の欲をこれでもか、と煽っていた。

「ァァッ! だめぇっ……、りゅぅじっ、これ、むりっ!」

 つま先でシーツを蹴り、イヤイヤと首を左右に振りながら訴える。隆司の指に合わせて腹も足もビクビクと震え、体の奥から沸き起こる衝動を抑えられなくなっていく。

「分かった。じゃぁ、止めよう」

 指が抜き取られた。ヌプンという虚しい音と共に、快感が去って行く。

「……ぁ……」

 突然の喪失感に光葉は息を飲んだ。

「ぇ、あ……」


 止めないで――。


 淫らに叫ぶ自分が居た。

 もっともっと責められたい。奥を突き上げ、中をめちゃくちゃに掻き回されたい。そして、さらなる高みで二人一緒に弾けたい――。

 頭の中が「淫乱」の文字で埋め尽くされているようだった。

「……りゅぅ、じぃ……」

「なに?」

 恥ずかしかった。

 体の奥で荒れ狂う色欲に従えば、隆司は続きを与えてくれるだろう。だが、堪らなく恥ずかしくて、光葉はクッションをギュゥッと抱き締めた。

「なに? 光葉?」

 怖いくらい優しい声で尋ねられた。

「りゅ、じ……」

 腰が淫らに揺れるのを止められない。

 指を迎えて喜んでいた秘所は、再び満たしてくれる物を求めて震えていた。


 隆司が、欲しい――。


 耐えきれなくて光葉は唇を震わせた。

「もっと……、して」

 震える小声で言った。波の音に掻き消されそうな声だった。

 だが、求められるのを待っていたのか、隆司はすぐに応えてくれた。

「はぁぁぁぁっん!」

 視界が白んだ。隆司の指がまとめて入り込み、根元まで埋まったままズグズグと奥を突き上げてくる。

「ハッ、ァッ、ァゥゥゥゥゥゥ!」

 尻を突き出した姿勢で体を痙攣させながら、一気に絶頂へ駆け上がった。何も聞こえない世界で、果ての無い悦楽に悶え喘ぐ。

「ァッ、ァァァ――ッ!」

 これが天国なのだろうか。

 全身の感覚が一気に高みへ押し上げられ、そのまま弾けて静寂の中に放り出された。思考力も判断力もなにもかもを失い、悦楽だけに包まれる。そんな時間が長く続いた。

 どれくらい息を詰めていただろうか。やっと波の音に気付いた光葉はピクンピクンと全身を震わせながら、ソファに崩れ落ちた。

「い、……いま……」

「今のが中イキ。どう? 感想は?」

「す、すごすぎて……おかしくなりそ……」

「じゃぁ、今度は外と中、両方でイって、もっとおかしくなろうか」

「え?」

 どうするの? なんて愚問だった。

 隆司がソファに身を落とした。端正な顔が光葉の下腹部より下へ滑る。チュプンという音を立てて、たおやかな光葉の楔が隆司の口に埋没した。

「ハァァァァンッ!」

 甘すぎる声を止められなかった。

 仰向けの隆司の顔を四つん這いで跨ぎ、楔に愛撫を受けながら秘所を指で攻められる。

「ま、前と……、中ぁぁぁ!」

 楔を舌全体で舐められるだけでなく、先端を喉の奥で刺激されながら強く啜られる。唾液の塗れた音を聞きながら、秘所に埋められた指で腹の奥を執拗に押されると、まさに前後不覚。

「ァゥゥゥゥゥッ――!」

 ガクガクと震える膝で腰を前後に打ち振るい、隆司の口に楔を何度も打ち込みながら、肉輪の奥の腫れたような膨らみを複数の指で押される悦びに没頭した。

 秘所に与えられる快楽が腹の奥深くの欲を呼び覚まし、大きなうねりとなって湧き上がる。神経に沿って急速に広がったそれは、脳を焦がしてあらゆる刺激を快感と錯覚させ、光葉を情欲の獣に変貌さた。

「ダメェェェェ! そ、こっ! そんな、されたらっ!」

 強すぎる刺激を恐れ、腰を退こうとしたのに、隆司の腕が許してくれない。

 ジュブッとより深く楔を咥えられて、思わず喉が沿った。

「イ、イクッ! ァァァッ! ダ、メェェェェェッ!」

 傾いていく陽の光を浴びた飛沫がパタパタと落ちていく。

「空をバックに、仰け反ってイく光葉……、すっげぇ、かわいいし、絵になる」

 光葉が果てる直前、隆司は唇を離し、悦楽に悶える姿をソファから見上げていた。秘所を穿たれ、楔から欲を吹き出す淫らな姿をじっくりと鑑賞するなんて、いい趣味をしている。

「ぁっ、は、ぁぁぁ……」

 生まれたての子鹿のように、腕と足をプルプルと震わせていると、隆司が笑った。

「今度は、俺と一緒にイこう」

 拒否なんてできる訳がない。

 ソファに倒れ込み、仰向けになって両膝を立てた。

「足、もっと開いて見せて」

 意地悪く隆司が笑う。

 恥ずかしくて視線を外すものの、言われたとおりに大きく開いて見せた。

「すっげぇエロいけど……キレイでかわいいよ、光葉」

 低く魅惑的な声で言った隆司が膝立ちになり、グッと距離を縮めてきた。

 引き締まった体躯と、猛々しくそそり立つ剛杭が見えた。メガネをかけていなくても分かる逞しさに、ゴクッと喉を鳴らしてしまった。

(あの……隆司が……僕の、中に……)

 想像しただけでイきそうだった。

 脱力した細腰を掴まれた。

 濡れそぼった秘所と剛杭の距離がゼロになる。熱い猛りが窄まりに触れ、進む先を確かめるように数回そこを行き来した。指で解されて蕩けたそこは、迎え入れる瞬間を待ち望むように淡く開き、蜜を垂らす。

「いくぞ……」

 低い声が聞こえたのと同時、指とは比べものにならない質量の杭に穿たれた。

「ァァァァァッ!」

「ッ……、みつ、はっ……、ちょっと、力を抜いて……」

「ァァッ! ァンンンンンッ!」

「もう、少し……、もう少し、だ」

 膝裏を押され、ズンッと下から突き上げられる。力を込められる度に、剛杭が奥へ進んで来るのを感じながら、光葉は息を詰めた。

「あと……少し……ッ……、あぁぁぁぁ」

 雄の欲に染まりきった溜め息を隆司が吐いた。

「入った……」

 根元まで全部、と隆司が笑った。

 指などとは比べものになれない範囲まで支配される。普通では有り得ない距離まで近付いた状態で、隆司がユルリと腰を揺らした。

「ヒャゥゥゥッ!」

 ジュプッと淫らな音がしてお互いの熱肉がぶつかり合う。その律動が少しずつ力を持っていき、やがて、ソファがギシギシと軋むほどの激しさに変わった。

「アァッ! アッ! アァァァッ!」

「あぁ……、光葉……」

 逞しい隆司に抱き締められた。

「ァァァァッ! 、そ、こぉぉぉ! 擦れちゃうぅぅ!」

「光葉……すっげぇ、熱い」

「ヒャァァァァッ!」

「吸い付いて……、締め付けて……、最高に、気持ちいいぞ」

「ャァァァッ!」

 隆司が欲に溺れていく。

 下肢を支配する快楽に従う雄の顔になった隆司に細い腰を掴まれた。

 完全に隆司のタイミングで体を揺さぶられ、奥深くを穿たれる。

「ヒッ! ゥゥゥゥウッ!」

「あぁ……、光葉、可愛い」

「りゅ、じぃぃぃっ」

「愛している、光葉……。本当に、心から愛している」

「ハァッ、ァァァァッ!」

「もう、離したくない……離れたくない。このまま、ずっと二人で共に居たい」

 それが許されない立場を呪うかのように、隆司の攻めが激しくなる。

「イこう……光葉……」

 淫らな宣言に頷く間も無く、光葉は前後不覚に陥った。逃げることも叶わず、全くの未知の絶頂へ駆け上がっていく。

「ンァァァァァ――ッ!」

「ァァ……、光葉っ……」

「りゅ、っじぃぃぃっ――!」

「愛している、光葉ぁっ!」

 もう、何度目だろう。数える余裕もない光葉が絶頂の極みで感極まる。堪らない幸せに涙があふれた。

 共に激務をこなし、待ちに待ったオフを迎え、二人っきりで飾らない素の自分を曝け出す。ゼロの距離で絡み合い、恥ずかしいほど素直に情欲に没頭する。

 そして交わす愛の告白――。

 こんなオフ、初めてだった。

「りゅう、じ……」

 長く続いた絶頂から戻った光葉は、欲に染まった頬を緩ませながらゆっくりと頷いた。

「僕も……愛してる……」

 はっきりと答えながら、秘所から溢れる灼熱の迸りを感じた。隆司も興奮し、絶頂に至ったのだと分かった。

「大好き……、愛しているよ、隆司」

 フフフと悪戯っぽく笑うと、光葉は両手を差し出した。

「だから、もっと愛して。こんな僕を……もっと激しく愛してよ」


 恥ずかしいオフの僕を、愛して……。


 サンセットを背景に、端正な顔のリーダーがゴクリと喉を鳴らす。

「もちろんだ、光葉」

 任せろ、と隆司が頷く。


 解放感と自由に満ちあふれたオフは一か月――。


 天下の大企業を支える若き指導者とその伴侶は、この孤島で思う存分英気を養ってから本国へ戻り、再びその辣腕を振るうのであった。





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